一ヶ月後の道北キャンプの続き
白滝高原キャンプ場(7月21日〜22日)
一月前ほどに出かけた道北キャンプ、4泊の日程で出かけたけれど色々とあって3泊で終わってしまっていた。
その時に4泊目の候補地になっていたのは岩尾内湖か白滝高原、ここなら何時でも泊まりに来れるだろうと無理やり理由を考え出して3泊しただけで帰ってきたのである。
何時でも泊まりに行けるのなら、つい先日歴舟川で2泊キャンプをしたばかりでも行けちゃうんじゃない?
ほとんどそんな乗りで、白滝高原へ出かけることに決めてしまった。
前回のキャンプから帰ってきたのが月曜日。そして今回は金曜日に休みを取って出かけるのだから、中3日しか開いていないことになる。
何時もなら「今週はゆっくり休みましょうよ」と言い始めるかみさんも、私が歴舟川から帰ってきたその日の夜から、「今週の金曜日は晴れちゃいそうだな〜、次の週は仕事が入っているしな〜」とブツブツ言い続けておいたものだから、あまり抵抗は見せなかった。
こうして無理してでもキャンプに出かける本当の理由は、前回の道北キャンプで初めて訪れた浮島湿原にもう一度行きたかったからなのである。
その時は全然予定外で急遽立ち寄ったものだから、湿原散策にあまり時間をかけることができなかった。それでも、浮島湿原の風景にすっかり魅了されてしまい、違った花が咲き始める季節に是非もう一度訪れてみようと考えていたのだ。
高速道路のETC通勤割引時間帯に間に合うように、札幌を出発。
上川町まで高速を使えるので、浮島湿原まで時間的にはそれほどかからないが、高速料金とガソリン代だけはたっぷりとかかるので、少しでも節約しなければならない。
浮島湿原へ辿りつくには2箇所のルートがあるので、今回は滝上町側からのルートで行くことにする。地形図で見るとこちらの方が標高差が大きいものの、距離は短い。ところがそのルートは、ほとんど人が歩かない登山道と言った感じで道はぬかるんでいるし、短足犬フウマと一緒には歩きたくないようなところだった。
林道をそのまま走って白滝側の入り口へと向かう。その途中で、生々しい熊の糞が落ちているのを2箇所ほど目撃。これだけの山奥なのだから、熊がいないほうが不思議である。
白滝側の駐車場に到着。平日なのに既に車が一台停まっている。
天気予報はパッとしなかったけれど、上空には青空が広がっていた。素晴らしい湿原の風景を楽しめそうだとワクワクしてきた。
虫除けスプレーをたっぷりとかけ、熊除けの鈴もザックに取り付けていざ出発。前回は遊歩道脇のタケノコにばかり気を取られていたけれど、2度目の今回はスタスタと先を急いだ。
途中でカメラと大きな三脚を抱えた夫婦とすれ違う。そのカメラでどんな花を撮影してきたのだろうか。
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湿原入り口の木道は大きく育ったミズバショウの葉で隠れそうになっていた。
そこを通り抜けると、一度訪れただけですっかりお馴染みとなった浮島湿原の風景が目に飛び込んできた。ちょっと残念なのは、いつの間にか上空には雲が広がってしまっていたことだ。
歩き始めて直ぐに、木道脇に風変わりな花を見つけた。「これって本当に花なのだろうか?」
一生懸命それにカメラを向けていると、かみさんが「これはチングルマの花が散った跡なのよ」と教えてくれる。
一ヶ月前に訪れた時は湿原の中でチングルマの花が一番目立っていた。言われてみると、その風変わりな姿があちらこちらに見られる。
無数に点在する沼ではエゾヒツジグサの葉が水面に広がっていて、所々でスイレンのような美しい花を咲かせている。
前回は見られなかったワタスゲの白い姿もちらほらと見られる。
私の貧弱な発想では湿原=ワタスゲと言うことになるのだけれど、いまだにワタスゲがびっしりと咲いている様子にお目にかかったことが無い。
所々に咲いている赤い花はトキソウとサワラン、薄緑色の目立たない花はホソバノキソチドリだ。
