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ついに実現、究極の雪中キャンプ

美瑛自然の村キャンプ場(4月1日〜2日)

 2月の天人峡、3月の旭岳、いずれも天気に恵まれずに、期待していた真っ白な雪山の風景は雲に隠されたままだった。このまま春を向かえてしまうのには、どうしても心残りである。
 4月に入ったばかりの週末、珍しく土曜日1日だけが晴れの予報になっていたので、このわずかなチャンスを狙って今度は白金温泉に雪中キャンプへ出かけることにした。
 週間予報では日曜日が雨、金曜日は雪模様だが午後遅くから晴れてくるとのことだったので、金曜日に休みを取ってキャンプへ出かける計画を立てる。
 その金曜日、冷たい風が吹き付ける中、車に荷物を積み終えさあ出発しようとしたその瞬間、部屋の中に響く電話の呼び出し音。ちょっとしたトラブルがあって、結局この日の出発は見送る羽目になってしまった。
 普通はここでかなりの精神的ダメージを負ってしまうところだが、荷物を積み込んでいる間も寒さのために今一気分が盛り上がらずにいたし、日曜日の天気予報も次第に良いほうに変わりつつあったので、気持ちを切り替えて翌日土曜日の出発に変更することにした。

 それでも天気の良いのは土曜日だけになりそうなので、その間に少しでも沢山遊んでおこうと考え、当日は5時起床、6時半には札幌を出発。
 道路には夜中に降った雪がシャーベット状に残り、空もどんよりと曇っていたものの、これから次第に天気がよくなると思えば、前日と打って変わって気分は晴れやかである。
 ところが、どこまで走っても一向に天気がよくなる気配がない。
 この日はまず、真っ青な空の下に広がる真っ白な美瑛の丘の風景を堪能しようと考えていたのに、美瑛までやって来てもどんよりとした雲は上空を覆い続けていた。
 晴れていれば丘の向こうに見えるはずの十勝岳の山並みも、その裾野すら見えない。
 私の壁紙サイトにアップできるような写真を撮るつもりでいたのが、撮影には最悪の条件である。とは言っても時間はまだ9時、この天気では他に行きたいような場所もなく、予定通り美瑛の丘めぐりをすることにした。
 この付近の道路はまるで迷路のように入り組んでいるので、地図を見ていても直ぐに自分の現在地を見失ってしまう。今回はあらかじめハンディGPSに交差点などのポイントを入れておいたので、それをチェックしていれば道に迷うことはない。
 「ナビなど不要、道路地図があればそれで十分、それに我が家には高性能?かみさんナビも積んであるし。」普段はそう考えていても、自分の位置を正確に知ることができるGPSはやっぱり便利なものである。

 道路際に車を止めて赤麦の丘付近に登ってみた。ひたすらに広がる大雪原、スノーシューを履いてその中を歩いてみると、空を含めて全てが白一色の世界となっているため距離感が完全に失われてしまう。
融雪剤の幾何学模様 目の前に見える丘の頂上も、どれくらい離れているか見当がつかない。自分の足元でさえ、どこが雪面か分からないので、ちょっとした起伏でもつまづいてしまうくらいだ。
 夢遊病者のようにフラフラと丘の上まで上っていくと、その向こうに見える丘の斜面には融雪剤で幾何学模様が描かれていた。
 北海道の春の風物詩。農家にとっては農作業の延長でしかない融雪剤の散布であるが、結構こだわりを持って丘の大キャンバスに絵を描いている人もいるのかもしれない。
 「ちょっとこの絵は出来が悪いかな」などと、一生懸命農作業している人には甚だ失礼なことを思いながらそこを後にした。
 次に訪れたのは親子の木が立つ丘である。観光シーズンならば観光客の絶えない人気スポットも、冬の今次期では訪れる人もほとんどいない。
 雪が積もっている時であっても無断で畑の中まで立ち入るのはルール違反なのだろうが、畑を傷めるわけでもないし、他に誰もいないことを良いことに、親子の木の周りを自由に歩き回って記念写真を撮らせてもらう。
 雲の切れ間から差し込んだ一条の光が、遠くの丘の一部を明るく照らし出した。たったそれだけでも、丘の風景が急に生き生きとして見えてくる。上空を覆った雲が本当に憎らしく感じてしまう。遠くの十勝岳は未だ雲に隠れたままだ。
 「まったく、今日は晴れると言ったのに、気象予報士の大嘘つきめ!」
 「だって今日はエイプリルフールよ。」
 妻のその一言で、何故だか素直に納得してしまう私だった。

