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晴天新緑満水金山湖キャンプ

かなやま湖畔キャンプ場(5月21日〜22日)

 国道38号線が東大演習林の中を通り過ぎる富良野市山部付近、沿道のサクラが開花する時期にここを通ると道路の正面にそびえる雪を抱いた芦別岳の姿と相まって、感動的な風景を楽しむことができる。
 私がその風景に出会ったのはもう20年以上も前の昔の話だ。
 もう一度その時の風景に再会してみたい。そう思いながらも、なかなかチャンスに恵まれないままに年を重ねてしまった。
 今年こそサクラの咲く季節に山部へ行ってみよう。今回のキャンプの目的はその一点だけである。
 泊まる場所は、近くの山部自然公園太陽の里キャンプ場あたりが適当かな。そう考えていたところ、2年前のキャンプ場情報BBSへの書き込みで、Nさんが同じ時期に金山湖に泊まった時の満水の湖の写真が添付されていたのを思い出した。
 私はそれまで、水位が下がって地肌が剥き出しになった金山湖の姿しか知らなかったものだから、この写真はちょっと衝撃的だった。
 早速インターネットで金山ダムの貯水率を調べたところ、Nさんが泊まった当時と現在とではほぼ同じような貯水率になっている。これはもう、かなやま湖畔キャンプ場に泊まるしかない。
 二つの大きな目的ができて、キャンプへの期待が大きく膨らんできた。

三笠の紅葉 出発日の日曜日の朝、文句の付けようも無い素晴らしい青空が広がっていた。天気予報を見ても明日の午前中までこの天気は続きそうだ。
 そんな状況で唯一気がかりなのが、私たち夫婦のシラカバ花粉症の症状だった。朝起きた時から二人そろってくしゃみの連発、鼻水ダラダラ、花粉防止用のマスクを付けて車に荷物を積み込む有様。
 これで戸外でキャンプしようと言うのだから、花粉症患者にとってはまさに自殺行為である。
 特攻隊になった気分でキャンプへ出発した。
 三笠の桂沢湖経由で富良野へ向かう。周辺の山々は新緑が一番美しい時期を迎えていた。
 樹木の種類によっては、冬芽から展開してきたばかりの新芽が赤い色をしているので、遠くから見るとまるで紅葉しているように見える。この芽吹きの時の色は樹木それぞれに特徴があり、それらが混ざり合って色づく山肌は、一年の中でもっとも美しくなる。
 秋の紅葉はその後ただ散るだけ。華やかな中に寂しさを感じさせる秋の風景と違って、同じような色に染まった春の新緑の風景は、まさに命に満ち溢れている感じがする。
 そんな新緑の山を抜けて富良野盆地に出てくると、まだ雪の残る十勝岳連峰の白い姿が見えてきた。今日のような青空の下なら、十勝岳の姿も最高に美しく見えそうだ。
 などと欲張ったことを考えてもしょうがないので、富良野スキー場側の裏道を通って山部方面に向かう。
 次第に芦別岳の姿が大きくなってきた。付近のサクラは既に散り始めていて、咲き遅れたような木だけがまだ花を付けている状況だ。
 ちょっと心配になってきたけれど、豪壮な芦別岳の眺めに期待だけは大きく膨らんでくる。
 裏道から国道に戻り、空知川を渡っていよいよ東大演習林の森が迫ってきた。ところがサクラの花の姿が、何処にも見えない。沿道のサクラの木はすべて葉桜となってしまっていた。多分、先週末くらいに私の期待したような風景が広がっていたのだろう。
 道路際に車を止めて後ろを振り返る。森の中を切り裂いて伸びる1本の道、そしてその先に壁のように視線を塞いで聳える芦別岳、それだけでも十分に感動できる風景だ。でも、その風景の中にサクラのピンク色が含めれていないのが、私にとっては満足できないところだった。
 20年前の風景に再会できるのは一体いつのことになるのだろう。

