トップページ > キャンプ > キャンプ日記 > 2006年キャンプ日記

夕陽と朝陽の日の出岬キャンプ

日の出岬キャンプ場(6月24日〜25日)

 4泊5日の道北・オホーツク方面のキャンプ旅行。
 金曜日から仕事を休んで出かけるつもりが雨模様の日が続き、やむなく出発を1日遅らせ、休みを後ろに1日ずらして、土曜日に札幌を出発。
 我が家としては珍しく、今回のキャンプでは事前に十分な検討を重ね、完璧な計画を作り上げたつもりでいた。
 まずは松山湿原でワタスゲの花が咲き乱れる風景を楽しんで、歌登のいこいの森キャンプ場に宿泊。次に宗谷岬に向かって宗谷丘陵をじっくりと堪能した後は猿払公園キャンプ場でホタテを腹いっぱい食べる。その後オホーツク海沿いを南下しながら原生花園を楽しんでウスタイベ千畳岩キャンプ場に宿泊して蟹三昧夕食。翌日はBE-PAL連載で有名になった滝上町の「陽殖園」を見学して岩尾内湖白樺キャンプ場に宿泊。
 全く無駄のない惚れ惚れするようなこの計画も、出発直前にあっさりと崩れてしまった。
 出発を遅らせたものの、土曜日になっても天気はすっきりと回復しない。初日に訪れる予定の松山湿原への期待は大きく、できればここは青空の下で楽しみたかったので、後ろの方に予定していた「陽殖園」を先に見学することに変更。キャンプ場はその近くのさるる海水浴場に泊まる事にする。
 「その後のことは現地に行ってから考えることにしよう」、結局何時もと同じ無計画なパターンになってしまった。

 旭川紋別自動車道の浮島インター付近から滝上町へと向かう。
 ここは初めて走る道だ。「浮島インターと言えば、この途中に浮島湿原があったはず」、その看板を見つけた瞬間、迷わずにハンドルを切って浮島湿原へ向かう砂利道へと車を乗り入れた。
タケノコを探して下ばかり見ている! こんなマイナーな湿原には誰もいないだろうと思っていたら、駐車場には5、6台の車が停まっていて驚かされる。でも直ぐにその訳が分かった。湿原へ続く遊歩道でパンパンに膨らんだリュックを背負ったおじさんおばさんグループとすれ違ったのである。タケノコ採りの人達だった。
 遊歩道の周囲はシラカバやエゾマツ等が混ざり合った美しい森になっていて、その下はネマガリタケが密生している。
 それまでは森の景色を楽しみながら歩いていたのに、おじさんグループとすれ違った途端、私たち夫婦は両脇の竹薮の根元ばかりに注意が行くようになってしまった。
 30分ほどかけて湿原入り口にたどり着いたときには、既にかなりの量のタケノコをゲットしていた。
 入り口に立ったときの第一印象は、「随分こぢんまりとした湿原だな」であった。
 木道の板が所々で外れかけているが、ピカピカの木道よりもこんな危なっかしい木道の方が趣があって楽しい。足下に注意しながら、湿原の中をのんびりと散策する。小さな沼が沢山点在していて、歩いていても飽きることがない。
 あちらこちらでチングルマが可愛らしい花を咲かせている。他にも名も知らぬ花々が所々でひっそりと咲いている。夫婦それぞれ気に入った場所を見つけては、自分のデジカメでそんな花たちに焦点を合わせる。フウマも好き勝手に湿原散策を楽しんでいるようだ。
 奥の方まで行くと、木道が潅木の間を抜けるように続いていて、そしてその先にはもっと広い湿原の風景が広がっていた。小さな湿原だと思っていたら、その広さは松山湿原以上はありそうだ。
 沼の水面には周りのアカエゾマツの姿が映りこんでいる。空が雲に覆われているのでその水面の風景もモノトーンになってしまっているが、これでもし青空が広がっていたとしたらその美しさは最高だっただろう。
 でも、直前まで降っていたらしい雨のおかげで湿原の植物たちがとても生き生きとして見える。厚く積み重なった泥炭の上をサラサラと音を立てて水が流れ、まさに生きている湿原と言った感じだ。
 すっかりこの湿原を気に入ってしまい、気が付くといつの間にか時間もかなり経っていた。木道はまだ奥まで続いている。ここに時間をかけ過ぎると陽殖園を見る時間が無くなってしまいそうだ。それでも良いかなと言う気もしたが、諦めてそろそろ駐車場に戻ることにした。

