悲惨な撤収美笛キャンプ
美笛キャンプ場(8月25日〜26日)
小中学校の夏休みも終わり、そろそろ静けさを取り戻したキャンプ場でまったりと過ごそう。そう考えて、金曜日から休みを取ってキャンプへ出かけることにした。
2泊キャンプで場所は支笏湖。そこまではすんなりと決まったけれど、美笛にするかポロピナイにするか、かみさんはオコタンが良いと言いはじめるし、結局当日の朝になっても決められないまま札幌を出発する。
1泊ならば、ジェットスキー等が禁止されて静かになったポロピナイ、支笏湖独り占めキャンプが楽しめるオコタンと言う選択肢も考えられるけれど、同じ場所に2泊して退屈しないで過ごせるのはやっぱり美笛だろうというのが私の考えだった。
朝日の昇る位置、夕陽の沈む方向、三日間の風向きなどそれぞれのキャンプ場での条件を考慮して検討した結果、結局は現地に行ってから考えるといういつもどおりの適当な結論に達してしまう。
とりあえずオコタンは選択肢から外して、まずはポロピナイに立ち寄る。ジェットスキーは禁止されていても、湖畔にはチップ釣りのボートがずらりと並び、大型観光バスが停まっていたりといつもどおりの賑やかさである。
キャンプ場はその奥にあるので静けさは保たれているものの、やっぱり印象は良くない。湖からの風もかなり強く吹いていたので、キャンプ場まで入ることなく美笛に泊まる事に決定した。
そうして、美笛に到着したのが10時過ぎ。平日のこの時間なのでキャンパーの姿はほとんど見られない。好きなサイトを確保することが出来る。
ところが支笏湖の水位がかなり上っていたので、私の狙っていた北側の湖畔は水没してしまいテントを張れるようなスペースが無くなっていた。かみさんは川の流れ込んでいる部分が気に入ったみたいだが、私としてはそこからのロケーションがちょっと不満である。
久しぶりの美笛なので、じっくりと考えて一番満足できる場所を探したい。その結果、湖畔中央部の樹木に囲まれたスペースにテントを張ることに決定。
ファミリーが2組余裕でテントを張れるだけのスペースに、今回は夫婦別々のテントを持ってきていたので、それを距離をおいて設営。その間にテーブルをセットしたら、他のキャンパーが入り込める余地はない。
かなり贅沢なスペースの使い方だが、夏休みの混雑が去った今時期ならばこれも許されるだろう。そもそも夫婦でなくて、お互いにソロのキャンパーだと考えたら普通のテントの張り方である。
まだ夏を思わせる強い陽射しも、周囲の樹木と真ん中の大きな木が気持ちの良い木漏れ日に変えてくれる。
湖の波の高いのが気に入らないが、夕方になれば風向きも変わってくるはずで、今日の日中だけの辛抱である。
かみさんが地元農産物を仕入れたいと言うので、昼食後にちょっと出かけることにした。
ついでに久しぶりに美笛の滝にも寄り道してみる。
車を停めた場所から山道を15分ほど歩くと美笛の滝に到着。前回ここを訪れたのは、もう10年以上も前の晩秋だったような気がする。
記憶に残っている印象では水の少ない枯滝のようなイメージだったが、久しぶりに見る美笛の滝は水量も多く、堂々とした姿である。真下で浴びる霧のような水しぶきが心地良い。フウマも滝つぼの中で気持ち良さそうに泳いでいる。
その後は美笛峠を越えて大滝村の道の駅へ向かう。峠のトンネルを抜けて直ぐに目に入る看板に伊達市と書いてあるのがどうもしっくり来ない。
市町村合併で大滝村は伊達市に編入されたのだけれど、伊達市はどうしても噴火湾沿いの町というイメージなのである。
道の駅でジャガイモととうきびを仕入れてキャンプ場まで戻ってきた。
相変わらず湖面の波は高く、カヌーで遊べるような状況では無かったけれど、2泊キャンプなのであくせくする必要も無い。
恵庭だけの上には刷毛で掃いたような美しいすじ雲が浮かんでいる。
何をするわけでもなく、少しずつ姿を変える雲の姿をぼんやりと眺めながら、ビールをいただく。