親子の木の丘の上から   遠くの丘に日が射した

 手作りソーセージで有名な「歩人」で昼食をとった後、白金温泉へと向かう。
 次の目的は、白金温泉の近くにあるらしい美瑛川の秘密の撮影ポイントを探すことである。
 この美瑛川は、温泉の成分が溶け込むことによって川の水が青く染まりブルーリバーとも呼ばれている。そして、温泉街の近くにはとても美しい撮影ポイントが存在するらしいのだ。
 この話は、つい先日にネットで白金温泉のことを検索している時にたまたま見つけた情報である。
 そこで撮影された美しい画像に興味を惹かれて早速その場所を調べようとしたところ、何故かはっきりとした場所がどこにも書かれていなかった。
 どうやらそこは、あまり公けにはしないほうが良い場所らしい。秘密にされると余計に好奇心を掻き立てられるものである。意地になって検索した結果
 ・その周辺はライフル射撃場となっていて一般人は立ち入り禁止となっている
 ・射撃場が営業していないときでもその森に入るためには町の許可が必要らしい
 という事が分かってきた。
 冬ならば射撃場はやっていないだろうし、森の中に入るのに町の許可が必要と言うのも変な話である。場所も大体目星がついたので、その秘密の場所を自力で探し出して見ることにした。
 ネット上で公開されている写真は湖のような風景ばかりなのに、地形図で確認しても美瑛川にそんな場所は見当たらない。
 本当にここで良いのだろうか。半信半疑ながらも、ライフル射撃場の看板を見つけたので、その近くの路上に車を止め、スノーシューに履き替え森の中へと分け入った。
 数日前、北海道は春の嵐に見舞われ、十勝方面では季節はずれの大雪となっていたが、この付近でもかなりの雪が積もったようである。
砂防ダムから流れ出す青い水 4月とは思えないような新雪の中を苦労しながら進む。雪に覆われているので分からないが、何か人工的に作られたような地形が目につく。目の前に大きな土手のようなものが現れ、それを越えれば川にたどり着けるだろうと思ったら、その手前に水路があって越えることができない。しょうがないのでそのまま上流の方に進むと、途中からその土手の上に上がることができた。
 そこから見下ろすと、立ち枯れた樹木の林が見える。写真に写っていた風景に似ている。どうやらこの場所で正解だったみたいだ。
 アカエゾマツの間を抜けると、目の前に巨大な砂防ダムが現れた。そのダムの隙間から流れ出す水は、信じられないくらいに青い色に染まっている。
 その下流はまた砂防ダムで堰き止められ小さなダム湖のようになっていて、まさに写真で見たとおりの風景がそこにあった。もっと神秘的な場所を想像していたのでちょっと興ざめではあるが、不思議な水の色はやはり感動的である。
 砂防ダムを越えて上流側にも出てみたが、そこは自然のままの渓流となっていて、美しい青い水が流れていた。私としてはこちらの風景の方が好きである。
 その上流にも砂防ダムが見えていて、この付近はまさにダムだらけの川と化している。普通の川がこのように改修されるのは許せないが、この美瑛川の場合十勝岳の泥流対策としてどうしてもこの様な砂防ダムが必要になるのだろう。
 このブルーリバーの美しさを楽しむためには、余計なものが雪に埋もれて見えなくなる冬の期間が一番お勧めかもしれない。
 この後、温泉街まで行って美瑛川にかかる白金橋の上からブルーリバーの風景を楽しんだ。
 この橋からは「しらひげの滝」の姿も見ることができて、これもなかなか素晴らしい眺めだ。白金温泉には何度か来ているが、直ぐ近くにこんな場所があった事を今まで知らなかったというのは何とももったいない話しである。