さも分かているように書いているが、何れも車に戻ってから図鑑で調べて初めてその名前を知った花ばかりである。
でも、初めて見る花の名前をこうして図鑑で調べるのも楽しい作業だ。
お腹が空いてきたので、沼の一つが見渡せるベストポジションで弁当を広げる。
途中で買ったコンビニ弁当だけれど、こんなロケーションの中で食べれば何でも美味しく感じてしまう。
前回は時間が無くて歩けなかった湿原の奥まで続く木道をのんびりと散策する。
周辺に群落を作っているタチギボウシが咲き始めるのは1、2週間後くらいだろうか。地味だけれどモウセンゴケの花ももう直ぐ咲きそうだ。
その他にも9月に開花するエゾリンドウの姿も結構見られる。
湿原全体が花に覆われると言うより、その時々で違った花の風景が見られるのだろう。
沼の周りでは美しい青色のエゾイトトンボが舞っている。
木道の下からチョロチョロと水の音が聞こえてきた。その水は、黒々とした泥炭の上を伝って最後には近くの沼に流れ落ちている。
湿原の命とも言うべき水が本当に豊富であることを感じさせられる。
帰り際になってようやく雲の間から青空がのぞいてきた。真っ青な空と、その色を映し込む無数の沼。そんな風景の楽しみは次に訪れる機会に残しておくことにしよう。
帰りの遊歩道を歩いていると、数十名の賑やかなおばさん軍団とすれ違う。駐車場に戻るとJTBツアーの大型バスが停まっていた。
湿原での静かな一時をこのおばさん軍団に荒らされなくて良かったと、心底ホッとしたのである。
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浮島湿原から白滝高原キャンプ場までは30分もかからない。キャンプと湿原散策をワンセットにしても良いくらいの関係だ。
ここのキャンプ場には数年前にオートサイトが新しく作られている。
2年前、カヌークラブの湧別川例会のキャンプ地としてここを利用しているが、新しいオートサイトを利用したかったので、その時は我が家だけがオートサイトにテントを張った。
ところがそのテントは寝る時だけしか使わなかったので、せっかくのオートサイトの雰囲気は何も感じられないままに終わってしまったのである。
そんなことが有ったものだから、今回もキャンプ場に到着して場内を見ることも無く、直ぐに受付でオートサイトを申し込んだ。
このキャンプ場は、昔からあるフリーサイトも直ぐ横に駐車スペースがあるので、ほとんどオートサイトのように利用できる。それでも前回オートサイトを利用した印象はかなり良かったので、プラス千円の出費はまるで気にならない。
「今日は他に予約が無いので好きなところにテントを張って良いですよ」と言われる。平日なので多分そんなものだろうと予想はしていたが、一応翌日の予約状況も聞いてみると3組だけとのことである。
受付を済ませて場内をぐるりと回る。
空はどんよりとした雲に覆われていて、夜には雨が降ることも考えられるのでなるべく炊事場や東屋などの施設に近い場所を探すことにする。電源付きのオートサイト6区画は、その点では一番良い場所にあるけれど、料金が違うのでそこにはテントを張れない。
最後に決めた場所は、2年前にテントを張ったところの隣のサイトだった。
それにしても一つの区画がやたらに広い。車をサイトの端に停めてテントをその反対側に張ろうとしたところ、かみさんから車が遠すぎると文句を言われてしまった。
同じ区画に車を入れて、そこからの荷物運びが遠すぎるなんて言われるようなキャンプ場は他に思い付くところが無い。
テントを張り終えたところで、かみさんがじっと森の方を見ている。何を見ているのだろうとその視線の先を追ってみると、そこの枯れ木の幹になにやら茶色いものが。
そこまで行ってみると立派なキノコが生えいていた。多分タモギタケだろうとは思うけれど、それほどキノコに詳しいわけではないので家に持って帰ってから食べることにした。
