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朝露の輝き青山農場キャンプ

青山農場キャンプ場(8月27日〜28日)

 楽しかった然別湖のキャンプやシーソラプチ川下りから、いつの間にか2週間が過ぎ去っていた。
 その余韻だけでしばらくは静かに過ごせるだろうと思っていたが、10日も経てば記憶も薄れてきてしまう。次のキャンプの予定は9月に入ってからだ。
 お盆が終わるのを待ちかねていたように、家の周りではカンタンの鳴き声が響きだした。毎年のことだけど、このカンタンの声を聞くと虫の音に包まれて眠るようなキャンプに無性に行きたくなってしまう。
 そんな状況の中、満員電車に揺られて職場に向かい、心が開放されることのない仕事にひたすら堪え続けるような毎日を過ごしていると、顔が能面のように変わってしまいそうだ。
 後一週間そんな生活に我慢しなければならないと考えると、かろうじて心の張りを保っている細い糸がプツンと切れてしまいそうなので、心のリフレッシュのために急遽キャンプへ出かけることにした。
 とりあえずは、虫の音に包まれて眠れるだけで良い。それなら我が家の庭にテントを張るのが一番手っ取り早いが、それではあまりにも味気なさ過ぎるし、ご近所からは夫婦げんかで家から追い出されて庭にテントを張って寝ている可哀相なお父さん、という目で見られてしまうのは確実だ。
 そこで考えた候補地が青山農場キャンプ場である。何だか以前にもこんな理由で青山農場でキャンプしたことがあったような気がする。
 ところが、かみさんは土曜日の夜まで用事があるので、出発を遅くしてもキャンプへは行くことができない。今更キャンプを中止する気にもなれないので、久しぶりのソロキャンプへ行かせてもらうことにした。
 今年になってから既に一回ソロキャンプを経験しているが、その時はカヌークラブの例会キャンプへの参加だった。純粋なソロキャンプとなると苫前グリーンヒルに行った時以来の4年ぶりだ。

 息子は学校へ行って、かみさんも朝から出かけてしまい、一人でキャンプの用意をする。オートキャンプなのだから何時もどおりの装備で出かけても良いのだけれど、せっかくだからソロキャンプ仕様にチャレンジしてみることにした。
 別に普通のバッグでも良いのだが、わざわざ去年山スキー用に購入したザックを引っ張り出してそれに荷物を詰め込む。
シュラフにマット、雨具や身の回り品を入れただけでザックは満杯になってしまった。テントに食器類、イスやテーブルは全て車に積み込む。これでは普段のキャンプと殆ど違いはない。車の荷室の空きスペースが広いだけだ。
 これではデイパッカーへの道は限りなく遠い気がする。やけくそになって、空いたスペースに薪をたっぷりと積み込んだ。
 今回のキャンプは虫の音を聞きながら寝るだけで十分と考えながら、結局家でじっとしていることができずに、午後1時過ぎに札幌を出発した。

我が家のサイト キャンプ場がもっとも混み合うお盆の時期でさえ数組程度のキャンパーしか来ていなかったという青山農場、今なら利用者もほとんどいないだろう。
 しかし、そうは考えていても、何処かの団体さんに占領されていると言う可能性も無いわけではない。
 新しく立てられた手書きの看板を目印に道路から曲がる。キャンプ場へ続く坂道を上り、林の間を抜けて、キャンプ場の姿が目にはいるまで、果たして先客はいるだろうかとドキドキしてしまう。
 結局、そこには誰もいなくて、何時もどおりの静かな青山農場の景色が広がっていた。
 車から降りると虫の鳴き声に包まれた。フウマも待ちかねたように車から飛び出して、誰もいない場内を走り回る。
 珍しく芝生も刈られたばかりで、一体何処までがサイトで何処からが牧草畑なのか迷ってしまうようなこともなく、快適なキャンプを楽しめそうだ。
 さて、何処にテントを張ろう。他にキャンパーがいないとなると、逆に悩んでしまう。決してテントを張る場所に迷ってしまうような広いキャンプ場では無いのだが、微妙な景色の違い、虫の声が良く聞こえる場所、芝生の僅かな起伏、昨日の雨でジュクジュクしているようなところもあり、結局は一番無難な中央付近にテントを張ることに決めた。
 テントは今回で2回目の使用になるヨーレイカのニューテントだ。やや風があるので前回よりも設営に苦労する。前室が広く居住性は優れているが、雨の日などにパパッと設営できるテントでないことは確かだ。
 気温も高く設営後のビールをグッと飲みたいところだったが、まだ時間も早いので車で写真を撮りに行くことにした。