青い湖   青い渓流

 そろそろキャンプ場へと向かう頃合である。美瑛の丘で歩いて、ブルーリバー探索で歩いて、これからがいよいよ本場だというのに既に体力をかなり消耗してしまっていた。
 次第に明るさを増してきていた空に、我が家がキャンプ場へ向かおうとしたタイミングで再び不穏な暗い雲が広がり始めていた。
 白金模範牧場の横を通って美瑛自然の村入り口へと向かう。何時もならここまで来たところで、模範牧場の広大な雪原の向こうに十勝岳連峰の山並みがどーんと広がっている風景に思わず感動の叫びを上げてしまうところである。
 しかしその風景は雲に隠されたままで、感動の叫びどころか思わずため息が漏れてしまった。
 キャンプ場へ続く道路は入り口部分だけが除雪されていたので、そこへ車を止めさせてもらう。
 その付近の積雪は1.5m程だろうか。ロータリー車で除雪されているので垂直の雪の壁となっている。その上にソリを乗せて荷物を積み込む。最後はその雪の壁をよじ登っていよいよキャンプ場へ向けて出発である。
 まるでその出発を祝ってくれるかのようなタイミングで粉雪が舞い始めた。ここまで天気に見放されてしまうと、もう天に向かって恨み言を言う気力もわいてこない。
重いソリを引っ張る ソリのロープをグイッと引くと、その重量が手から腕を通り体の中を貫けて足先まで伝わってきた。
 「お、重い。」
 背中に背負ったリュックは10kg程、ソリに積んだ荷物はソリの重量まで含めれば40kgは軽く超えていそうだ。
 おまけに数日前に新たに降り積もった雪は、やや湿気を含んだ重たい雪となり、ソリの進みを妨げる。まっすぐに伸びる道路の先を見やると、何となく上り傾斜になっているようだ。
 スノーシューで歩くだけでも大変な雪質なのに、そこを重たいソリを引きながら歩くなんて普通は有り得ない状況である。
 「こんなことをしてまでキャンプをするなんて、ちょっと馬鹿げているのでは。」そんな考えが頭の中に浮かんでくるが、もともとがお馬鹿な夫婦である。
 10歩進んでは立ち止まりの繰り返し。
 「キャンプ場まで行かなくてもこの辺の森の中にテントを張っちゃおうかな。」
 「いやいや、ここまで来たら意地でもキャンプ場にテントを張ってやる。」
 そうしてやっとキャンプ場の入り口に到着した。

 雪を被ったアカエゾマツの森、絵本の中のおとぎの国のような風景が広がっていた。
 「さて、どこにテントを張ろうか。」
 大きな木に囲まれた場所が好みのかみさん、開けた場所にテントを張りたい私、今回は私の意見の方を通させてもらって、南側に開けた場所がくるように考えながら丸くなった広場の片隅に設営場所を決定した。
 気温がプラスになっているので、スノーシューで雪を踏み固めたら気持ちよく固まってくれる。前回の旭岳キャンプの時の底なし沼のようなサラサラ雪とは大違いだ。
 いつものテントを設営し終わると、今度はかみさんが自分用のテントを張る場所を踏み固め始めた。そう、今回はとうとう二人別々のテントに寝ることにしたのである。
 旭岳キャンプでは小さなテントの中で人間二人と犬一匹ぎゅうぎゅう詰めになりながら寝たものの、かみさんの寝ていた場所だけが斜めになっていたようで寝返りもままならず、しかも直ぐ隣では私が大いびき。
 それにすっかり懲りてしまったようで、今度は自分用のテントで寝てみたいと言いはじめたのだ。
 我が家がまだファミリーキャンプをしていた頃、息子が一人で寝るために買った小さなテント。息子がキャンプに付いて来なくなった後は、私がソロキャンプ用に使っていた。今度はそのテントがかみさん用のテントになるわけである。
 親子3代と言うのとはちょっと違うが、なかなか有効に使われているテントである。
 いつの間にか上空に真っ青な空が広がっていた。太陽の陽射しを思いっきり受けて、真っ白な森の風景画が急に生き生きとしたものに変わった。
 もちろん人間も生き生きしてくる。
 こんな風景の中でキャンプを楽しみたい。ずーっと思い続けていた私の夢がとうとう現実のものになったのである。
 自分用のテントにシュラフやマットを運び込むかみさんの表情が子供のように嬉々としている。
 設営が全て終わった後は、雪の上にテーブルを出して太陽の光を全身に浴びながらビールをグイッとあおった。

