今シーズの最後のキャンプは何処へ行こうか。
道北キャンプから帰ってきた後は、なかなか週末の都合が付かなくて、11月に入ってからでなければキャンプへは行けそうにない。
今年の10月は異常とも言えるくらいに暖かくて、札幌での10月の平均気温は観測史上もっとも暖かかったそうである。
そのために感覚も麻痺してしまって、何の抵抗もなく普通に11月にキャンプへ行く気になっていたが、考えてみたら11月に入ってからのテント泊は、過去に2回経験しただけなのである。
平日に天気が良くて週末に崩れるパターンが、かれこれ一ヶ月ほど続いていて、もしかしたらもうキャンプへ行けるチャンスは無いかもしれない。
そう思っていたら、木曜日の祝日に雨が降ったおかげでこの周期がずれたようで、ようやく週末が晴れの予報に変わってくれた。
ラストキャンプの最後のチャンスである。
できれば月曜日も休んで2泊で道南方面に足を伸ばすつもりだったが、日曜日の夜から天気が崩れるとのことで、1泊で我慢することにする。
1泊ではあまり遠くまでも行けない。かみさんの希望はオコタン野営場。私はあくまでも道南方面にこだわっていたので、通年オープンの北檜山町自然休養村ということでかみさんを説得した。
今時期のキャンプではあらかじめキャンプ場に確認の電話を入れておいた方が良いのだが、「もしも泊まれなかったら他を探せば良いだろう」とのいつものお気楽モードで札幌を出発した。
過去にこれで何度も痛い目に遭っているのに、電話してからキャンプ場へ行くというごく普通の行為がどうしてもできないというのは、我ながら困ったものである。
土曜日は朝から文句のない快晴である。今年は雨男の称号まで付けられそうになったくらい天気に恵まれないキャンプが多くて、出発時からこんなに天気が良いのは今年初めてかもしれない。
岩内から日本海追分ソーランラインを南下する。
天気は良いものの、霞がかかった感じで海の眺めはそれほど良くない。1週間ほど前に道南で煙霧が観測されたそうだが、その名残がまだ残っているのだろうか。
途中で海面からの高さが日本一高いと言う茂津多岬灯台に寄り道したが、霞のために展望は全然楽しめなかった。
瀬棚町に近づくと、シンボルの三本杉岩が霞の中にそのシルエットを浮かべていた。三本杉岩の他に、風力発電の風車のシルエットも重なって見えている。
瀬棚町を訪れるのは十数年ぶりだが、その時はこの風車も無かったような気がする。最近は方々の町でこんな風車の風景を見かけるようになってきた。
三本杉岩と風車が並ぶ風景も、見方によっては面白いものかもしれないが、これだけ風車が増えてくると、昔ながらの自然の風景が壊されてきているような気がして、ちょっと残念である。
風車のある風景を目の前にして、風車の無かったときの様子を頭に思い浮かべながら風景を楽しむというのも、何だかとても空しく感じられる。
瀬棚のコンビニで弁当を買って、ふとろ海水浴場の海岸で食べることにした。この「ふとろ海水浴場」、キャンプ場にもなっているらしく見聞録のBBSでも話題になっていたので、ちょっと興味があったのだ。
キャンプ場の看板を発見。駐車場の横には水道施設があった。
「おっ!これで水が出ればここでもキャンプができちゃいそう!」
蛇口をひねってみたが、さすがに水は出てこなかった。
岩場で弁当を広げる。岩場と砂浜が混ざり合い、海キャンをするのにはなかなか楽しそうな海岸である。
そこを後にして、いよいよキャンプ場へ向かうことにする。
かみさんナビが、「キャンプ場の入り口を通りすぎたんじゃないの?」
「えっ!何で早く言わないんだよ。」
「ちゃんと言ったのに聞いていないんだから!」
確かに丘の上にバンガロー風の建物が見えていたが、キャンプ場の看板も出ていないのでそこを通りすぎてしまっていたのだ。
かみさんナビの指示どおり、引き返して途中の脇道に入った。
坂道沿いにバンガローが並んでいる。「サイトは何処にあるんだろう?」
やがてその道は行き止まりになってしまった。
「やっぱり違うんじゃないか?」
「だって登ってくる途中に「ふとろ荘」があったじゃない!」
