カヌークラブの7月例会は空知川、そして宿泊場所はいつものように南富良野町落合のどんころ野外学校である。
土曜日の川下りは、そのどんころ野外学校に10時集合となっていたので朝7時前に札幌を出発。落合までは富良野周りと日高周りの二つのルートがあるが、距離の短い富良野周りのルートを選んだ。
しかし、ちょうど富良野のラベンダーが満開の季節とぶつかり、こんな時は普段ほとんど車を運転しないような人達まで道路に出てくるものだから、ノロノロと走っている車がとても多くなる。
制限時速ギリギリで走り、カーブの手前やトンネルの中では制限時速さえ下回ってしまうような車。いつもならそんな車は直ぐに追い越されるのに、今回は追い越す車も少なくノロノロ車列はどんどん長くなってしまう。
イライラしながらも、あと1回で免停になってしまう身としてはじっと我慢するしかない。
富良野を過ぎてようやく目の前の車がいなくなったが、今度は自分がスピードメーターとバックミラーを交互に見やりながらノロノロ運転する番になってしまった。
これから1年はストレスの溜まるドライブを続けなければならないと思うと、ガックリしてしまう。
それでも私が頭の中で考えていた時間より15分遅れで、10時前には余裕でどんころに到着、まずは速攻でテントを設営した。
炊事棟前の芝生広場は周りの山のロケーションも素晴らしく、普通のキャンプ場に泊まるよりもずっと快適である。
ただ、風向きのせいか、ほのかな田舎の香りも漂っていた。どんころでは3匹のブタが飼われているが、その豚舎の臭いかもしれない。
シュラフ以外の荷物は全て炊事棟の中に降ろし、まずは初日の空知川川下りへと出発した。
一度だけ悔しい沈をしたものの、楽しい川下りを終えてどんころまで戻ってきた。
直ぐに五右衛門風呂を沸かして風呂の用意をする人、テントを設営する人、そして私はビールを飲む人である。
炊事棟の外にイスとミニテーブルと灰皿とビールをセットし準備完了。最初の一缶をプシュッと開けて、グビグビっと喉に流し込む。
プハーッ!
いつもは川下りを終えるとそのまま帰宅というケースが多かったけれど、下った後のビールがこれほど美味いとは知らなかった。
建物の中より外の空気の方が気持ちいいので、皆イスを持って集まってきた。
心地よい風が吹き抜け、ビールも進む。
こんな時は、誰々が何処何処の川で死にかけたとか、そんな話しばかりで盛り上がる。無茶なことばかりやっている人が多いので、その手の話しには事欠かないみたいだ。
かみさんが良いタイミングで、豚の角煮を出してきてくれた。
前の日に家で作ってきたものをダッチオープンに入れて暖めてだけなのだが、ダッチオーブンに入っていると何でも美味しそうに見えてしまうから不思議だ。
いや、見えてしまうだけでなく実際に美味しいとの評判だった。
かみさん曰わく「例会キャンプの時の料理は早いもの勝ち。」だそうだ。
確かに、次々に美味しい食べ物が出てくるので、途中からは腹一杯になってしまいありがたみも薄れてくるのである。
最初は我が家のテントだけがポツンと建っていた炊事棟前の広場は、いつの間にかカヌーを積んだ車やテントで一杯になっていた。
やや風が強くなってきたので、宴会の場を炊事棟の中に移すことにした。
先ほどまでビールを飲んだくれていた男性メンバーが、突然キリリとした表情に変わって黙々と料理を作り始める。
こんな時に料理を作れる男って格好良いな〜と何時も思うのだけれども、なかなか自分はそうはなれない。自宅の本棚にも「男のアウトドア料理」なんて題名の本が何冊か入っているのだが、いずれもホコリを被ったままである。
旦那が一生懸命料理を作れば奥さんはどんなに不味くても喜んで食べてくれる、というのが世間一般の図式のようだが、どうしたってかみさんの方が料理が上手いのだから、わざわざ自分で不味いものを作ることもないだろう、と思ってしまうのだ。
ラーメンやらチリビーンズやらと、次々と色々な食べ物が出てきて直ぐに腹一杯になってしまう。
しかし今日のメインディッシュは、これから到着する予定のS吉さんが持ってくる有楽町の味噌ホルモンである。
有楽町というのは帯広にあるジンギスカン屋で、4月の札内川例会の時に皆でこの店で味噌ホルモンを食べてすっかり評判になったと言う店である。
G藤さんはその店で使っている鍋と同じものを自分で作ってしまい、今日その鍋をお披露目することになっている。
旦那さんが仕事、奥さんが結婚式の予定があり今日中に札幌まで帰らなければならないN山さん夫婦も、その味噌ホルモンを食べてからでないと帰れないと、肉が届くのをひたすら待ち続けていた。
そこへS吉さんが到着。
歓声で迎えられたのはS吉さんよりも、味噌ホルモンの方みたいだ。
G藤さんがここで手製の鍋を取り出す。厚さ4mmの鉄板を加工したというホルモン用の鍋は素晴らしい出来映えだ。
ホルモン奉行のF谷さんにより、味噌ホルモンが新品の鍋の上で焼かれる。直ぐに室内に漂う美味しそうな臭い。
その臭いに釣られるように何本かの箸が鍋の上にと伸びてきたが、ホルモン奉行のF谷さんに払いのけられる。水分が飛んで味噌が絡んでくるまで待たなければならないらしい。
鍋の前でF谷さんの許可が下りるのをじっと待ち続けるメンバー。
そしてOKのサインが出た途端、あっと言う間にその味噌ホルモンはたいらげられてしまった。
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