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星くずの降る夜ドロームキャンプ

ドロームキャンプフィールド(9月10日〜11日)

 歴舟川の楽しい川下りキャンプを終え、一週おいて次は釧路川遠征。その間の週末は当然休養日にするつもりだった。
 ところが、週間予報を見ると週末は絶好のキャンプ日和になっている。10月は思ったようにキャンプへ行けないかもしれないので、今のうちに行ける時にはなるべくキャンプへ行こう。
 寝溜めじゃなくてキャンプ溜め、そんなことができるとは思わないが、まあ気分の問題である。
 夕食中、「週末は天気が良さそうだから、何処か近間で軽くキャンプでもしようかなー・・・。」ボソッと呟いてみた。
 「日曜日は8時半までに小樽に行かなければならないのよ。」想定内の、かみさんの返事だった。
 「ドロームなら小樽まで30分で行けるかな〜」再び呟く。
 「あっ、そうか!それ良いわね。」あっさりと引っかかった。
 JRで小樽まで行くつもりだったかみさんは、運転手付きで車で送ってもらえるのだから、反対するわけがない。
 こうして今週末も、めでたくキャンプへ行くことになってしまった。

 ところが、いざ週末を迎えてみると、何だか空模様がパッとしない。
 天気が良いのにキャンプへ行かないのは勿体ない、と言うところから始まった今回のキャンプなのに、これではキャンプへ行く意味が無くなってしまった。
 とは言いつつ、一度決めたキャンプを中止するのも面白くない。予定通りに曇り空の下、午後1時に札幌を出発。高速道路の朝里インターで降りて赤井川村を目指す。
 「そろそろキノコが出てくる時期だよなー。」
 「ドロームの周りってキノコが採れそうなところ有ったかな?」
 「図鑑持ってきてないから、怪しいキノコは写真に撮っておかなくちゃ。」
 「写真、写真・・・、写真・・・・・・。」
 「あっ!デジカメ忘れた!!」
 近所に出かけるようなつもりで家を出てきた今回のキャンプなので、いつもは真っ先に準備するはずのカメラをコロッと忘れてしまったのだ。
 ホームページを公開しているとカメラは必需品なので、しょうがなく札幌まで取りに戻ることにする。
 軽い気持ちでドロームキャンプと考えていたのに、結局ドロームに付くまで2時間もかかってしまった。

 山道を走っていると、突然沢山のテントが並ぶ光景が目に飛び込んできた。
 「ゲッ、こ、混んでる!」
 去年の暮れには閉鎖のニュースが流れ、今年は経営者が変わって芝も荒れているとの話しも聞いていた。それで、今時期なら利用者もかなり減っているだろうと勝手に想像していたのだけれど、やっぱり札幌からも近い人気キャンプ場である。我が家が何時も利用しているようなキャンプ場とは訳が違うのだ。
 以前と違って、キャンプ場へはホテルの横を通って入るように変わっていた。受付を済ませて久しぶりのドロームへ。
 テントが立ち並ぶ外周園路をまずは車で一周。何だか場違いなところへ来てしまったような気がして、自然と車の中で小さくなってしまう。
 「早く川の方へ行きましょう、川の方へ。」かみさんも小さくなりながら、小声で囁く。
 普通に見れば、決してこの状態を混んでるとは言わないだろう。でも、キャンプ場へ到着した時点でこれだけ先客のテントが張られているような状況は、本当に久しぶりの気がする。

人気のあるシラカバ林サイト   川側にも魅力的なサイトが

 それでも、ホテルに近い方の部分には殆どテントが張られていなかった。当然、我が家はそこにサイトを確保することにする。
 川の音も聞こえて来るのでかみさんも満足そうだ。
 ただ、テントを張る場所でかみさんとちょっと意見が分かれた。かみさんは木の下が良いと言うし、私はもう少し明るい場所にテントを張りたかった。
 空が曇っているので、どうしても木の下は薄暗くて陰気くさく感じてしまうのだ。
 両方の希望を取り入れて、芝生と木の下の境目付近にテントを設営した。後3時間も経てば暗くなってしまうのだから、何処にテントを張っても大して変わりは無かったかもしれない。。
 テントを張り終えると同時にポツポツと雨が落ちてきたが、直ぐにそれも止んだ。
 上空を流れる雲の動きが速い。これならば夜には晴れてきそうな感じである。

我が家のサイト   ポツンと一張り

 一息ついたところで、改めて場内の様子を見渡してみた。
 最初に到着した時はかなり混雑しているイメージだったが、こうしてサイトの一番端にテントを設営すると他のキャンパーは殆ど気にならない。両隣のテントは、それぞれ2〜30mは離れているし、それ以上遠くのテントは人が動いている様子も分からないくらいだ。
 これで混んでいるなんて言ったら、本州の方でキャンプをしている人達から思いっきり怒られてしまうだろう。
 一番人気があるのは車道側のシラカバ林のサイトみたいだ。車を停めておけるスペースも広いので、グループキャンパーが多い。
 そこからはキャンプ場背後の山も見渡せるので、ロケーションも一番良さそうだ。
ドロームの夕焼け 西の空の雲が赤く染まり始めた。
 そこはちょうど、シラカバ林のサイトの後ろ側になる。
 「やーい、そこからじゃ夕焼けの空が見えないだろー」と心の中で意地の悪いことを考えてしまう。
 シラカバ林と反対の川側のサイトは、やや起伏があるものの適度に樹木も生えていて、他にキャンパーがいない時はその付近にベストサイトを見つけられそうだ。
 それに何と言っても川の音が心を安らげてくれる。
 広々とした芝生広場のど真ん中にテントを張るキャンパーはなかなかいないだろう。空いている時ならばドロームの空を独り占めって気分に浸れそうだが、今日ぐらいの混み具合だったら、動物園の猿になったような気分でさすがに落ち着かないだろう。
 経営者が変わって芝の管理が悪くなったという話しも有った。今回の状況では、確かにしばらく芝刈りが行われていないような状況だったが、テントを設営するのに何の問題もなく、何時もテントが張られるような場所では芝も自然と短めになっている。
 ここのような自然環境の中で、街中の公園と同じように芝生が手入れされていたら、かえって不自然と言うものだ。
 経営者が変わっても、ドロームの良さが失われずにそのまま残っていたのでホッとさせられた。