そう言えば、それがキャンプ場の管理事務所のはずだ。玄関には「ふとろ荘」の看板がかかっている。
ところがその「ふとろ荘」、人がいるような気配がない。気配がないと言うより、使われなくなって何年も過ぎている様子だ。
「キャンプ場から近くの商店まで500mって書いてあったわよ!」
確かに海水浴場近くに商店があって、ここまでの距離もそれくらいかもしれない。
何だか嫌な予感がしてきたが、とりあえず元の道まで戻ってもう少し先まで行ってみることにする。道は2車線から1車線に狭まる。道路地図によるとこの先で行き止まりになるはずだ。
不安になりながら進んでいくと、キャンプ場まで○kmの小さな看板を発見。
「やっぱりこの道で良かったんだ!」
「ん?ところでキャンプ場にある施設って「ふとろ荘」ではなくて、「うどまり荘」って言う名前だったのでは。」
かみさん、「あら・・・。」
最近、性能が向上してきたかみさんナビであるが、今日は今一調子が悪いようである。
道を進んでいくと奇岩に囲まれた小さな港があった。何だか凄い場所だ。
港の手前から、分かれ道を看板にしたがって山の方に入る。その坂を上っていくと、突然小さな集落が現れて驚かされる。隠れ里のような雰囲気だ。
そこには商店らしきものもあって、この商店から500mなのだと納得させられる。
集落を過ぎて、ようやく北檜山町健康回復村へ到着した。
手入れの行き届いた広々とした芝生広場、山側に階段状に造成されたテントサイト、紅葉は既に終わっていたが芝生の上を赤く染める落ち葉が美しい。
そして何と言っても、広々とした景色の中には我が家の他に誰の姿も無いのである。
第一印象はかなり良い。楽しい時間を過ごせそうだ。
念のために炊事場の水道を捻ってみたが、水が出ない。「オッ?」と思ったけれど、横に付いている水抜栓を操作したら無事に水は出てくれた。トイレもまだ開いている。
安心して「うどまり荘」へ受付をしに行く。
そこにいた若い女性に「キャンプしたいんですけど!」と元気一杯で声をかけたら、「あの〜、キャンプ場は10月一杯でクローズしたんですけど」との返事。
ありゃ〜、またやっちゃったかなと思いつつも、何故か全然ショックは受けない。十分にテントを張れる状況だったので、「何とか一晩だけでも泊まらせてもらえませんか。」とお願いすると、ちょっとお待ち下さいと奥の方へ入っていった。
すると別の若い女性がでてきて、優しい笑顔でキャンプを認めてくれた。
「うどまり荘」は通年オープンしているけれど、キャンプ場の営業は10月一杯で終わりにしているとのことである。
それならば無料で泊まらせてもらえるのかなと思ったら、しっかりと通常の料金を取られてしまった。
「後で水を出しに行きますね。照明も付くようにしますが、9時で消灯してしまいます。」
「あっ、気を使わないで下さい。自分たちでできますから。」
これでやっとテントを張ることができる。ニコニコしながらサイトへと戻った。
平らな芝生広場にもテントを張れるみたいだが、迷わずに山側のサイトを選択する。そこまで直接車で乗り入れられるのが嬉しいところだ。
一番眺めの良さそうな場所にテントを設営する。そこからは誰もいない場内を全て見渡すことができて、まさにキャンプ場独占状態である。
一息ついたところで道南八景に指定されている北檜山の「浮島公園」を見に行くことにする。
浮島湿原をイメージするその名前にちょっと興味を引かれたのだけれど、やっぱり公園の名前が付いているだけあって、水田地帯に隣接する何の変哲もない小さな沼だった。
それでも小さな沼の周りをぐるりと一周する散策路では、苔生して踏み抜いてしまいそうな木道、散り遅れたモミジの紅葉、落ち葉に覆われた山道、立ち枯れたオオウバユリの姿など、それなりに楽しむことができた。
ただ、肝心の浮島がどれなのかよく解らない。沼の真ん中にヨシの繁った小さな島があったが、どう見てもそれが水面に浮かんでいる島には見えなかった。
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