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栗と焚き火と洞爺湖キャンプ

仲洞爺キャンプ場(10月20日〜22日)

 先週末のカヌークラブ支笏湖納会キャンプではうどん係に専念していたため、一度もカヌーに乗る機会が無かったかみさん。欲求不満のためか、今週末のキャンプは絶対にカヌーに乗れるところにしてねと強く要求されていた。
 金曜日からの2泊キャンプの予定。しかし、週末は冬型の気圧配置になるみたいで、そうなると天気が良くなるのは道東か道南方面に限られてしまう。そこでカヌーが乗れるキャンプ場となると、洞爺湖か大沼くらいか・・・。
 このどちらかですんなりと決まりそうなところだけれど、そのどちらにするかで出発日の朝まで悩んでしまった。
 洞爺湖で2泊するというイメージが湧いてこないし、2泊するのならばやっぱり大沼まで行きたい。でも、今年は最後に道南のキャンプ場を回ってみたいと考えていたのに、今回大沼まで行ってしまえば、もう一度道南まで行く気はしない。天気が良いのは洞爺湖と大沼のどちらだろう。
 どちらにも決めきれないまま当日の朝を迎え、前日に更新されたばかりのインターネット紅葉情報を見て、ようやく最終決断をすることができた。
 大沼の紅葉はまだ色づき始めたばかり。洞爺湖は紅葉がちょうど見ごろになっていると言う。今年はまだ紅葉の風景を拝んでいないのに、紅葉の見頃の場所を通り過ぎて南下すると言うのも有りえない話である。同じ洞爺湖で場所を変えて2泊するのも面白そうだ。
 こうして出発前に行き先を決めることができた。下手をすれば、車で走りながら空模様を見てどちらにするか考えると言う、情けない事態になっていたかもしれないのである。

紅葉の半月湖 洞爺湖まで行くのなら時間的余裕もあるので、途中で羊蹄山麓の半月湖に寄り道した。
 前回ここに来たのは3月、スノーシューを履いて深い雪をかき分けながら苦労して湖までたどり着いたものである。
 それが今回は、冬と違って近くの駐車場まで車で行けるので、そこから半月湖まで何の苦労も無くたどり着いてしまった。
 今年初めて木々が色づいた森の中を散策し、紅葉に囲まれた半月湖の風景を満喫して、次は羊蹄山青少年野営場の入り口にある樹木園のカツラ並木を見に行くことにする。
 その前に倶知安町まで戻り、「農家のそばや羊蹄山」で蕎麦を食べた。
 やっぱり幌加内のほろほろ亭の蕎麦のほうが美味しいよな〜と言いながら、そこの蕎麦の味も満足できるものだった。
樹木園のカツラ並木 期待していた樹木園のカツラ並木の黄葉、残念ながら既に半分ほどの葉が散ってしまっていたものの、あたりにはカツラの甘い香りが漂い、しばらくそこで時間を過ごしたくなるような素敵な空間だった。
 ついでにキャンプ場の様子も覗いてみる。
 誰もいない場内、木々の葉はかなり散ってしまっていたものの、山頂に雲のかかった羊蹄山が間近に迫り、とっても良い雰囲気だ。
 かみさんが、「ここでキャンプするのも良いかもね」とポツリ。
 カヌーに乗れるキャンプ場と言ってたくせに、その変わり様には呆れてしまう。
 ここで1泊してから洞爺湖へとの案も十分に考えられるが、今は比較的天気が良いけれど、これからの崩れが心配なので予定通り洞爺湖へ向かうことにする。