焚き火タイム 夕食のバーベキューが終われば、直ぐに焚き火を始める。
 薪は十分に用意してきていたが、サイトの近くに長さ1m、径15cmほどの木が転がっていたので、それも燃やすことにした。
 数日前の台風の雨でかなり湿っていそうだが、持ってみてもそれほど重たくもなく何とかなりそうだ。この太い薪を燃やし尽くすことを、今夜の焚き火の目標にしよう。こんなことも、ちょっとした焚き火の楽しみの一つなのである。
 今年の札内川園地でのキャンプではオオミズアオの来襲に悩まされたが、ここでも大型の蛾が次々と焚き火の炎に向かって飛んできた。
 羽が焦げてボロボロになっても、まだ焚き火の周りでバタバタと飛び回るものだから、その度に火ばしで捕まえて一思いに楽にさせてやる。
 後で名前を調べてみたら、ヤママユという蛾の種類らしい。
ボロボロになったヤママユ 今夜も10匹以上のヤママユが焚き火の煙に変わってしまった。
 周りの木々や頭上を覆っている枝葉が焚き火の明かりにほんのりと照らされている。
 その枝越しに夜空に煌めく星の姿が見えた。いつの間にか雲も晴れたみたいだ。雨上がりは空気も澄んでいるので、星空も一際美しく見える。
 ここのキャンプ場には照明灯が一つもないので、星空を楽しむのにはおあつらえ向きの場所である。
 しかし、星空の本当の美しさを楽しもうとすると、遠くのテントサイトから漏れてくる僅かなランタンの明かりでも結構邪魔になるものだ。
 そんな明かりを避けて、森に囲まれた車道の方まで行ってみることにする。
 キャンプ場やホテルの明かりが届かない場所まで来て空を見上げると、星明かりだけで夜空が明るくなっているのが良く解る。
 かみさんが道路の上に大の字に寝っ転がった。「またアホなことやってるな〜。」と思いながら、私も真似してみる。
 そうすると見渡す限りの星空が目の前に広がっていた。然別湖に夜中にカヌーで漕ぎ出して、その上で寝転がって見た時と同じ星空である。
 星の数が多すぎる!
 「星屑をちりばめる」と言う表現は、こんな夜空のことを現しているのだろう。
 「今日は人工衛星が見えないねー」と離していると、天頂付近を流れ星が横切った。
 「あっ、流れた!」二人同時に流れ星を見るのは結構珍しかったりする。
 そうしてしばらく夜空を楽しんで、サイトに戻ろうとした時、遠くの方から車のライトが近づいてきたと思ったら、そのまま猛スピードで私たちが寝転がっていた場所を走り抜けていった。
 その直ぐ先で道路は行き止まりになっているので、まさか車がそんなスピードで走って来るとは思ってもいなかった。もしもそこに寝たままでいたら、確実に轢かれていただろう。
 そして翌日の新聞には、「酔っぱらって路上に寝込んでいた夫婦キャンパーが車に轢かれて死亡」と言った内容の記事が載ってしまうのだ。
 キャンプから帰った日の夕食中、息子に「新聞にそんな風に書かれたとしても、本当は星を楽しんでいる最中だったと言うことを知っておいてくれ」と話しをしたが、相変わらずアホなことをやっているなーと呆れられてしまった。
 サイトに戻って焚き火を続ける。
 最初に入れた1mの太い薪はようやく真ん中が燃え尽きて、二つに折って焚き火台の中に収まってくれた。
 寝る時にはかなり小さくなっていて、そのままにしておけば朝には灰になっているところだが、それも勿体ないので火から出して明日の朝の焚き火用に残しておくことにした。
 遠くの水場まで行くのも面倒なので、川の水で歯を磨く。ランタンを灯して河原に降りると、驚いたカワゲラやカゲロウ達が一斉に飛び上がった。
 そうして川の音を子守歌に、気持ちの良い眠りについた。

朝の焚き火 翌朝も、目が覚めたらまずは川の水で顔を洗って、直ぐに焚き火を始める。
 空は快晴だったが、東側に山が迫っているので特にこれからの時期、キャンプ場まで日が射してくるのはかなり遅くなってからだ。
 特に我が家のサイトは山に近く樹木にも囲まれているので、昼頃にならないと太陽の光が当たりそうにない。
 結露したテントが完全に乾くのは期待できないので、水気を拭き取っただけで片付ける。
 朝8時には予定通りキャンプ場を出発して小樽までかみさんを送り届ける。
 焚き火をしてテントで眠ることだけが目的だった今回のキャンプ。その単純な目的を、十分なおまけを付けて楽しませてくれたドロームキャンプ場。やっぱりここは我が家にとって落ち着けるキャンプ場である。



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