最高のテントサイト   憧れのキャンプシーン

 一息ついたところで早速キャンプ場の中を歩いてみる。
 中央の通路に出てみると、その奥に美瑛富士の見事な姿がそびえていた。テントからこの姿が直接見られないのが残念である。どうせ他に誰もいないのだから、この通路のど真ん中にテントを設営しても面白かったかもしれない。
雪の上の足跡 そこら中に動物たちの足跡が残っている。ウサギ、キツネ、テン、リス。冬の間、この森はそんな小動物たちの天下となっているのだろう。
 そこへ突然闖入してきた風変わりな夫婦と短足の犬、樹木の陰からそっと私たちの様子を窺っているに違いない。
 雪の上の足跡に鼻をこすりつけるようにフウマがその後を追う。しかし悲しいかな、体重オーバーのフウマは時々雪の表面を突き破ってズブッ、ズブッと足が埋まってしまい、思うように雪面を歩けないでいる。
 トイレの建物も雪に埋まって、屋根の上まで直接歩いて上ることができた。
 このキャンプ場を利用したのは11年前の一度きりである。その時にテントを張った場所を探そうとしたが、雪の風景の中では様子がすっかり変わってしまって全然思い出すことができない。
 最近はこのキャンプ場もペットに対する規制が厳しくなってしまい、フウマと一緒の我が家はもう泊まる機会もないだろう。
 別にそれでも構わない。ここは冬のほうがずっと魅力的で、そんな場所を独り占めできるのなら、わざわざ混んでいるシーズン中に泊まりに来る気にはならないのだ。
 解けた雪が塊となってスノーシューにこびりつくので、次第に歩きづらくなってきた。かみさんも股関節が変になりそうだと言うので、テントに戻ることにした。
 気が付くとフウマが見当たらなくなっていた。またどこかで悪さをしているのでは。そう思ってあたりを探してみると、とんでもない場所にその姿も見つけた。
 いつの間にかトイレの屋根に上って、気持ちよさそうに日向ぼっこをしていたのである。これには思わず吹き出してしまった。

森の奥の美瑛富士   屋根の上で日向ぼっこ

 そのままテントでのんびりしようとも思ったが、先ほどの美しい美瑛富士の姿が気になってしょうがない。そろそろ日も傾いてきたし、夕焼けに染まる十勝岳の姿も見てみたい。
 キャンプ場内は樹木が茂って見通しが利かないので、山の姿を楽しむためには白金模範牧場まで出なければならないのである。
 疲れた体に鞭打って、テントから車を止めた場所までの900mをまた歩くことにした。再び立ち上がる私たちの姿を、自分の用のベッドの中で丸くなって寝ていたフウマが呆れたような表情で見ている。
 「貴方達だけで勝手に行けば!私はここで寝ているから!」
 しばらくテントから出てこないので、本気で留守番するつもりなのかと思ったら、さすがに私たちの姿が見えなくなってしまうと不安になったらしく、仕方なさそうにトボトボと後ろを歩いて付いて来た。
 今日はもう、スノーシューを履いて10km以上は歩いているだろう。短い足で雪に埋もれながらそれにつき合わされるフウマにとっては堪ったものではない。
 それでも、気温が下がるに伴い雪面も固まってきたので、体重オーバーのフウマも雪に埋まることもなく、そこらの臭いを嗅ぎまくりながら結構楽しそうに歩いている。
 期待していた十勝岳連峰の姿はその周りに纏わり付くように浮かんだ雲によって大部分が隠されてしまっていた。しばらく模範牧場の大雪原の中に留まって雲が取れるのを待ったが、一向にその様子がない。
 そのままじっとしていると、物音一つ聞こえない真の静寂に包まれる。
 やがてその雲が西日に照らされ赤く染まってきた。この雲さえなければ夕日に染まる十勝岳連峰の姿を楽しめたのにと思うと、本当に口惜しく感じられた。
 まあ、その光景はこの次の楽しみに残しておくことにしよう。
 テントに戻りながら森の木々のシルエットの中に沈む夕日の姿を楽しむ。