芦別岳   国道38号から見た芦別岳

 金山湖キャンプ場でテントを張るのなら、一番湖畔よりのサイトしか考えられない。こんなに天気の良い日曜日、多分その場所は先客に占領されていそうなので、前日からのキャンパーが帰ってしまいそうな昼過ぎにキャンプ場入りする予定でいた。
 まだ時間も早いので、以前から興味を持っていた近くの十梨別渓谷に寄り道することにする。そこへは金山の市街地からトナシベツ川沿いに山の中に入って行く。
 その先には夕張岳の登山口があるみたいだが、普段は釣り人しか入らないような場所だ。
十梨別渓谷 十梨別渓谷の看板が立っている場所までは、比較的簡単にたどり着くことができた。川にかかる橋の上から渓谷を見下ろせるような場所で、紅葉の時期はそれなりに楽しめそうだが、それほど素晴らしい眺めでもない。
 当然ここで戻る気もないので、そのまま林道を先に進むことにする。 崖の下を流れるトナシベツ川は雪解け水で増水し、急流となっている。
 釣り人ならばこんな場所を走るときは、良いポイントがないかを気にするのだろうが、私たち夫婦はすぐに「カヌーで下れるだろうか」ということを考えてしまう。
 かみさんなどは、急な流れを見るとすぐにカメラでそのアップ写真を撮影し、後でパソコンの画面で確認しては「凄〜い!」と言いながら一人でニヤニヤしているのである。実際に川を下るときは、急な流れを目の前にすると直ぐに泣きそうな顔をするくせに、まったく変わった性格である。
 路肩が崩れかけていたり、上の崖から砕けた岩が落ちてきていたり、雪解け水が道の上を流れていたりと、こんな道はオデッセイではなくて本格的なクロカン車で走りたいところだ。
 急流に彩を添えるエゾヤマザクラの花、湿地に咲くミズバショウ、水たまりで泳ぐオタマジャクシ、崖の上のスミレの花、荒々しい自然の中でそんな小さな発見が嬉しく感じる。
 林道は登山口の先で大きく崩落して通行止め、そこで引き返してそろそろキャンプ場へと向かうことにした。

満水の金山湖 まず、金山ダム近くの展望台に上ってみる。そこから見える金山湖は、新緑の山並みに囲まれ満々と水を湛えていた。
 朝出てくるときに確認した金山ダムの貯水率は88%、こうして見てみるとほとんど100%に達していそうな気がする。ダム湖特有の、山の樹木と水面との間の剥き出しになった土の部分が何処にも見当たらない。まるで自然の湖のようだ。
 そんな風景に気を良くして、キャンプ場に到着。美しい緑の芝生の直ぐ向こうに、真っ青な空を映した金山湖の水面が青く広がっている。広々とした場内にはテントが一張りあるだけで、我が家が狙っていた場所にテントを張れそうだ。
 早速、受付を済ませる。受付のおじさんも親切な人で、「今日はカヌーに乗るのには最高だね。水が多いから、園路からそのままカヌーに乗れるよ。カヌーを運ぶときはリヤカーに乗せた方が楽だよ。リヤカーは返さなくてそのまま置いていても良いからね。」と、早口で話しかけてくる。
 以前ここに泊まった時、管理人の横柄な態度に少々ムッとした事があった。どんちゃん騒ぎをする団体客、吠えまくる犬をほったらかしのペット連れキャンパー、減水して惨めな姿をさらした金山湖。それらを含めて、これまで金山湖には良いイメージを持っていなかったのだが、今日はその悪いイメージが次々と剥がされていくような気がする。
 管理人さんの言葉になおさら気分も良くなり、リヤカーに荷物を積み込む。今回はかなり荷物を減らしたつもりだが、焚き火用の薪も含めて、やっぱりリヤカー山盛りになってしまった。
 それでも1回で運びきれるので、リヤカーがあれば250m離れたサイトでも荷物運びは全く苦にならない。
 気持ちよさそうに芝生の上で寝転がっている人、散り始めたサクラの木の下でお弁当を広げるファミリー、快晴の空の下で休日を過ごす人たちのそんな姿に、こちらも心が和んでくる。
我が家のサイト ここのキャンプ場はほとんどが傾斜地で、水際で平らな場所は2ヶ所しかない。そのうちの1ヶ所は我が家でテントを張る予定の場所。もう1ヶ所には既に先客のテントが張られていたが、そこは本当に水面の直ぐ近くで今回のベストサイトは多分そこの場所になるだろう。
 でも、こちらの方がやや高くなっている分、湖の風景も見渡せて全く不満は無い。
 早速テントの設営にとりかかる。今回は3月の美瑛自然の村に泊まった時と同じく夫婦別居キャンプである。
 それぞれが自分のテントを設営、私が張り終えてもかみさんはまだ手間取っている。小さなテントと言っても、やっぱり2つ張るのには何時もより時間がかかってしまった。
 昼を過ぎていたので、直ぐにスパゲティを茹でて昼食にする。
 湖は満水というより、どちらかというと洪水と言った方が良いような状況になっていた。湖畔部分の園路はすべて水没、樹木も水の中からにょきっと立ち上がっている有様だ。芝生も水没しているので、水際は砂地でなくてそのまま芝生というこれまた不思議な光景である。
 でもそのおかげで、緑の芝生と新緑の樹木、それに青い空と青い湖が繋がって絵に描いたような美しさを作り出している。
 高校生風の一団がゾロゾロと湖畔まで降りてきた。どうやら修学旅行でのカヌーの体験試乗みたいだ。美しい湖にカナディアンカヌーで漕ぎ出す彼らの姿を見ていると、こちらも我慢できなくなってきた。
 車まで戻って、リヤカーにカヌーを積んで運んでくる。
 芝生の上から直接カヌーを出せるというのは、なかなか気持ちの良いものだ。パドルにガリッと言う感触が伝わってきた。岩かなと思って下を覗くと、水の底にアスファルトの園路が沈んでいた。
 湖上に出て後ろを振り返ると、芝生の緩やかな斜面がそのまま湖面へと続いている様子がとても美しい。
 ただ、それが芝でなくてラベンダーの畑だったりすると、ちょっと可愛そうに感じてしまう。水中を覗くと、丸く刈り込まれたラベンダーがまるで水草のように生えているのが見えた。
 小さな岬を回りこんで入り江の奥に入っていくと、水中からバスケットボールのゴールポストがニョキッと立ち上がっていた。カヌーでその下まで行くと簡単にゴールリングに手が届く。カヌーの上からダンクシュート、何だか変な感じである。