 北よりの風が結構強く吹いている。
 この風向きだと、湖の北側に位置する曙公園なら背後から風を受けることになるので良いかもしれない。
 そう思ったものの、天気が良い時の曙公園からの風景は温か味があって魅力的だけれど、こんな日の曙公園は寒風が吹きぬける寒々とした風景が広がっていそうだ。
 まずは仲洞爺キャンプ場まで行って、それから再度考えることにする。
 湖畔道路沿いの樹木は所々で美しく色づいているけれど、全体としては紅葉最盛期にはまだ数日早そうな感じである。
 湖は波が高く、所々で白波も立ち、まるで荒れた海の様相である。とてもカヌーどころの話しでは無さそうだ。
 そうして仲洞爺キャンプ場に到着。
 ここは9月30日でクローズしているので、当然キャンパーの姿も見られるわけがない。しかし、売店のシャッターは下りているものの、入り口にはリヤカーも置かれたままで、完全にクローズしているような様子でもない。
 その入り口を通り過ぎて、我が家は車の進入が認められている第2サイトの方に回り、入り口のチェーンは外れたままだったので、そのまま中まで車で乗り入れた。
我が家のサイト 紅葉した木々と、落ち葉に覆われた林内、素晴らしい風景に思わず喚声を上げてしまった。
 車から降りて場内を歩いていると、靴の底からブチブチとした感触が伝わってくる。地面を見ると、そこには落ち葉に混ざってドングリやトチの実が沢山転がっていた。栗の木もあるらしく、イガも沢山落ちていた。
 湖岸に下りると、そこにはテントを張るのにちょうど良さそうな平坦な場所があった。
 おまけにそこは南向きの湖岸なので、北からの風が遮られ、前に広がる湖面も凪のような状態になっている。暖かな陽射しも照り付け、まるで別世界である。
 何時ものように初めての場所でサイト選びに迷うことも無く、直ぐにテントを張る場所が決定した。
 車を近くまで移動してくると、そこは栗のイガだらけで、それを踏み潰す感触が運転席まで伝わってくる。栗のイガでタイヤがパンクすることは無いだろうけれど、あまり気持ちの良いものではない。
 テントを張り終えると、直ぐに二人で栗拾いを始める。
 既に誰かに拾われた後みたいだけれど、中身の入っているイガも沢山あって、あっと言う間に両手一杯、持ちきれないくらいの栗を拾うことができた。
収穫した栗とトチの実 栗を拾い終わった後、今度は一人でトチの実を集め始める。
 栗は食べられるけれど、トチの実が食べられるかどうかは知らなかった。
 でも、とっても大きな実で、何となく拾わずにいるのは勿体ないような気がして、意味も無く拾い集めているのである。
 トチの実を拾い終わって、今度はドングリも・・・。
 さすがの私も、そこまではやらなかった。実は以前も同じように、意味も無く大量のドングリを拾い集め家まで持って帰り、少しだけ工作に使って残ったドングリを家の周りに撒き散らしたことがあった。
 すると翌年、そこらじゅうからドングリが芽を出してきて、ひどい目にあったことがあるのだ。その時に生き残ったドングリが、今では大きくなり過ぎて、毎年剪定するのに苦労しているのである。

