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一人では何もできない親父ソロキャンプ

ピリカキャンプ場(5月14日〜15日)

 今回のキャンプは、カヌークラブの5月例会が道南の後志利別川で行われるので、その近くのピリカキャンプ場に泊まることになっていた。
 かみさんが学生時代の友人と定山渓温泉にでかけるので、ひさしぶりのソロキャンプである。ただ、クラブのメンバーとのグループキャンプなので純粋なソロキャンプとは言えない。
 それでも、夕食は何を作ろうか、道具は何を持って行こうかと、いつものキャンプと違って何となく落ち着かない。
 キャンプに出かける前の夜、何時も持ち歩いているキャンプ用具入れから、ソロキャンプに必要なものだけを選び出して別の箱に詰め替える。これも必要、あれも必要と選んでいる内に、一つの箱には収まりきらなくなってしまった。
 どうしようかと一人悩んでいると、かみさんが「いつもの装備をそのまま持って行けば良いんじゃないの。」との冷静な一言。
 「そ、それもそうだな。」
 バックパッキング用の道具を持っているわけでもなく、箱を二つ持って行くのも一つにするのも大して違いはないのだ。
 私が頭の中で描いている理想的なソロキャンプを楽しむためには、道具を一から揃え直さないとダメみたいである。

 翌日は朝から青空が広がっていた。うきうきした気分で車に道具を積み込む。
 いつものキャンプと比べて車の荷室が空きすぎているので、何か忘れ物をしていそうな気がしてしょうがない。
 かみさんと二人の時は役割分担が完全にできあがっているので、自分の担当分さえチェックしておけば大丈夫なのだ。もしも何か忘れ物をしたとしても、「それは自分の責任じゃない!」と相手に責任を押しつければ良いだけの話しである。
ウサギの走る海 そんな相手も今回はいないものだから、何となく不安な気持ちのまま朝8時前には札幌を出発した。
 最初の目的地は歌才のブナ林。ここは一度だけ歩いたことがあるが、その時は時間が無くてコース途中から引き返している。
 新緑には少し早そうな気もするが、今日は一日たっぷりと時間があるのでキャンプ場に着く前に好きなところをぶらついてみるつもりだ。
 岩内から日本海側回りで黒松内に向かう。寿都付近から急に風が強くなり出してきた。寿都湾の海は一面に白波が立っている。こんな海の様子を「ウサギが走る」と表現することもあるが、まさにそんな景色だ。
 長万部から寿都にかけては太平洋から日本海への風の通り道となるために風の強い日が多い。局地的な風だろうと思っていたが、これがなかなか止みそうな気配がない。

黒松内町の歌才ブナ林に到着してもまだ風は強いままだった。森の中に入ればその風も遮られそうなので、身支度を調えて直ぐに歩き始める。
入って直ぐの湿地帯ではちょうどミズバショウが見頃を迎えていた。2週間前に北海道の東の果てで満開のミズバショウを楽しんでいたのに、道南までやってきてまた同じような風景に出会えるとは思ってもみなかった。
今年の気温が低いためなのか、それともミズバショウの花が咲くのに温度はそれほど影響しないのか、はっきりとした理由は分からない。
散策路沿いにはカタクリやエゾエンゴサク、エンレイソウ等が花を咲かせ、その姿を撮影するのに夢中になってしまう。
新緑を楽しむには少し早すぎるけれど、こんなに野の花が咲いているとは嬉しい誤算だった。大きな群落があるわけではないが、笹を刈った散策路沿いのあちらこちらで花を見られるので歩くのが全く苦にならない。
下ばかりに気を取られてしまうが、たまに上に目をやるとそこではブナの巨木から伸びた枝が空を覆い、その枝は伸び始めたばかりの新芽で薄緑色に染まっている。
もう少し後になれば、森全体が美しい新緑に彩られるのだろう。

ミズバショウの群落
  カタクリとエンレイソウ
ミズバショウの群落   カタクリとエンレイソウ
ブナの巨木   新緑のブナ林
ブナの巨木   新緑のブナ林

 1時間ほどで散策路の終点に到着、そこからは同じ道を引き返すことになる。
ブナの倒木の上で一休み 気温も低く風も強いが森の中を歩いていると軽く汗ばんでくる。散策路を塞ぐように倒れ込んだブナの倒木の上で休憩を取ることにした。
 小鳥のさえずりが森の中に響いている。
 一服しようとポケットを探るが、灰皿は入っているのにタバコがない。丸太の上で寝転がってしばらく時間を過ごそうと思っていたのに、タバコが無くてはしょうがない。少し休んだだけで直ぐに歩き始めた。
 こんな空気の美味しい場所でそんなにタバコに拘らなくても良さそうなものだが、こんな場所での一服が至福の一時なのである。