さすがにこの時期はキノコ図鑑までは持ち歩いていなかった。しだ・こけ図鑑まで持ってきているのだから、これからは図鑑類を常に持ち歩けるように何か考えた方が良さそうである。
一息ついて近くの温泉にでも入りに行こうと思ったら、かみさんが五右衛門風呂に入りたいと言い始めた。
ここの五右衛門風呂に入ったのはもう10年以上も昔の話だ。その時は息子と私しか入っていなかったので、他に誰も利用者がいない今日こそ自分も入ろうと考えているみたいだ。
お風呂に入るためには、まず薪割りから始めなければならない。
割った薪が少しだけあったので、かみさんがそれを燃やしている間に私が薪割りをすることになる。薪小屋に入っているのは直径30cmもあるような太い丸太ばかりで簡単には割れてくれない。
のんびりと温泉に浸かって湿原散策の疲れを癒そうと考えていたのに、ここで重労働をさせられるとは思ってもみなかった。
何とかお湯も沸いて、私が一番風呂に入ることにする。かみさんは五右衛門風呂に入るより、その風呂釜で薪を燃やす方が楽しいみたいである。
十分に沸いているのに私が入っている間もどんどん燃やし続けるものだから、まるで釜ゆでにされている五右衛門の気分である。
先にテントまで戻っていると、気持ちよさそうな表情のかみさんが戻っ てきて「寝る前にも入りたいから、出るときに薪を一くべしてきた」とのこと。
五右衛門風呂がすっかり気に入ったようである。
空の雲の高さが次第に低くなってきたような気がした。やがて周りの森の木々がその頂部からおぼろになり始める。そしてついにキャンプ場の風景が全て霧に覆われてしまった。
全く風がないのに、その霧は静かに動いているのだろう。目の前の景色が薄れていったかと思えば、いつの間にかはっきりと目の前に現れたりする。
他に誰もいない場内からは物音一つ聞こえてこない。
夜のとばりが降りると、園内の照明が霧の中にぼんやりと浮かび上がる。久しぶりの霧のキャンプ。霞んだ風景とは裏腹に、こんなキャンプは後々まで記憶に残るものである。
焚き火にあたりながらそんな風景を楽しんでいると、その粒を直接感じられるくらいにまで霧が濃くなってきてしまった。
雨具を羽織るが、身体に付いた霧の粒も焚き火の熱で直ぐに乾いてしまう。
寝る前に最後の五右衛門風呂に入ることにする。
風呂までは車に乗って行くことにするが、もろに酔っぱらい運転状態である。霧が濃くて前も良く見えない状態なので慎重にのろりのろりと車を進めた。
今度はかみさんが先に風呂に入る。最後に出るときに薪を一くべしたものだから、五右衛門風呂のお湯は沸騰する寸前になっていたようである。
私はその後で、ちょうど良い湯加減になった風呂にゆっくりと浸からせてもらった。
かみさんが「これならば、五右衛門風呂の前にテントを張った方が良かったわね。」
確かに、他に誰も来ないのが分かっていればその建物を占拠して五右衛門風呂に入りながらビールを飲む極楽キャンプを楽しめたかもしれない。
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翌朝はウグイスの賑やかな囀りで目を覚まさせられた。
霧はかなり薄れていたけれど、まだ近くの山は霞んだままだ。誰もいない場内をぐるりと散歩する。
高原の空気がとても美味しい。
ゆっくりと朝の焚き火を楽しんだ後は、テントが乾くのを待って撤収開始。
久しぶりに心からリラックスすることのできたキャンプだった。
帰りは近くの畑の中に伸びる砂利道を走ってみた。山間に広がる白滝の畑の風景がとても美しい。天気が良ければもっと素晴らしい景色を見られそうだ。
その後、愛山渓温泉にも寄り道。
天気が良ければ雲井ヶ原湿原も歩いてみようと考えていたが、生憎濃い霧がかかっていたので温泉に入るだけにした。
源泉そのまま100%かけ流しの温泉は身体に染み入ってくるようだ。五右衛門風呂も良いけれど、やっぱり温泉の方がもっと良いのである。
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