 場内を一回り歩いてみる。
 落ち葉のたまった炊事場の蛇口をひねってみると、驚いたことに勢い良く水が流れ出してきた。もしかしたらと思ってトイレも覗いてみると、鍵は開いているし、水洗トイレの水も流れるではないか。
 水は、来る途中で羊蹄山の湧き水をポリタンク一杯に汲んできて、トイレは隣接する「来夢人の家」のを借りようと考えていたので、これはラッキーだった。
 一応ここでキャンプすることを「来夢人の家」に断っておくことにする。週末にトラクター展示会のイベントがあるので、それまで水落ししないで開けているとの話である。9月でキャンプ場はクローズしているけれど、どうしても泊まりたいというキャンパーは泊めているそうだ。
 クローズ中でも、オープン期間と同じく一人400円の料金はしっかりと徴収されてしまった。まあ、この料金でこんな快適なキャンプ場を使わせてもらえるのだから、安いものである。
 テントに戻って寛いでいると、隣にキャンパーが一組やってきたのには驚いてしまった。クローズ中のキャンプ場でしかも平日、他に誰も来るわけが無いと頭から信じ込んでいたのだ。
 年齢不詳な男性2名と女性1名のキャンパー、彼らは林間に寝るためだけのテントを設営して、その他は全て湖岸にセットするというスタイルである。
 気にしないようにしても、どうしてもその姿が視界に入ってしまう。我が家の場合、今時期のキャンプでは他に誰もいないという状況に慣れきっているので、他にキャンパーがいるだけで何となく落ち着かなくなってしまうのだ。
 直ぐ後ろから川の音が響いてくるので、隣の話し声が聞こえてくるわけでもなく、敢えて気にしないようにした。
栗が一杯 時折風が強まると、テントの後ろから栗が落ちる音が聞こえる。たまに様子を見に行くと、また結構な量の栗を収穫することができる。
 子供の頃、私の住んでいた十勝の田舎には栗の木が殆んど無くて、栗を拾った経験も無い。だから、大人になってからこうして栗拾いができると、もう嬉しくてしょうがないのである。
 暇さえあれば、テントの裏に行って栗拾いをしている有様だ。
 木の実は沢山落ちているけれど、場内に枯れ枝等はあまり無かった、この辺が、春先のキャンプ場と秋のキャンプ場の大きな違いである。
 春先なら、雪で折れた枝などが場内に大量に落ちているのに、ハイシーズンを過ぎた今時期は、殆んど全てが燃やし尽くされてしまい、細い枝さえも落ちていない。
 そんな状況はあらかじめ予想できていたので、二日分の薪は家から持参してきていた。それに、僅かだけれど場内で拾えた枝等を加えれば、今夜の焚き火に不自由はしない。
 小樽の鱗友朝市で仕入れてきたシャコを肴にビールを飲む。これからが旬のシャコは身が詰っていてとても美味しい。
 今夜の夕食はダッチオーブンで作るキムチ鍋だ。かみさんに、「キムチ鍋なら、わざわざダッチオーブンでなくて普通の鍋で作れば?」と言ってみたけれど、考えてみれば何もしないで焚き火の上に吊るしておくだけで料理ができてしまうのがダッチオーブンの魅力である。
 「ダッチオーブンの特性を生かした料理」何て堅苦しいことは考えずに、焚き火の横に常にダッチオーブンを吊るしておけば、お湯を沸かすのにさえ利用できちゃいそうだ。
 夕陽が、テントサイトやそこから見える山肌を赤く染め染め始めた。
 仲洞爺から見る今時期の夕陽は、ちょうど洞爺湖の中島の陰に沈む。夏の時期ならこの南向きの湖岸からでは夕陽を直接眺められないかもしれない。
 闇が降りると、中島と有珠山の黒いシルエットの間に温泉街の明かりが光の帯となって浮かび上がった。
 月明かりも無く、天の川の姿もくっきりと見える。しかし、場内の照明灯の光が湖岸部分にまで射しこんでくるので、星を眺める場所としてはあまりよろしくない。
 次第に日中の強風も治まり、白波が立っていた湖面も温泉街の明かりがそこに映るくらいにまで穏やかになってきた。明日は中島までのカヌーツアーに出る予定なので、8時半にはテントの中に入って少し早めに寝ることにする。
 ところが直ぐに、対岸の温泉街から大気を揺らすような花火の音が聞こえてきた。
 「あれ?温泉街の花火って平日も打ち上げるんだったっけ?」
 こんなに大きな音が聞こえては、大人しくテントの中で眠っているわけにもいかない。音の割には、遠くの温泉街の花火はとても小さくしか見えない。
 実際にホテルに泊まってその花火を見たのは、もう何年前になるだろう?その頃を思い出しながら、「今のは○○ホテルの前かな〜。そろそろサンパレスの前まで来たからこれで最後かな」などと言いながら、小さな花火を楽しんでから眠りに付いた。

