浮島湿原から白滝高原キャンプ場までは30分もかからない。キャンプと湿原散策をワンセットにしても良いくらいの関係だ。
ここのキャンプ場には数年前にオートサイトが新しく作られている。
2年前、カヌークラブの湧別川例会のキャンプ地としてここを利用しているが、新しいオートサイトを利用したかったので、その時は我が家だけがオートサイトにテントを張った。
ところがそのテントは寝る時だけしか使わなかったので、せっかくのオートサイトの雰囲気は何も感じられないままに終わってしまったのである。
そんなことが有ったものだから、今回もキャンプ場に到着して場内を見ることも無く、直ぐに受付でオートサイトを申し込んだ。
このキャンプ場は、昔からあるフリーサイトも直ぐ横に駐車スペースがあるので、ほとんどオートサイトのように利用できる。それでも前回オートサイトを利用した印象はかなり良かったので、プラス千円の出費はまるで気にならない。
「今日は他に予約が無いので好きなところにテントを張って良いですよ」と言われる。平日なので多分そんなものだろうと予想はしていたが、一応翌日の予約状況も聞いてみると3組だけとのことである。
受付を済ませて場内をぐるりと回る。
空はどんよりとした雲に覆われていて、夜には雨が降ることも考えられるのでなるべく炊事場や東屋などの施設に近い場所を探すことにする。電源付きのオートサイト6区画は、その点では一番良い場所にあるけれど、料金が違うのでそこにはテントを張れない。
最後に決めた場所は、2年前にテントを張ったところの隣のサイトだった。
それにしても一つの区画がやたらに広い。車をサイトの端に停めてテントをその反対側に張ろうとしたところ、かみさんから車が遠すぎると文句を言われてしまった。
同じ区画に車を入れて、そこからの荷物運びが遠すぎるなんて言われるようなキャンプ場は他に思い付くところが無い。
テントを張り終えたところで、かみさんがじっと森の方を見ている。何を見ているのだろうとその視線の先を追ってみると、そこの枯れ木の幹になにやら茶色いものが。
そこまで行ってみると立派なキノコが生えいていた。多分タモギタケだろうとは思うけれど、それほどキノコに詳しいわけではないので家に持って帰ってから食べることにした。
さすがにこの時期はキノコ図鑑までは持ち歩いていなかった。しだ・こけ図鑑まで持ってきているのだから、これからは図鑑類を常に持ち歩けるように何か考えた方が良さそうである。
一息ついて近くの温泉にでも入りに行こうと思ったら、かみさんが五右衛門風呂に入りたいと言い始めた。
ここの五右衛門風呂に入ったのはもう10年以上も昔の話だ。その時は息子と私しか入っていなかったので、他に誰も利用者がいない今日こそ自分も入ろうと考えているみたいだ。
お風呂に入るためには、まず薪割りから始めなければならない。
割った薪が少しだけあったので、かみさんがそれを燃やしている間に私が薪割りをすることになる。薪小屋に入っているのは直径30cmもあるような太い丸太ばかりで簡単には割れてくれない。
のんびりと温泉に浸かって湿原散策の疲れを癒そうと考えていたのに、ここで重労働をさせられるとは思ってもみなかった。
何とかお湯も沸いて、私が一番風呂に入ることにする。かみさんは五右衛門風呂に入るより、その風呂釜で薪を燃やす方が楽しいみたいである。
十分に沸いているのに私が入っている間もどんどん燃やし続けるものだから、まるで釜ゆでにされている五右衛門の気分である。
先にテントまで戻っていると、気持ちよさそうな表情のかみさんが戻っ てきて「寝る前にも入りたいから、出るときに薪を一くべしてきた」とのこと。
五右衛門風呂がすっかり気に入ったようである。
空の雲の高さが次第に低くなってきたような気がした。やがて周りの森の木々がその頂部からおぼろになり始める。そしてついにキャンプ場の風景が全て霧に覆われてしまった。
全く風がないのに、その霧は静かに動いているのだろう。目の前の景色が薄れていったかと思えば、いつの間にかはっきりと目の前に現れたりする。
他に誰もいない場内からは物音一つ聞こえてこない。
夜のとばりが降りると、園内の照明が霧の中にぼんやりと浮かび上がる。久しぶりの霧のキャンプ。霞んだ風景とは裏腹に、こんなキャンプは後々まで記憶に残るものである。
焚き火にあたりながらそんな風景を楽しんでいると、その粒を直接感じられるくらいにまで霧が濃くなってきてしまった。
雨具を羽織るが、身体に付いた霧の粒も焚き火の熱で直ぐに乾いてしまう。
寝る前に最後の五右衛門風呂に入ることにする。
風呂までは車に乗って行くことにするが、もろに酔っぱらい運転状態である。霧が濃くて前も良く見えない状態なので慎重にのろりのろりと車を進めた。
今度はかみさんが先に風呂に入る。最後に出るときに薪を一くべしたものだから、五右衛門風呂のお湯は沸騰する寸前になっていたようである。
私はその後で、ちょうど良い湯加減になった風呂にゆっくりと浸からせてもらった。
かみさんが「これならば、五右衛門風呂の前にテントを張った方が良かったわね。」
確かに、他に誰も来ないのが分かっていればその建物を占拠して五右衛門風呂に入りながらビールを飲む極楽キャンプを楽しめたかもしれない。
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