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疲労困憊の支笏湖カヌーキャンプ

ポロピナイキャンプ場(10月14日〜15日)

 今週末はカヌークラブの納会で、支笏湖のポロピナイでキャンプである。
 ポロピナイに泊まるのは今回が初めてで、これで遅ればせながら支笏湖の4箇所のキャンプ場完全制覇と言うことになった。
 ポロピナイは、支笏湖のキャンプ場の中でも札幌から一番近くに位置し、周囲の環境にも恵まれた場所である。それなのに、これまでここに泊まることが無かったのは、ジェットスキーが集まる騒々しさを敬遠していたからである。
 それが今年から動力船の乗り入れが禁止され、ポロピナイの湖畔に静けさが戻り、それでクラブ納会のキャンプ地にもすることができたのだ。
 紅葉の季節になって初めて札幌郊外へ出ることになるので、真駒内から支笏湖へ抜ける国453号の紅葉ドライブも楽しみにしていた。ところが、遅れていた紅葉も今週末なら色づくだろうと思っていたのに、道路沿いの山の木々は緑色が抜け落ちただけで、鮮やかな黄色や紅色には程遠い色合いにしかなっていない。
 それなのに、すっかり葉を落としてしまった樹木がその中に混ざっていたりと、今年の紅葉はあまり期待できない様子である。
 9月・10月の気温が高かったり、風台風で葉が傷んでしまったりで、ここ数年は美しい紅葉を見ていないような気がする。

 ポロピナイには昼前に到着。そこの園地は何時ものように人と車で一杯だった。
 私が支笏湖の中で唯一嫌いなのがこの場所である。ジェットスキーがいなくなっても、雑然とした様子は相変わらずで、キャンプ場に来るのでなければサッサと通り過ぎてしまいたいところだ。
 ドライブしながら気軽に湖畔に車を停めて湖を眺められるような場所はここしかないので、人が集まるのはしょうがないが、そこには支笏湖ではなくて街中の雑踏の雰囲気しか感じられないのである。
 そんな雑踏をかき分けてキャンプ場入り口に到達する。そこから先は車の進入が禁止されているばかりでなく、観光客が散歩で入ってくるのも禁止しているので、純粋にキャンパーだけの世界になる。
ビッグタープ3面張り 入り口の看板にその旨が書かれているが、そこから先に続く道の様子を見たら普通の観光客ならその奥に入る気には全然なれないだろう。
 涸れ沢の中を横断する、石が浮いたデコボコの道は、そこから先に施設があるとは思えないようなひどい道なのである。
 湖からの冷たい風が場内を吹き抜けていた。
 このキャンプ場は明日でクローズするとのことで、なおさらシーズンオフの寂しさを感じてしまう。
 先に到着していたS吉さんが、3面をビニールで囲ったビッグタープを用意してくれていたので、その風も何とかしのげそうだ。
 テントは今回は寝る時にだけしか使わないので、何処に張っても良さそうなものだけれど、そこはやっぱり何時もの癖で、できるだけベストポジションを確保したくなってしまう。
 ここのキャンプ場では一番奥の湖畔部分が人気のサイトになっているみたいだが、そこはビッグタープからは遠すぎるし、既に先客がテントを張っていた。
我が家のサイト その他の湖畔も、今年は支笏湖の水位が高くなったままなので、殆んど水没してしまっている。
 残るのは山側の方になるのだけれど、そちらも快適にテントを張れそうな平らな場所がほとんど無い。
 結局、林間の奥のほうにテントを張ったけれど、我が家だけでここを利用するとしたら、かなり空いている時でないと満足できるサイトを確保するのは難しそうである。

 テントを張り終えて、早速タープの下で焚き火を始める。今回は車に積めるだけの大量の薪を持ってきていたので、ケチケチしないで燃やすことができるのだ。
 場内でも倒木の枝などを沢山拾えそうだけれど、タープの中で燃やすので、良く乾燥した薪でなければ悲惨なことになってしまう。
 今日はカヌーに乗っての伊藤温泉ツアーも計画されていた。
 他のカヌークラブの納会で千歳川を下った後、そのまま温泉ツアーに参加しようとドライスーツのままで駆けつけたメンバーもいたけれど、この強風と寒さではわざわざカヌーで温泉に行こうと考える物好きが居るわけも無く、あっさりと車での温泉ツアーに切り替わってしまう。
 伊藤温泉の支笏湖に接した野趣満天の露天風呂は、やや温めなものの、その分ゆっくりと入ることができて、出てきた時には体がホカホカに温まっていた。
タープの下で焚き火 キャンプ場に戻ってきた時間は午後4時過ぎ、タープの残り1面にもビニールを張ってそこで焚き火をすれば湯冷めの心配も無い。
 ただ、いくら乾燥した薪とは言っても、煙が出るのは避けられない。ビニールとタープの間にすき間はあるものの、簡単には煙は抜けていかない。
 このまま一晩経てば、完全な人間燻製が出来上がりそうだ。
 それでも、この時期のキャンプでこんなにぬくぬくと過ごせるのだからありがたいことである。
 こんなに早くから宴会状態に入って大丈夫だろうかと思っていたら、気が付くといつの間にか12時を大きく過ぎてしまっていた。
 何時もの我が家から考えたら、とんでもない夜更かしである。
 これで明日のカヌー運動会ができるのだろうかと、ちょっと不安を感じながら我が家のテントへと戻った。