夕闇   料理中

 まだ暗いうちにテントの中で目覚めると、片側から川の流れの音、そして反対側からは波の音が聞こえていた。昨夜テントに入った時は川の音しか聞こえなかったはずである。
 明るくなって起き出してみると、湖には再び波が立ち始めていた。カヌーに乗って少し沖に出てみたが、うねりも大きく、これでは中島までのツアーは無理そうである。
朝食準備中 いつの間にか、3人組キャンパーの向こう側に新たなテントが設営されていたのには驚かされた。我が家が寝た後にやってきたのだろうが、見たらごく普通のファミリーキャンパーである。色々なキャンパーがいるものだと感心してしまう。
 昨日のキムチ鍋の残りにうどんを入れて焚き火の上に吊るし、それが煮え上がるまでに今日の予定を考える。
 本来は今日は滝之上キャンプ場に移動するつもりだったけれど、あまりにもここの居心地が良いので、このままもう1泊することにした。
 それでかなり時間的余裕ができたけれど、だからと言って周辺の観光に時間をかけ過ぎたら、また何時ものせわしないキャンプになってしまう。
 とりあえず目的を、この近くでまだ行ったことのない「早月の滝」一箇所に絞り込むことにした。
 朝食を済ませて直ぐに出かける。
早月の滝 財田キャンプ場付近から山の中へ続く道を曲がる。途中から舗装も途切れて細い山道となるが、滝まであと何キロと書かれた看板が幾つも立っているので、安心して進むことが出来る。
 「早月の滝」の看板が置かれた小さな広場に到着。そこから急な道を少し降りたところに目的の滝があった。
 特にこれといった特徴も無い、普通の滝である。最近は道内方々の滝を見に行くことが増えたので、滝慣れしたと言うのか、この程度の滝ではあまり感動を得られなくなってしまったのだ。
 でも、どちらかというと滝そのものよりも滝があるような周辺の自然環境の方が好きなので、それが普通の滝であってもそれほど気落ちはしない。
 ここまで来る途中に「魚止めの滝」と書かれた小さな看板があったので、次はそちらの方を見ることにする。
 観光ガイドにも乗っていないようなこんな滝の方が、意外と面白かったりしそうだ。
 道路からの入り口部分に、木の杖が数本置かれていた。杖が必要となるくらい険しい道なのだろう。
 直ぐに急な登りが続き、それが何となく嬉しく感じる。滝を見るのには、なるべく苦労してたどり着く方が、最後に滝が現れた時の感動も大きいのだ。
熊の足跡 フウマが動物の糞らしいものの臭いを嗅いでいたので、慌ててそこから追い払った。臭いを嗅ぐだけなら良いが、たまにそれを食べようとするので、気をつけなければならない。
 坂道を登りきると、今度は急な下り坂になった。遠くから水の音も聞こえてきて、そろそろ目的の滝に近づいてきたようである。
 すると、少し前を歩いていたかみさんが「もう帰りましょうよ〜」と泣きそうな声で訴えてきた。
 何事かと思ったら、ぬかるんだ道の真ん中に大きな熊の足跡がくっきりと残っていたのである。しかも真新しい足跡だ。
 「もう少しで滝がありそうだし、大きな音を立てながら歩けば大丈夫だ。」
 そうは言ったものの、かみさんは獣の臭いもすると言っている。鼻の良くない私にはそこまでは分からないが、そう言えば先ほど見た獣の糞も、あまり気にしなかったけれどキツネの糞にしては量が多すぎた。それもかなり新しい糞である。
 「やっぱり帰るか!」
 そこから駐車場まで、大きな声で歌を歌いながら時々後ろを振り返っては足早に戻ってきたのである。