美笛では背後の森の中に太陽が沈むので、モラップのように夕陽を楽しむことはできない。それでも今日は空に浮かぶ雲がうっすらとピンクに染まり、夕方の風景を演出してくれた。
夕食のメニューはキノコご飯に豚汁、サンマの塩焼き。キャンプで食べるこんな家庭的なメニューが、何となくほのぼのとして美味しく感じられる。
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夕方になって急にキャンパーが増え始めた。金曜の夜なので仕事が終わってから駆けつけるキャンパーも多いのだろう。
我が家のサイトの右側には昼間にやって来たファミリーが一組。左側には結構広いスペースがあり、そこには今のところ二組のキャンパーがいるだけだ。
新たに到着したキャンパーは、まずそこの様子を見に来る人が多い。その度に近くにテントを張られないかとドキドキしてしまうが、先客に気を使うのか皆諦めて他に回って行ってしまう。
結局その広いスペースには、暗くなってから小さなテントが新たに張られただけだった。
我が家の感覚では湖畔サイトはかなり混み合ってきた様に見えるが、それでもお互いのテントの間隔は十分に保たれ、美笛の静かな夜を過ごすことができそうだ。
長袖を一枚羽織るくらいに気温が下がって、焚き火の暖かさが嬉しく感じる。
日中の波も治まり、時おり小さな波が岸に打ち付けるポチャンという音が聞こえてくるだけだ。
やたらにスピードの速い人工衛星が夜空を横切っていく。
焼き鳥を焼きながらビールを飲む。
良い夜だな〜としみじみとしていると、場違いな打ち上げ花火の音が場内に響き渡った。
フウマが驚いて耳をピンと立てる。
数発打ちあがったところで間髪を入れずに場内放送が流れ「打ち上げ花火は禁止されています」と注意する。これはなかなか良い対応である。
禁止項目をただ羅列するだけの場内放送はそれ自体が騒音と感じてしまう人もいるだろうが、これならば誰が聞いても納得できる場内放送である。
ところが納得していないのは注意された本人みたいで、その後もしばらく花火を上げ続けていた。場内放送が聞こえていない訳は無く、その傲慢さというか無神経さというか、ただただ呆れるばかりである。
可哀相なのは花火の音が大嫌いなフウマで、すっかり怯えてしまっていた。しばらく車の中に非難させておいたが、一度怯えてしまうと焚き火の爆ぜる音にまで反応してしまう。必死になってどこかへ逃げ出そうとするのである。
焼き鳥の臭いを嗅がせてやっても駄目なのは、かなり重症な証拠である。テントの中に入れてかみさんが添い寝をしてやって、ようやく少し落ち着きを取り戻したようだ。
その後は再び場内にも静けさが訪れたものの、フウマにとっては散々なキャンプの夜になってしまった。
テントを張った場所の地面に微妙なデコボコがあったために、熟睡できなくて夜中に何度も目が覚めてしまう。
そのうちにテントの中もうっすらと明るくなってきた。寝返りをうって横を向くと、テントの外には素晴らしい朝の風景が広がっていた。
インナーもフライも出入口をメッシュのスクリーンにしていたので、寝たままの状態で湖が見渡せるのである。
目を開いた途端に外の風景を見られるというのはなかなか良いものだ。その風景が、支笏湖の空が白み始めて明けの明星が一際明るく輝いている様だったりしたら、これはもう堪らない。
時間はまだ4時を過ぎたばかりで辺りも暗かったけれど、直ぐにテントから飛び出した。かみさんも同時にテントから出てきた。
今回、私が美笛にこだわった理由の一つは、キャンプ場の真正面から昇る支笏湖の朝日を見たかったことなのである。
波一つ無い静かな湖面、仄かに赤く染まる東の空、そしてそこで明るく輝く金星の姿。期待通りの光景が目の前に広がっていた。
そんな風景の中に交代でカヌーで漕ぎ出す。
朝日が昇ってくる前の1時間をたっぷりと楽しんだ後で、眩しくて正視できないような輝きを放つ朝日が昇ってきた。