浮島湿原   浮島湿原

 滝上町に着く頃には昼近くになっていたので、そこで昼食をとることにした。
 滝上町は初めて訪れる街である。芝桜でも有名だが、花は既に終わっていた。町の中央を流れる渚滑川が小さな渓谷を作っていて、これが結構良い眺めである。紅葉の時期はさぞかし素晴らしい眺めを楽しめるだろう。
滝上渓谷 ここをカヌーで下れるかな等と考えながらその付近をぶらついていると、「天手古舞」と言う食事どころを発見した。出発前にインターネットで検索してこの店の名前は知っていた。メニューの内容が全て有名人の名前になっていると言う風変わりな店らしい。
 店内に入ると結構な賑わいで、店の内装も田舎の町にしては結構洒落ている。
 早速メニューを開いてみると、「土井たかこ」だとか「みのもんた」・「毛沢東」などと言った名前がずらりと並んでいる。一応その横には本当のメニューの内容がカッコ書きで書かれているが、名前とメニューは全然関係無さそうだ。
 私は吉幾三(トロロめし定食)、かみさんは栃東(しめじそば)を注文。かみさんはさすがに恥ずかしがって、本物のメニューの名前で注文していた。
 混んでいるためか結構待たされたが、その間店内の壁に貼られたサラリーマン川柳のような短冊を見て時間を過ごす。
 味はまあまあ、値段はちょっと高め、量はかなり多めと言ったところである。かみさんが注文したしめじそばは、「しめじが1パックそのまま入っているみたい」、とのことだった。

 滝上の渓谷公園キャンプ場もついでに見に行ったが、公園の中の一体何処がテントサイトなんだろうと迷ってしまった。パークゴルフ場に隣接したわずかな芝生部分がどうやらサイトらしいが、そこにテントを張る勇気は私には無いだろう。
 そうしてようやく本来の目的地である陽殖園へと向かった。
 細い山道をしばらく登り、本当にこんな場所にあるのだろうかと心配になり始めた頃にようやく陽殖園入り口に到着。質素な門を入ると、質素な小屋の前でおじさんが笑顔で出迎えてくれた。
 「ここは初めてかい?何でここのことを知ったの?」
 「BE-PALです。」と答えると、嬉しそうな顔をして「それじゃあここのことは良く知っているね。5時まで開いているから時間をかけてゆっくり見て来て下さい。」と言われた。
 実は、BE-PALに連載されているのは知っていたけれど、私はBE-PALの記事は転覆隊以外はほとんど読んでいないのである。時計は既に2時を過ぎていてなるべく早くキャンプ場に入りたいのに、5時まで見て行けと言われても困ってしまう。
陽殖園 おじさんをがっかりさせては悪いので、なるべく時間がかかるようにゆっくりと園内を歩く。
 最近は園芸植物よりも野の花のほうに興味が移ってしまっているので、浮島湿原を歩いたあとではここの花を見ても何も感じないのである。
 家に帰ってから改めてBE-PALの連載を全て読んでみたが、あらかじめ予備知識を持って、もっと時間に余裕があるときに、直前に浮島湿原に寄り道などしないで真直ぐにここに来ていたら、もっとここの植物を楽しめただろう。
 結局1時間ほどで受付まで戻ってきた。
 「あれ?もう戻って来ちゃったの?」とがっかりしたような表情のおじさんに、かみさんが「犬を車で待たせているものですから。」と申し訳無さそうに挨拶した。
 実はこの後、先ほどの天手古舞で見た地元のローカル新聞に、個人の敷地にあるルピナスの丘がこの週末だけ特別公開されるとの記事が載っていたので、そこにも行ってみようと考えていた。さすがにもう時間が無いのでキャンプ地へと向かうことにしたが、滝上町はなかなか面白そうな町である。