 5時頃に目が覚めた。
 もう一眠りするつもりでいたら、かみさんがサッサと起き出して行ってしまった。遠くからはパチパチと薪の爆ぜる音が聞こえてくる。多分、早起きのS吉さんが焚き火を始めているのだろう。
 そうなるとこちらも目が冴えてきてしまう。テントの入り口を少しだけ開けて外の様子を覗いてみたら、樹木越しに湖の湖面が赤く輝いている風景が目に飛び込んできた。
朝の風景 慌てて服を着てカメラを持って外に出ると、かみさんも慌ててテントまで戻ってきて、そのカメラを私から奪い去っていった。
 朝日の撮影はかみさんに任せることにして、私は歯を磨きながらのんびりとその風景を楽しむ。
 昨日の天気予報では今日は朝から雨ということで、上空には真っ黒な雲が広がっていたけれど、東の空の低いところだけが雲が晴れていて、そこから差し込む朝焼けの光が湖面を輝かせているのだ。
 やがて、その僅かな雲のすき間に朝日が昇ってきて、場内の薄らと色づいた木々を照らし出す。色あせて見えていた紅葉が、急にその美しさを増したような気がした。
 タープに戻り、焚き火にあたりながらS吉さんの落としてくれたコーヒーをいただく。
 湖側に張っていたビニールを取り外したので、タープの中まで穏やかな朝の光が射し込み、朝の一時を優雅に演出してくれる。
 皆すっかり寛いでしまって、参加人数も少ないし、カヌー運動会をやろうという気分になってこない。
 「運動会の景品はじゃんけん大会で分けようか」なんて話をしていると、I田会長が毅然とした態度で「そろそろ運動会を始めるので準備してください」と宣言した。
 この一言でそれまでの怠惰なムードが吹き飛び、皆一気に戦闘モードに突入した。
 と言いたいところだけれど、実際は「な〜んだ、やっぱりやるのかぁ、面倒くさいな〜」とぼやきながらダラダラと準備を始めたのである。

5人乗りレース  参加者は7人ずつの2組に分かれる。
 この人数では全種目にエントリーさせられそうなので、先が思いやられる。
 最初の種目はカナディアンの5人乗りレース。この競技は私は初めてだったけれど、スピードが出てなかなか面白い。
 勝負はターンのテクニックでほぼ決まってしまう。乗っている舟を変えて2回やったけれど、両方とも我がチームの勝ち。
 必死になって鬼漕ぎするので、早くも息が上ってきている。

 次の種目は、カナディアンでの沈&再乗艇レース。二人乗りで沖まで出てそこで沈、他の舟のサポートを受けながらカヌーを起こしてそれに再乗艇して戻ってくるという内容。
 私とI林君がペアを作って、他のメンバーはサポートに回った。
 競技とは言え、足が底に届かない湖の中で沈するのはあまり気持ちの良いものではない。覚悟を決めて、カヌーをひっくり返した。
 そこから、もう1艇のカナディアンの上にひっくり返ったカヌーを引き上げ水を抜いて元に戻すのは、カナディアンが2艇あるときの湖でのレスキューの基本である。
 これは初めてだったけれど、意外と簡単である。再乗艇もすんなりとできて、ここまでは相手チームとほぼ同時だった。
 勝負はこれからと思った時に、チーム編成のミスに気が付いた。普段はカヤックにしか乗ったことの無いI林君は、シングルパドルの扱いに全く慣れていないのだった。
 それはパドリングと言うレベルでは無く、ご飯のヘラで水をかき回しているような状況である。それでは勝ち目は無く、大きく差をつけられてゴールイン。
 へとへとになって倒れこもうとしたら、そこへI田会長の「それでは舟を変えてもう1回やります」の無慈悲な言葉が。
 「えっ!乗り手は変えないの?」
 そして2回戦目、今度は再乗艇した段階でかなりリードしていた。これなら勝てるかなと一瞬思ったけれど、漕ぎ手が一人と二人ではやっぱり勝ち目は無かった。
 大きく差をつけられてゴールイン。

再乗艇中   こら〜!漕げ〜!