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カヌーにコーヒーセットを積み込んで朝の湖上散歩に出発する。
沖の方では今月一杯が漁期のチップ釣りの船が、沢山の竿を出して湖面の上を滑るように進んで行く。
我が家はオコタン方向にカヌーを進め、途中の川が流れ込む場所で上陸して朝のコーヒータイムにする。
何時ものキャンプと違って繋がれっぱなしのフウマは、ようやく自由に歩き回ることが出来てご満悦の様子である。家に居る時はシャワーを浴びさせるだけで一騒動になるくらいの水嫌い犬だと言うのに、こんなところでは自分から湖に入って気持ち良さそうに泳いでいるのが不思議である。
そこからさらにオコタンを目指す。と言っても、美笛からオコタンまでは片道距離で4km以上はあるので、適当なところで引き返すつもりだ。
美笛ではこれまでに何度もカヌーに乗っているけれど、実はこの川より先には一度も行ったことが無いのである。
そこから先は水深が一気に深くなるので、何となくそれ以上進むのが躊躇われてしまうのだ。沈してしまえば、水深が5mでも100mでもほとんど関係無いのだけれど、これはやっぱり気分の問題である。
それに、カヌーを始めたばかりの頃、我が家と同じアリーに乗った男性がこの付近でカヌーから落ちて行方不明になり、そのまま発見されなかったという事件に遭遇したこともあり、あまり印象は良くないのである。
まあ、今日のようなべた凪の湖ならそんなことも忘れて、安心して漕ぐことができる。
次第に陽射しも強くなり腹もへってきたので、前方に見える岩が積み重なったような湖岸を目標にして、そこから引き返すことにした。
その目標にしていた湖岸に近づいてカヌーの下を見ると、その光景にゾッとしてしまった。透明度の高い支笏湖はかなり下の湖底まで見透かせるので、高いところが苦手の人ならカヌーに乗っているのに恐怖を感じてしまうだろう。
ちょうどそこの湖底は、奈落の底まで続くような切り立った崖になっているのだ。その崖の端にカヌーを浮かべて一方から下を見ると直ぐそこに湖底が見えているのに、その反対側を覗くと底無しの深みが広がっているのである。高所恐怖症の人には耐えられないような光景である。
帰りはそんな水面下の風景を楽しみながら湖岸沿いにカヌーを進めた。湖上散歩と言うより空中散歩をしているような感覚に囚われる。
川の流れ込みまで戻ってきたところで、クールダウンのためにその流れ込みにカヌーを乗り入れた。魚達がビックリして、カヌーの下を猛スピードで通り過ぎていく。
両岸から覆いかぶさる樹木のおかげで、ようやく太陽の陽射しから逃れることができた。川の水は長い間手を浸けていられないくらいに冷たい。その水に冷された空気がとても心地良く感じられる。
そこからもう一頑張りしてキャンプ場まで戻ってきた。その時の時刻は7時半、約2時間の気持ちの良い湖上散歩だった。
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朝食を終えて、さて今日は何をして過ごそうかと考える。
午前中に支笏湖畔の温泉に入りに行って、その後は何もしないでのんびりと過ごしてみよう。同じ場所で連泊することがほとんど無い我が家は、キャンプでそんな時間の過ごし方をすることもほとんど無いのである。
天気予報を見ると、この週末は天気も良くて気温もかなり上りそうである。そのためか、朝早くから次々とキャンパーが訪れ始めた。
我が家のサイトの右側はほとんどスペースも無いので安心できるが、左の方はまだ広く空いているので何処にテントを張られるのか気が気でない。
そこへ1台の車が乗り付け、湖畔ギリギリにスクリーンテントを立て始めた。
「まだ少しスペースが残っているな〜」と思って見ていると、そこに2台の車が入ってきた。小さな子供のいるヤンキー風の2組の家族である。
「ここに張れそうだな!」そこは、先のスクリーンテントよりも我が家の方に寄った湖畔である。