湖岸は賑やか 買出しを済ませて、キャンプ場まで戻ってくると、またテントが一張り増えていた。
 その後ももう一組やって来て、最終的に我が家を含めて5組のキャンパーとなり、しかもそれが皆、湖岸サイトにスペースを確保している。
 我が家は湖岸の一番奥にテントを設営していたので、ゆったりと過ごすことができたが、もし場所の選択を間違えていれば、シーズンオフにも関わらず、窮屈なキャンプを強いられていたかもしれない。
 本来なら水もトイレも使えないはずのクローズ後のキャンプ場で、しかも天気もそれほど良いとは言えず、それでこんなに混みあうとは驚きである。
 もしかしたら他のキャンパーは皆、クローズ後でも通常通りにキャンプできることを知っていたのだろうか。
 それはともかく、サイトに戻ってきてまず初めにすることは栗拾いである。
 相変わらず風が強いので、次から次へと栗が落ちてくるのだ。拾っている間にも、直ぐ横にボトッと落ちてくる。もしもその直撃を受けたりしたら、かなり悲惨なことになりそうだ。
 栗拾いが終わると次は薪集め。この後は焚き火をしながらのんびりと時間を過ごそうと考えていたので、薪は大量に有った方が良い。
 昨日は枯れ枝もあまり落ちていないと感じたけれど、場内を隈なく歩くと結構な量の薪が集まった。
 他のキャンパーも同じように薪集めをしている。他人のそんな姿を見てしまうと、私の場合無性に対抗心が燃えてくるのである。
 こちらにはカヌーと言う強力な兵器があるので、それで少し離れた湖岸まで薪を集めに行くことにした。さすがにそこまで行くと、手ごろな枯れ枝や流木が結構ころがっている。燃やしきれないほど集めてもしょうがないので、適当な量をカヌーに積み込んで戻ろうとすると、我が家の隣の3人組キャンパーがそこへ歩いてきた。
 笑顔で「こんにちは」と挨拶を交わしたものの、「むむっ、勝負を挑んできたな!」と内心は穏やかではない。如何にして相手より多くの薪を集めるかで、その後の焚き火の勝負もほぼ決してしまうのだ。
 先にテントに戻り、遠くから彼らの様子を見ていると、何やら青いものを取り出しているみたいだ。彼らが私のカヌーに対抗しようとして編み出した作戦は、大きなブルーシートに薪を乗せて運んでこようと言うものらしい。
 しかし、大量に乗せ過ぎたらしくて、運ぶのに苦労しているようにも見える。それでも途中で何度も休みながら、根性でサイトまで運んできたのには、敵ながらあっぱれと心の中で拍手したのである。
 ただ、ここで気を緩めるわけにはいかないので、すぐさまこちらももう一度場内を一回りして、ダメ押しの薪を集めてきて、ひとまずこの勝負は終えることにした。
 もっとも、対抗心を燃やしてこちらが一方的に勝負を挑んでいるだけの話で、相手のキャンパーはただ焚き火用の薪を集めていただけなのだろう。
焚き火 私が先に「来夢人の家」の温泉に入って戻ってくると、既にかみさんが焚き火を始めていた。
 時間はまだ1時半なので、これから寝るまで8時間は焚き火を燃やし続けることになる。それだけあれば、あそこに落ちていた薪も燃やし尽くせるかもしれない。そう考えて近くから拾ってきたのが、長さ2m重さ15kg程で先の焼け焦げた太い薪である。
 前のキャンパーが、焚き火でその先端だけを燃やして帰ってしまったのだろう。私としては、それは許されない燃やし方だった。 一度火の中に投じた薪は、全て灰にして帰るのが焚き火のマナーなのである。
 と言いながら、前のキャンパーが燃やした薪が残っていたりすると、それも自分の焚き火用に使えるので、結構嬉しかったりするのだ。
 直火の焚き火ならば、どんなに長い薪でも簡単に燃やせるけれど、今回はダッチオーブンに合わせて焚き火台を使っているので、上に乗せるのに苦労する。
 長い時間焚き火をする時にこんな大きな薪が有ると、それが燃えて少しずつ小さくなっていく様子がささやかな楽しみにもなるのだ。
 次はかみさんが温泉に入りに行くので、焚き火の世話を引き継いだ。短く折ることができない長めの薪を焚き火台の周りに組み上げて、後はそれを少しずつ燃やしながら短くしていくのだ。
 風呂上りのビールを飲みながらのこんな作業がとても楽しい。
 今日は昨日よりも雲が多い。突然青空が広がったかと思ったら、直ぐに次の雲が流れてきてその青空を隠してしまう。
 そんな雲の切れ間からは時折、御光が射してきて、洞爺湖の湖面や対岸の有珠山をスポットライトのように照らし出す。湖は昨日以上に波立ち、サーフィンでもできそうなくらいの波になっている。その波に反射する太陽の光がまた変わった風景を作り出す。
 次々と移り変わる目の前のそんな風景を楽しみながら、焚き火で芋を焼いたり、本を読んだり、ビールを飲んだりと気ままな時間を過ごす。
 日が傾いてきた頃には西の空にかかっていた雲も取れて、昨日以上に美しい夕焼けとなり、テントサイトが真っ赤に染まった。
 今日の夕食はダッチオーブンを使ったローストチキンだ。丸鳥だと時間がかかるので、今回は手軽に腿肉を使ってみたけれど、これでも十分に美味しかった。
 豪華な夕食を終えて、後は焚き火に専念する。それぞれのサイトからも焚き火の煙が上っていた。
 勢い良く炎を上げている焚き火が見えると、こちらも負けじと火を大きくする。そのうちに相手の火が小さくなり、こちらの焚き火が炎を上げ続けているのを見て、「勝った・・・」と心の中でほくそ笑む。
 相変わらず、全然関係の無いキャンパーを相手にして、勝手に自分の中で焚き火の勝負を挑んで喜んでいるのである。