 3種目目はスローロープ投げと、ようやく一息つけそうな競技である。
 少し離れたところのカナディアンに全員で一斉にスローロープを投げ入れ、相手チームの一人がそれを邪魔するというルール。
 結果は誰も成功する人がいなくて引き分け。もしかしたら、わざわざ邪魔しなくても入れられなかったのでは、と思えるくらいレベルの低いスローロープ投げであった。
 川で沈した時は自分の力で岸に上ることを考えた方が良さそうである。

 4種目目はカヌー騎馬戦。
 これはパラマウントチャレンジカヌー(障害者カヌー)の時もやったことがあるけれど、舟に付けた風船を互いに割り合うという、ほのぼのとした競技である。
 しかしI田会長のルール説明によると、全員が一度に参加して相手のチームの舟をとにかく沢山沈めた方が勝ちと言う、ほのぼのどころか、かなり恐ろしいことになりそうな競技である。
 我がチームがとった作戦は、まずは相手チームのI田会長に攻撃を集中して先に沈めようというものだった。
 周りを取り囲まれて、初めて自分が標的にされていることに気がつき、驚愕の表情を浮かべるI田会長。何時もはOC-1で気軽に沈シーンを披露してくれるI田会長も、今日は大きなカナディアンに乗っているので、なかなか沈してくれない。
 往生際の悪いI田会長を無理やり湖の底へ沈めた後は、両チーム入り乱れての乱戦となった。その中でも大きなカナディアンはやっぱり安定しているみたいだ。
 カヤックに乗るY谷さんが無謀にも私に向かってきた。返り討ちにしてやろうと思ったが、不安定なはずのカヤックなのにこちらのガンネルを掴んでいるものだから、なかなかひっくり返らないのだ。
 無理するとこちらの方が沈しそうだ。そのまま絡み合っているうちに風に流され浅瀬まで漂着してしまいこの勝負は水入り。
 再び沖に出たところで試合終了のホイッスルが鳴った。残り艇数4対3で私のチームの勝ち。
 ホッとして岸の方を見ると、そこは他のキャンパーのテントが張られていて、そこにいた人達がビックリした顔でこちらを見ていた。戦っているうちに、風に吹かれてかなりの距離を流されたみたいだ。
 湖の風景を眺めながら静かに寛いでいるところに、お互いのカヌーを沈めようと必死の形相でもつれ合っているカヌーの集団が突然現われたものだから、さぞ驚いたことだろう。

乱戦1   乱戦2

 体力はとうに限界を超えているというのに、5種目目はもっともハードな水上綱引きである。
 カナディアンに4人が乗り込み、それとカヤック2艇を加えてチームを結成。このカヤック2艇をカナディアンに直列で繋ぐか並列で繋ぐか、お互いのチームで作戦が分かれたが、これは勝負の行方には大して影響が無さそうだ。
水上綱引き 相手チームは何故か、カナディアンに3人しか乗っていない。S吉さん・F谷さんがいるので、総重量は私達4人より重たそうだ。そこにI田会長まで加わったら、重たくてカナディアンが沈んでしまうのかもしれない。
 ホイッスルを合図に必死にパドルで水をかく。カヌーが進まない状態で水をかくと言うのは大変な重労働なのである。水では無くて砂をかいているような気分だ。
 次第に腕の感覚が無くなってくる。勝ってるか負けてるかも分からないし、パドリングを止めるわけにもいかない。
 ようやくホイッスルが鳴って、私達チームの勝ち。
 これを場所を変えてもう一回やらされるのだから、堪ったものではない。
 とりあえず2連勝したけれど、もう体は殆んど動かない。

 最後の種目はカヌーポロ。
 当然、全員参加なので、どんなに疲れていても出ないわけにはいかない。
 この競技はカナディアンより、小回りの効くカヤックの方が絶対に有利である。そのためか、カヤックの方々はこの競技になると異様に張り切り始める。
 まるでこの協議開始に間に合うようにやって来たI倉さんが、カヤックで相手チームに加わった。その前に、一人で10kmくらいは漕いできてもらわないと、不公平すぎると言うものだ。
カヌーポロ 試合が始まったらボールを追うのはカヤック組みに任せて、私はカナディアンでウロウロとするだけ。ボールが近くに飛んできた時だけ必死にパドリングするが、直ぐに横から突進してくるカヤックに奪われてしまう。
 カナディアンやカヤックが、水上に落ちた一つのボールめがけて一斉に群がってくる。カヌーを傾けながら手を伸ばしてそのボールを撮ろうとした瞬間、相手チームのカヤックが突っ込んできてアリーの横腹に体当たりされた。
 バランスを崩してそのままの体勢で水中に落ちていく可哀相な私。
 一度はパドルを落としてしまい、両手で水をかきながら湖面に浮かんでいるパドルを必死に取りに戻る惨めな私。
 結局、元気一杯フル充電状態で参加してきたI倉さんのいる相手チームに、1対4のスコアで負けてしまった。

 と言うことで全種目終了。総合得点で相手チームに負けてしまったが、お遊びなので勝ち負けはどうでも良い。
 競技中に女性陣が作ってくれた暖かなうどんが用意されているので、皆一斉にその周りに群がった。
 紅葉最盛期には少し早く、朝の気温も暖かく、雨の予報も外れ、昼頃には青空が広がった支笏湖での楽しい週末がこうして過ぎていったのである。


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