 今回のキャンプでは、オオハンゴンソウの写真を撮るのも密かに楽しみにしていた。
 オオハンゴンソウは、今時期になれば何処の道路沿いでも花が見られる、いわゆる雑草の一種である。
 この雑草が、テレビドラマ「北の国から」の中に登場したことがある。正吉が蛍にプレゼントした百万本のバラならぬ百万本のオオハンゴンソウ、加藤時子の歌が流れるそのシーン、「北の国から」の中でも私の印象に強く残っているワンシーンだ。
 このドラマを見てからと言うもの、車で走っていて道路沿いに咲くオオハンゴンソウを見ると、ついつい百万本のバラのメロディーが頭の中に浮かんできてしまう。
 キャンプ場まで来る途中に、そんなオオハンゴンソウの群落がある場所に目を付けていたので、そこに直行する。
 同じようにセイタカアワダチソウの黄色い花もあちらこちらに群落を作っていたが、それには見向きもせずに対象はあくまでもオオハンゴンソウである。
 日の光を浴びて黄色く輝くオオハンゴンソウの群落を見ると、この花で埋め尽くされた蛍のアパートの部屋の様子が頭によみがえってきた。
 もしもドラマに使われたのがセイタカアワダチソウならば、この花の写真ばかり撮っていたかもしれない。 花の美しさは、特にそれが雑草ともなると、主観的なものに左右されてしまうという良い見本である。

オオハンゴンソウ   オオハンゴンソウ

 写真を撮り終えキャンプ場に戻ってきても、相変わらず他のキャンパーの姿は無かった。
 アブなどの虫もほとんどいないので、新しいテントの前室部分をフルオープンにしてその中でくつろぐ。一人で使う分にはなかなか快適である。
 しかし二人で使うにはちょっと窮屈そうだ。
 こんなテントだと小型のタープでも横に張りたくなるが、そうなるとこれまで使っていたソレアードより設営に手間がかかってしまうことになる。
ニューテント テントの大きさ、設営のしやすさ、収納時の大きさや重さ、そして使い勝手、全てを満足させてくれるテントなんて存在しない。
 我が家でもう一つテントを買うとすれば、本当に寝る時だけに使用する一人用テントだ。そうしたら、あらゆるシーンに対応できるようにテントを使い分けることができる。
 でもそれはそれで、毎回どのテントを持って行こうかと頭を悩ませることが増えるだけかもしれない。

 一息ついたところで、フウマと一緒に農場内の道を散歩した。
 道ばたのススキが秋を感じさせてくれる。真っ青な秋空を背景に、ススキが風に揺れる様子を写真に撮りたかったが、雲が多くてなかなか思い通りの構図にはなってくれない。
 風があるせいか、トンボの姿も期待していたほど多くはない。揺れるススキの穂の先には赤とんぼが・・・。
 どうも最近は、何時何処に行けばどんな景色が楽しめてと、勝手に頭の中に風景を作り上げてしまう悪いくせが付いてしまったような気がする。そんな自分勝手な事を考えずに、新鮮な目で周りの風景を楽しむようにしたいものだ。
 農道を歩いていくと、ちょっとした森の中に入ってきた。そこだけにひんやりとした空気が漂っている。道ばたからはチョロチョロと水の流れる音が聞こえてくる。
 小さなネズミが目の前を横切っていった。時々フウマが道ばたの茂みをじっと覗き込んでいる。小さな生き物たちの気配を沢山感じるのだろう。
 山深い森の中を歩くのも楽しいが、こんな田舎道もそれとは違った風情があるものだ。
 帰りは近道をして、キャンプ場隣の牧草畑に出られる林の中の道を歩こうと思ったが、そこまで行ってみるとその道は草に覆われて殆ど消えかけていた。
 もとの道まで引き返すのも面倒なので、そのまま藪をかき分けながらキャンプ場まで戻ったが、何だか今年は雨竜川とか東雲湖とか、藪こぎばかりしている気がする。