 オホーツク海に近づくにしたがって青空が広がり始めた。海キャンをするのならやっぱり青空の下が嬉しい。
 ただ心配なのが、さるる海水浴場のオープンが7月からとなっていることだった。併設しているバンガローが6月からオープンしているので、多分トイレや水場も使えるだろうと勝手に想像していたのである。
 国道から興部町沙留の市街地へと入る。数件の家がある程度の小さな集落だろうと思っていたら、大きな町なのでちょっとびっくりした。
 これはもしかしたら大外れのキャンプ場かも。不安を感じながら町外れまでやってくると、海水浴場のバンガローが見えてきた。海岸は防波堤から下がったところにあったので、これなら周りの人家を気にしないで海だけ眺めてキャンプを楽しめそうだとホッとする。
 ところが、そこのトイレや炊事場の建物はシャッターが下りたままで、周りには砂が吹き溜まっているような有様だった。
 かみさんが、「水さえ汲んできたらここでもキャンプできるんじゃない?」と言ってきたが、このような事態はあらかじめ想像できたので、第二候補地として日の出岬キャンプ場を予定していたのである。
我が家のサイト 直ぐにそこに向かうことにしたが、それでもやっぱり心配事があった。日の出岬キャンプ場はペット禁止なのである。
 ここで追い返されてしまったら、久しぶりのキャンプ難民となってしまう。今時期なら利用者も少ないので、まさかペットがいると言う理由だけで宿泊を断られることは無いだろうとは高をくくっていたものの、最近のご時勢だからどうなるか分からない。
 「もし断られたら、受付の前で大喧嘩始めたら良いかもよ。」二人で作戦会議を開きながら、日の出岬へと車を走らせた。
 現地に到着して、受付で「犬がいるんですが泊まらせてもらえますか?」と恐る恐る聞いたところ、優しそうなお兄さんが「あっ、それは関係ないですから」との返事。
 「キャンピングガイドのペット禁止マークは何なんだ!」と思いながらも、ホッとして受付を済ませた。
  先客はトイレの隣に夫婦連れらしいテントが一張りだけ。何でこんなところにテントを?と思ったが、多分設営時に風が強くて、トイレを風除け代わりに使ったのだろう。
 我が家はステージのような建物の直ぐ前にテントを設営することにした。風もほとんど吹いていないので、海に向かってテントの入り口を向ける。
日の出岬の風景 観光客向けの駐車場や食事施設が隣接しているし、ロケーション的には大して期待していなかったキャンプ場であるが、我が家のテントを張った場所からは海も見下ろせてなかなか良い眺めだ。
 それになんと言っても、上空に広がってきた青空が素晴らしい。これだけでも、ロケーション度が星2つ分くらいはアップする。
 設営を終わって岬の方に行ってみると、エゾカンゾウやヒオウギアヤメ、センダイハギにハマナスなど、今時期の原生花園を彩る植物があちらこちらで花を咲かせていた。
 原生花園のような華やかさは無いものの、こんな風に何気なく野の花が咲いている風景が大好きである。
 足元を良く見ると名も知らぬ花に混じって小さなスズランも花を付けていた。薄い表土の下は直ぐに固い岩盤になっているのだろう。それでも必死に花を咲かせている姿に余計に感動してしまう。
 太陽がかなり西に傾いてきた。日の出岬とは言うけれど、今時期は海に沈む夕陽も楽しめそうだ。
 その前にまず夕食を済ませる事にする。レトルトご飯と、家で作ってきたカレーを温めるだけと言う質素な夕食だが、今日みたいにキャンプ場到着が遅くなったときはこれに限る。
 太陽がステージの建物に隠れてしまったので、日が当たる場所まで移動してカレーを美味しくいただいた。
 その後は岬に移動して、サンセットショーが始まるのをゆっくりと待つ。あたりの風景が次第に赤みを帯びてきて、野の花たちも赤く染まった。
 キャンプ最初の夜からこんなに素晴らしい夕陽を楽しめるとは思ってもみなかった。

サンセットショーの始まりを待つ   美しい夕焼け

 その後はホテル日の出岬で温泉に入り、いつもどおりに焚き火を始める。
 すると突然、雷のような音が響いてきた。
 「あっ!花火だ!」、花火に目のないかみさんは直ぐに駆け出した。
 先ほど夕陽が沈んだその方向、街の明かりが一直線に並んで見えるあたりから美しい花火が打ち上げられていた。
 「お祭りでもやっているのかな〜」
 翌日になって雄武町の産業観光祭りの打ち上げ花火だったことが分かった。
 せっかく火をつけた焚き火が30分も花火に夢中になっている間にかなり燃え尽きてしまっていた。新たに薪をくべて、焚き火の仕切りなおし。
焚き火風景 岬の先端で光り輝いていた総ガラス張りの展望台「ラ・ルーナ」も、9時を過ぎると照明が消えて、空には星が瞬き始めた。まだ夏至を過ぎたばかりで暗くなるのは遅いし、朝日が昇ってくるのはとんでもなく早い。
 我が家のキャンプにしては夜更かしの部類に入る10時すぎにテントに入る。これでは明日の朝、朝陽が昇る前に起きるのは絶対無理そうだ。

 テントの外でガサゴソと動き回るかみさんの気配に目を覚まさせられた。
 一体何時だ?と思って時計を見ると朝の3時を回ったばかりである。目を開けても起き出す気には全然なれない。
 ところがかみさんの「すごい良い天気よ!」の一言に刺激されて、眠たい目を擦りながらテントの外に這い出した。
 既に東の空は薄らと明るくなり始めていた。空は文句の無い快晴。眠気も一気に吹き飛んで、カメラを抱えて岬の先端へと急ぐ。
 次第に明るさを増す東の空に一筋の赤い線が浮かんでいた。飛行機雲が、一足早く朝陽を浴びて赤く輝いているようだ。
 その飛行機雲の動きを目で追っていると、ついに水平線の上に太陽の一部が顔を出した。陽が昇るにしたがってその飛行機雲も朝陽に近づいていく。
 そしてちょうどその上を通り過ぎるとき、朝陽が丸く水平線の上に浮かび上がった。
 かみさんがため息と共に、「今まで見た朝陽の中で一番綺麗」と呟いた。やっぱり日の出岬の名前は伊達ではないのである。

最高の日の出   朝陽を背にしたフウマ

 5時を過ぎると漁船が一斉に出港してきた。岬の周りでウニ漁をしているようだ。
 朝食を済ませて、再び岬周辺の花を楽しむ。朝露に濡れた名も知らぬ花がとても美しい。かみさんは花の図鑑を片手に、一つ一つの花の名前を一生懸命に調べている。
 興味がなければただの草原にしか見えないだろう。少し花に興味を持つだけで、これが宝物が散りばめられた草原に変わってしまう。
 真っ青な空に真っ青な海、キャンプ1泊目からこんなに快適な思いをしてしまって良いのだろうかと、貧乏性の私はかえって心配になってしまうのである。

キャンプの写真アルバムを見る


戻る   ページTOPへ