「ゲッ!まずい!」と思ったけれど、彼らがテントを張ったのはもう少し離れたところだった。そこは、昨日から泊まっていた我が家のお隣さんのスクリーンテントの直ぐ目の前である。それも湖畔側なものだから、先客の視界を完全に奪ってしまっていた。
ちょっと気の毒だったけれど、やや湖岸から離れた場所にテントを張っていたのでしょうがないかもしれない。
もっとも我が家のサイトの前の湖岸だって、その気になればテントを張れるだけのスペースは空いているのだ。急に心配になってきて椅子とテーブルを湖岸側に移動して、ここは俺達の場所なんだぞと何気なく主張してみたりする。
温泉に入りに行く時は、車の駐車スペースにカヌーでも置いて場所取りをしておかないと、直ぐに他のキャンパーに占領されてしまいそうだ。でも、そこまで姑息な手段はとりたくない。
そうこうしている内に、今度は安全地帯だったはずの右側スペースに、これも小さな子供を連れたファミリーのグループがやってきて、テント2張りとスクリーンテントを張ろうとしている。
「ど、何処にそんなスペースがあるんだ?」
じろじろと睨みつけるのもあれなので、本を読みながらチラリチラリと様子を窺う。そのグループは、私達の目の前にテントを張るのは遠慮してくれているみたいで、苦労しながらも狭いスペースに何とかテントを張り終えた。
この時点で、温泉に入りに行く計画は完全に断念してしまった。戻ってきた時の状態を想像したら、とてもゆっくりと温泉になど入っていられない。
まだ午前10時を過ぎたばかりで、これからまだまだキャンパーが増えてくるのだろう。既に湖畔のサイトはぎゅうぎゅう詰めの状態。そんな中で我が家がテントを張っている場所だけが、ぽっかりと開けた別世界と言う感じである。
次にやって来た小さな子供を連れたファミリーが、我が家のテントの前の湖岸にやってきて「おい!ここ空いてるぞ!」
「もう私、耐えられない」とかみさん。それは私も同じである。
こんなキャンプは、まるで拷問を受けているようなものだ。次の行き先は何処でも良いから、まずはここから逃げ出すことにしよう。
10時半に撤収を開始。もう1泊するつもりで荷物も思いっきり広げた状態だったものだから、そこからの撤収作業も大変である。
荷物を片付けながら先ほどのファミリーに「ここ空きますから」と声をかける。
ふと気が付くと、小さな子供を連れたファミリーがもう1組、テントを抱えたままでじっと私達の撤収作業を見守っていた。
他からも「何だ!あいつら、思いっきり場所を占領しておいて結局帰るのか!それにチェックアウト時間ギリギリだぞ!」と言った視線が私達に浴びせられているような気がする。
「冗談じゃない!こっちは二人で2000円の宿泊費を既に払ってしまってるんだぞ!」、お金のことはどうでも良いから一刻も早くここから逃げ出したかった。
11時10分に撤収完了。その後には、二家族分のテントとスクリーンテントが直ぐに建てられ始めていた。
我が家のキャンプの歴史の中でも、もっとも悲惨な撤収作業だったかもしれない。
この後はモラップもポロピナイも同じような状況だろうから、オコタンへ向かうことにした。昨日から今朝にかけてで十分に支笏湖を楽しめたので、オコタンが駄目ならそのまま家に帰っても良いやと言う気持ちだった。
我が家の二つ隣のテントが「北海道でキャンプ」のSAMさん、KUUさんご夫婦だったことが朝になって分かった。
我が家と同じ夫婦キャンパーなので、この混雑ぶりにはうんざりしていたようだ。それでも、娘さん親子がこれから遊びに来ると言うので、もう少しここに留まるとのこと。
天気が良くて気温も高い週末の支笏湖、水際サイトはファミリー天国となる。我が家のようなキャンパーは、最初からそのような場所を避けるべきだったのである。
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