農道の風景   森の中へ

 夕方近くになって、隣の牛舎で働いているらしい青年が料金徴収にやってきた。話しを聞いてみると、夏の間はそれなりにお客さんが来ていて、また秋になればちらほらと利用者もあるらしい。
 今はちょうどその狭間の閑散期とみたいだ。
 新しく買ったばかりのコッヘルで初めてご飯を炊く。これまでは飯ごうでご飯を炊いていたが、飯炊きだけは私の仕事、炊きあがるまでは側に付きっきりで火力の調整等に気を使っていた。
 新しいコッヘルは火力も大して気にせずに、簡単にそれなりのご飯が炊きあがる。これではますます食事の準備の際に私の出る幕が無くなってしまいそうだ。
夕食準備中 おかずは豚丼、大きいフライパンもいつものキャンプ道具の中に入っていたが、敢えてコッヘルとセットの小さなフライパンを使ってピーマンと豚肉を炒める。
 何だかままごとをしている感じでとても楽しい。
 キャンプ慣れしてくると、非日常の世界のはずだったキャンプが次第に日常の延長になり、本来のキャンプの不便さを忘れ去って便利さだけを追求してしまう。
 そんな時に敢えてソロキャンプの装備を使ってみると、キャンプを始めたばかりの頃の楽しさを思い出すことができた。
 豚肉をフウマと分け合いながら一人と一匹での夕食を終えた。

 西の空は雲に覆われて夕日は楽しめそうにない。
 夕食を終えて直ぐに焚き火に火を付けた。ソロキャンプの時に焚き火が無ければ何の楽しみもないようなものだ。
 今回は薪だけは沢山用意してある。その薪もいつも燃やしている建築現場から拾ってきた端材ではない。かみさんの実家から頂戴してきたシラカバやナラの立派な薪である。
 斧で割ったこんな薪は燃え方も全然違う。
最高の焚き火 チロチロと上がる炎を楽しみながらも、気温の高いのだけがちょっと気に入らない。
 そろそろ朝晩はグッと冷え込むようになる時期なのに、今年の北海道は8月の末になってもなかなか涼しくならないのだ。
 焚き火の熱が疎ましく感じられるようでは、せっかくの焚き火に申し訳ない気持ちになってしまう。
 それでも他に誰もいない真っ暗な場内で、虫の音を聞きながら静かに楽しむ焚き火はとても贅沢である。
 もうすぐ月が昇ってくるのか、西の空が少し明るくなってきた。しかし、今夜は雲が多いし、今日の月は満月からは1週間も過ぎてしまっている。もしもこれで群雲の中に満月が昇ってきたら、もう何も言うことのない素晴らしい夜だったろう。
 先週末が雨で無ければ、本当はその日にここで満月キャンプを楽しむつもりでいたのだ。
 明日の朝は早いので9時にはテントに入る。虫の音の子守歌をもっと聞いていたかったが、子守歌が効き過ぎてあっと言う間に意識不明に陥ってしまった。

 夜中に目が覚めて時計を見ると3時半になっていた。たっぷりと6時間半、熟睡出来たことになる。
 虫の音の子守歌が効いたのと、イビキをかいても横から小突く相方がいなかったせいかもしれない。
日の出前の朝 そのまま起き出しても良さそうだったが、さすがに外はまだ暗いのでそのまま1時間ほど微睡んでからテントから這い出した。
 この時期の朝ならば冷たい空気に身が引き締まり、直ぐに焚き火に火を付けたくなるところだが、暖かくて全然そんな気にならない。
 それでも昨日の薪が燃え残っていたので、そこに薪を足して何時もどおりに朝の焚き火を楽しむ。
 やがて遠くに見える山陰から朝日が昇ってきた。それに合わせるかのように、キャンプ場から見下ろせる牧草畑一体に霞が立ち込めた。
 その霞を貫いてくる強い光で、芝生や牧草に付いた朝露がキラキラと輝きだした。
 この素晴らしい朝の光景、以前にここに泊まった時も一度経験しているが、他のキャンプ場でこんな光景に出会った覚えはない。
 良く晴れた朝、青山農場で普通に見られるシーンなのかもしれないが、ここのキャンプ場がますます好きになってしまった。
 そんな様子をひとしきり楽しんだ後、冷凍ピラフを炒めるだけの簡単な朝食を済ませる。
 今日はこの後、キャンプへ行けなくてむくれているかみさんを、カヌーに乗せてご機嫌を取るために千歳川まで行かなければならない。
 夜露に濡れたテントを乾かす暇もなく、朝7時には撤収を終えてとりあえずは自宅へ戻るためキャンプ場を出発した。
 忙しい日曜日になりそうである。

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光の朝   光の朝

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