衣をまとった十勝岳連峰   森のシルエット

 今日の夕食もお決まりのキムチ鍋だ。
 旭岳の時は、手袋をはめて帽子をすっぽりと被りながらの夕食だったが、今回はそれらが無くてもそれほど寒さは感じない。かなり暖かいのかと思って外の温度を測ってみたら、それでもマイナス10℃まで下がっていた。
 テントの中の結露もそれほどひどくならない。快適な夜である。
森の夜外に出てみると、素晴らしい星空が広がっていた。三日月がエゾマツの黒いシルエットの中に沈もうとしている。
 そろそろ寝ようかというところで、フウマがどちらのテントで寝るのかという事が問題になった。
 「・・・。」
 二人に見つめられながら、気持ちよさそうにスヤスヤと眠るフウマ。
 まあ今回は、一人でテントで寝る楽しさをかみさんに味わってもらうことにしよう。結局フウマは私と一緒に寝ることになる。
 「おやすみなさい」と言って、かみさんが自分のテントに戻っていった。テントの中でガソゴソと動く音が直ぐ近くに聞こえてくる。これだけ静かな場所では、別々のテントで寝たとしても、私のいびきは今夜もかみさんを悩ませることになりそうだ。

 4時半頃に目が覚めると、既にテントの中はうっすらと明るくなってきていた。まだ早いのでもう一眠りしようと思ったが、何となく肌寒さを感じて寝付くことができない。
 テントの中はマイナス1℃、後で外の気温を確認するとマイナス13℃程度とそれほど下がってはいなかった。旭岳のときはもっと下がっていたのにそれほど寒く感じなかったのは、雪で保温されていたのと人間と犬の体温でテント内が温まったせいだろうか。
 外からは野鳥のさえずりやキツツキのドラミングの音が聞こえてくる。
 私が動く気配を感じて、隣のテントからかみさんが声をかけてきた。かみさんも寒くて眠れないようである。これ以上寝るのはあきらめて起きだすことにする。テントに触れると凍りついた結露がパラパラと雪のように降ってきた。
朝のコーヒータイム 薄い霞がかかっているものの、今朝も青空が広がっていた。テントの外にテーブルを出して、コーヒーを沸かす。
 白く雪化粧した森の中に響くドラミングの音、その中に身を置きながら飲む朝のコーヒーの味は格別である。
 フウマの様子がちょっとおかしい。興奮しながらあたりの臭いを嗅ぎまわっている。私の横でおとなしく座っている時でも、じっと森の奥を見つめては時々ワンッと吠え声をあげる。野生動物たちが周りには沢山潜んでいるのだろう。
 こんなフウマの様子が私は好きである。家にいるときはゴロゴロ寝ているばかりのフウマだが、自然の中に連れ出すと犬本来の野生の表情を取り戻すのである。
 朝日の光が射してきて雪面がキラキラと輝いている。
 テントを張った場所はちょうど木の陰になってしまい、なかなか朝日が当たってこない。朝日の昇る場所まで正確に予測してテントを張るのはなかなか難しいのだ。
 それでも、日が昇るとともに気温がどんどん上がってくるのは、今時期のキャンプの嬉しいところである。
 空を覆っていた霞も次第に濃くなってくる。やっぱり今日の天気は確実に下り坂に向かっているようだ。ゆっくりと朝食を済ませて撤収を開始する。前回の雪が降る中での撤収と比べるととても快適だ。
 荷物をソリに積み込み、車を止めた場所まで戻る。昨日の歩いた道がしっかりと固まっているのでスノーシューを履く必要も無い。あれほど苦労して引っ張ってきたソリも、今日は力を入れなくてもスルスルと気持ちよく滑ってくれる。
 車まで戻ってくると、十勝岳連峰も今朝はその姿を完全に現してくれていたが、霞に包まれてその姿はぼやけてしまっていた。
来年もまた、美しい山の姿を求めてここに来ることになりそうだ。
 しばらく山通いが続きそうな我が家である。

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