湖上からの風景   カヌーの上からダンクシュート

 サイトに戻り、ビールで乾杯。
 BYERの椅子でくつろぎ、青い空を見上げる。こんな空の下でキャンプをするのは何時以来だろう。
 爽やかな空気を思いっきり吸い込むと、急に鼻がムズムズしてきた。目の前には、大量の花を咲かせたシラカバが生えている。
 思っていたほど酷い花粉症の症状は出なかったけれど、それでもかみさんと二人で消費するティッシュの量は尋常ではない。
美しい湖畔の風景 水際を歩いてみると、新緑の木々から木漏れ日が差し込み、鮮やかな緑の芝生に影を作る。イギリスの湖水地方、写真でしか見たことが無いがきっとこんな風景なのだろう。
 造園の手法で、池の護岸を岩でなくて芝生にすることがあるが、ここでは天然の芝生護岸となっている。優しい風景に心をすっかり癒された。
 夕暮れが近づくにしたがって日曜日の喧騒も次第に遠ざかり、場内には静寂が訪れてくる。こんな一時が、しみじみとしてとても好きである。
 私たちの下にテントを張っていたキャンパーもいつの間にか帰ってしまい、湖岸に数人の釣り人の姿が見えるほかは広い場内に誰も居なくなった。
 焚き火に火をつける。最初に燃やすのは大量のティッシュの山である。
 きれいに管理されたここのようなキャンプ場では薪の現地調達も難しいだろうと、自宅から薪を準備してきていた。
 今回の薪は、2年前の台風18号で倒れた我が家の庭のナナカマド。2年物の薪だけれど、ちょうど良く乾燥していて柔らかな炎を上げながらじっくりと燃えてくれる。
 ナナカマドの名前は、七度かまどに入れてもまだ燃え残るところから付けられたとの説もあるみたいだが、じっくりと燃えてくれるので、焚き火用の素材としては一級品と言えるかもしれない。
 そのナナカマドも小さく燃え尽きた9時頃、それぞれのテントに入って眠りについた。