御光   夕焼け

 今夜は冷え込みも強くなっていた。
 「今何度くらいだろう?4度かな?」、「私は5度だと思う!」
 何時もの私達夫婦の気温当てゲームである。その時の気温は4度で、私の勝ちだった。このゲームではお互いに1度の誤差くらいで気温を当てることができるので、殆んど人間温度計みたいだと我ながら感心してしまう。
 今時期としたらこれでも暖かな方だろう。焚き火にあてっていても背中がジンジンと冷えてくるような感覚が無い。それでもやっぱり、自然と焚き火に近づいてしまうので、その熱で顔がヒリヒリしてきた。朝の時間も含めれば、1日10時間も焚き火の前で過ごしていることになるので、完全な焚き火焼けになりそうだ。
 2mの薪もようやく二つに折れて、それぞれ焚き火台の中に納まる大きさにまでなった。そのまま焚き火台に乗せておけば朝までには灰になっていそうだけれど、それでは勿体ないので焚き火台から出して火を消しておくことにした。
 途中で起こされないように、今夜は温泉街の花火が終わるのを待ってからテントに入る。
 ビールとワインを飲みすぎたせいか、深夜1時頃に気分が悪くて目が覚めた。
 「ちょっと外の空気を吸いに出たら。」と、かみさんが優しい言葉をかけてくれる。
 でも実は、外に出たがっていたのはかみさんの方なのである。その理由は、今夜はオリオン座流星群が見られる日だったからだ。冬の星座であるオリオン座は、今時期は深夜にならないと空高く上ってこないので、流星群が見られるのも深夜になる。
 先に目が覚めていたかみさんは、それで起きるかどうか迷っていたらしい。
 トイレから戻ってくると、私の体調など全然気にもかけてくれないで「凄いわ!もう7つも見ちゃった。ほらっ、また流れた!凄い!流星痕まで残ってる!」と興奮していた。
 私も空を見上げたが、既に流星痕は消えてしまっていた。ようやく頭もスッキリしたので、椅子を持ち出して本格的に流星観察の体勢に入る。しかし、いざ準備をするとなかなか流れてくれない。
 かみさんは「あっ!また流れた!」と喜んでいるが、眼鏡をかけていると視野が狭いので、こんな時には絶対に不利なのである。
 私たちの目の前を、何食わぬ顔でキツネが横切っていった。まさか明かりの消えた暗闇に人間がいるとは、思ってもいなかった様子だ。
 ようやく私も1個だけ流れ星を見られたので、火が無くて寒いし、それで満足してテントに入ることにした。

朝のカヌー散歩 朝目覚めると、昨日の朝と違って川の音しか聞こえてこない。外に出ると、今回のキャンプで初めて見る静かな洞爺湖の湖面が広がっていた。
 かみさんが一人でカヌーで漕ぎ出していったので、私はその間に焚き火に火をつける。見ていると少しは真直ぐに進むようになったみたいだ。
 今回のキャンプでかみさんがカヌーにこだわっていたのは、こうして一人でカヌーに乗ってみたかったからなのだろう。でも、この様子では独り立ちするにはまだまだ時間がかかりそうである。
 一旦戻ってきたので、次は私が前に乗って二人で漕いでみた。
 スターンに乗るのと比べたら目の前には殆んど何も無く、水面が有るだけ。カヌーがちょっと揺れただけでヒヤッとしてしまう。これで空知川の三段の瀬を下るなんて信じられない世界だ。
 カナディアンのバウに乗るのはとっても怖いものだと思い知らされて、かみさんをちょっと尊敬してしまった。
 湖岸の紅葉が本当に美しい。同じ湖岸でも場所によってはそれほど色づいていないところもあり、キャンプ場から見えるあたりの紅葉が一番美しいみたいだ。
 中島を明るく照らしていた朝の光がようやく私達のところまで達してきた。
 空には雲一つなく素晴らしい青空が広がっている。
快晴の洞爺湖 キャンプ最終日にこんなに天気が良くなるなんて、全く皮肉な話である。
 中島までのカヌーツアーに出かけるのにも最高の条件だったけれど、今日はコックリ湖探索の予定だったので、中島ツアーは諦めることにした。
 ダッチオーブンのローストチキンの残りに水を加え、余っていたキャベツなどを全てその中に入れて、再び焚き火の上に吊るす。
昨日燃え残った2mの薪の残骸も、ようやく灰になりそうだ。
 もしかしたらこれがシーズン最後のキャンプになるかもしれないので、暖かな秋の陽射しを浴びながら、キャンプ道具を何時もよりも丁寧に片付ける。
 ポツリと顔に冷たいものが当たったのを感じて空を見上げると、つい先ほどまで素晴らしい青空が広がっていたはずなのに、いつの間にか雲が空全体を覆ってしまっていた。
 ここでテントを濡らしてしまっては、シーズン最後の片付けにならないので、慌ててテントを撤収する。
 そして全ての撤収を終えた頃、静かな湖面には雨粒による小さな波紋が沢山できていた。
 コックリ湖探索も諦めて、そのまま札幌まで帰ることにする。
 途中の中山峠では雪も舞って、本格的な冬が直ぐそこまで近づいてきていることを思い出させてくれた。

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