 今回のキャンプからスリーシーズン用の薄いダウンのシュラフに変えていたが、何度か寒くて目が覚めた。
 かみさんが4時頃にテントから出てくる音が聞こえたので、「もう起きるの?」と声をかけたら、寒くて寝てられないとの返事。
 もう少し朝の微睡みを楽しんでいたかったけれど、テントの中も明るくなっていたので私も起きることにする。テントを出ると既にかみさんが焚き火にあたっていた。
 「だからまだ冬用のシュラフの方が良いって言ったのに!」
 日中の気温が25度を超えたりしていたものだから油断してしまったが、5月はまだまだ朝晩冷え込むのである。
 テントの周囲にそれほど木は生えていないのに、野鳥の声も結構賑やかに聞こえてくる。対岸の山からはキツツキのドラミングの音が湖面を越えて響いてくる。
朝のカヌー 何時ものキャンプなら、ここでコーヒーを入れて楽しい時間を過ごすところだが、今回はコーヒーを忘れてしまったので、代わりにペットボトルのお茶を飲むしかない。
 我が家のキャンプで一番忘れられやすいのが、私の髭剃りとコーヒーである。これらを用意するのはかみさんの担当なので、出発間際に「髭剃りとコーヒーは持った?」と最終確認までしていたのにこれである。
これからは私の担当に変えたほうが良さそうだ。
 かみさんが夜中にトイレに起きた時、場内には鹿の大群が来ていたとの話である。テントの周りにも生々しい鹿の糞が落ちているところを見ると、直ぐ近くまで鹿達がやって来ていたみたいだ。
 目の前に広がる静かな湖面を見ていると、またカヌーに乗りたくなってきた。かみさんにカメラを預けて、私一人でアリーに乗り込んだ。パドルを一かきする度に、全く波の無い湖面を切り裂くようにアリーがスーッと進んでいく。
 時々、魚がライズして、その波紋が湖面に映った木々の姿を揺らしている。
 岸に戻ると、今度はかみさんが一人で乗ると言いはじめた。かみさんの乗ったアリーは右へ左へと湖面を迷走し、そこに映った風景を無茶苦茶にかき回して、岸に戻ってきた。
 もう少し一人で乗る練習をさせたほうが良いかもしれない。
 ようやく太陽が昇ってきたが、今日は薄い雲が空全体にかかってしまい、美しい日の出の風景とはならなかった。
 ここのキャンプ場で唯一興ざめするのが、対岸の土取り場が視界に入ってしまうことだ。
 土が抉り取られ剥き出しになった山肌、それを見ていたかみさんが「何だか人の顔に見えない?」
 そういった場所に人間や動物の顔の輪郭を見つけ出すのは、かみさんの得意技である。私はかみさんから言われて、「そういえば人の顔に見えるね。」と、やっと気がつくくらいだ。
 それくらいならまだ良いが、「どこかで見たことある顔だと思ったら、保毛尾田保毛男(ほもおだほもお)に似ているんじゃない?」、トンネルズの石橋貴明が昔やっていたキャラである。
 ここまで来ると得意技というより、離れ業と言ったほうが良いかもしれない。
サクラの咲く風景 場内を散歩していると、アカエゾマツの木の下に大きな松ぼっくりが沢山落ちているのを発見した。クリスマス時期には、同じようなものがツリーのオーナメントとして1個百円くらいで売られたりしている。
 二人して、「1個百円、1個百円」とつぶやきながら、大量の松ぼっくりを拾い集めた。我が家に帰ると、こうやって拾い集めた色々な松ぼっくりが大量に眠っているのだ。
 テントに戻る途中、真っ白な冬毛から春の毛色に変わった野うさぎが私たちの前を駆け抜けていった。
 すっかり乾いたテントを気持ちよく撤収。管理人のおじさんが「寒くなかったかい?」と声をかけてきてくれた。
 管理人さんの話によると、今時期の金山湖は下流にある二つのダムの水位を調整するためにたっぷりと水を貯め込むとのことである。
 これまでの金山湖に対する私のイメージが一変させられた今回のキャンプ、金山湖に泊まるのならば絶対に今時期に限るのである。

 キャンプ場を後にして、金山湖上流の空知川の様子を見に行く。
 今回のキャンプでは空知川が湖に流入する部分をカヌーで下ってみようとも考えたが、雪解け水で増水していそうで我が家単独で下るのは無理だろうと諦めていたのだ。
 思っていたとおり川は大増水。もしこの状況で下っていたら悲惨なことになっていたのは確実である。
 ついでに、映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地も見てみることにした。
 普段はこの前を見向きもせずに通り過ぎるだけだが、今回はすっかり観光客気分になっているので、こんな時でなければ訪れることも無いところだ。
 幌舞駅映画に使われたその駅舎を一目見ただけで、ぽっぽやのシーンが頭の中に浮かんできた。観光用に残された映画のセットと違って、その駅舎は今でも地元の人達が利用している駅であるということが、余計にそうさせるのだろう。
 南富良野の道の駅に寄ったところ、我が家の車に積んであるカヌーを見てロマンスグレーのおじさんが話しかけてきた。
 「カヌーに乗るんですか。私も昔はよく乗ってました。」
 「地元の方なのですか?」と尋ねると、「えっ、まあ、中富良野の方でラベンダーを作っています。」との返事。
 「ん?、!」
 最初は変わったおじさんだなと思っていたけれど、どこかで顔を見た気がする。
 「もしかして富田さん・・・ですか?」と尋ねると、「えぇ」と照れくさそうに小さな声で返事が返ってきた。
 中富良野のファーム富田創業者の富田さんだった。
 まあそれはどうでも良いことで、富田さんにとっても金山湖は大好きな場所みたいだ。
もっと色々とカヌーの話とかをしたかったけれど、お互いに口下手といった感じで、私の方から「それじゃあどうも」と切り上げてしまった。
 ファーム富田の富田さん、とても素敵なおじさんである。
 富良野の北時計で昼食をとり、店を出ると雨が降り出してきた。
 シーズン初めに楽しめた最高のキャンプ。果たして今シーズン、これ以上の快適なキャンプって楽しむことができるのだろうかと心配になってしまうようなキャンプだった。

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