 来る時は花ばかり見ていたので、帰り道は周りの森を眺めながらのんびりと歩く。目の前の遊歩道を小さな青い鳥が横切った。
 「あっ、幸せの青い鳥発見!」
 直ぐにカメラを向ける。ファインダーを覗いているとその鳥はチョンチョンと跳ねながら遊歩道の先へ進んでいく。
 「あ〜ん、幸せが逃げちゃう〜。」なんて考えながら、中腰でカメラを構えたままその後を追った。
 あまり他人には見られたくない姿である。
 今度は目の前をシマリスが横切った。ゆっくりと歩いていると普段は見逃してしまう物まで見ることができる。
 普通に歩けば1時間ほどの散策路をたっぷりと2時間かけてスタート地点まで戻ってきた。
 オートキャンプ場L'PICの隣のブナセンターに寄って、駐車場でコンビニ弁当を食べる。まだ1時過ぎなので添別のブナ林も歩いてみることにした。
 ブナセンターでもらった地図を見ると、この添別ブナ林の近くに私設キャンプ場があることになっている。もしや穴場のキャンプ場発見かと嬉しくなったが、現地でその場所を見たらちょっとテントを張る気にはなれないようなところだった。
ブナ林入り口にあるミニブナセンター周りの牧草畑の方が、ロケーションも良くてキャンプ場にするには最適の場所に思える。
こちらのブナ林は歌才と比べて若木のブナが多い。木の密度も高いため、下枝が少なく真っ直ぐに伸びて人工林のような雰囲気だ。
歩いて楽しい場所ではなかった。1周するのに1〜2時間と紹介されていたが、そこを30分で回ってしまった。

幸せの青い鳥(オオルリ)
  ブナの根元に現れたシマリス
幸せの青い鳥(コルリ)   ブナの根元に現れたシマリス

 札幌を出るときには晴れていた空も、この頃にはほとんど雲に覆われてしまい、風も相変わらず強く吹いている。こんな天気では他に行きたい場所もないので、そのままキャンプ場へ向かうことにした。
 今日はクラブのメンバーが午前10時から川の下見をしていて、午後3時頃には奥美利河温泉に入りに行く予定になっている。ところがその時間の少し前にキャンプ場に付いたのに、まだ誰も来ていなかった。
 ここは初めて泊まるキャンプ場である。
 私の場合、キャンプ場の善し悪しについて大体が到着した時の第一印象で決まってしまう。そうなると当然その時の天候もかなり影響してくる。
 今日のように寒々として風も強い日ならば、かなり条件は悪い。
 結構このキャンプ場には期待していたので、その分落胆も大きかった。
 寒々とした風が吹き抜けるキャンプ場のどこにテントを張ろうかと考えたが、どこに張ったとしても大して変わりばえはしなさそうだ。
 いつもの癖で、それほど広くはないキャンプサイトの一番奥の方にポツンと寂しくソロ用テントを設営した。
 その後は何もすることが無いので奥美利河温泉に向かう。ところがそこへ通じる道路は途中で交通止め、今年の豪雪の影響で開通まで時間がかかっているようだ。しょうがないのでキャンプ場隣接のクアハウスの温泉にはいる。
 浴場に入った時の塩素臭が気になったが、ぬるめのお湯にゆっくりとつかっているとブナ林散策での足の疲れが次第にとれていくような気がした。

我が家のサイト サイトに戻ると川の下見に行っていたメンバーが戻ってきて、タープを設営しているところだった。私のテントはそことは反対側に張ってしまったので、そのままテントを移動させる。こんな時はソロ用の小さなテントは便利である。
 今回もSさんが、モンベル製ビッグタープを張ってその四方をビニールの4面張りしてくれた。この中で焚き火をすれば、かなり条件が悪い時でも暖かく過ごすことができるのである。
 焚き火用の薪は、私とSさんが用意してきたので十分な量がありそうだ。それでもついつい、いつものように隣の林の中に分け入って薪を拾ってきてしまう。
 早速クラブのメンバーが薪に火を付けた。
 横に細長いバーベキュー炉の中での焚き火なものだから、なかなか上手く風が通らない。火が回ったところで薪を組み直しはじめたが、それが禍してどんどん煙が出はじめる。4面張りをしているのでタープの下はもの凄い煙に包まれる。
 ここに我が家のかみさんがいたら、「なんて下手くそな焚き火をしているの!私に代わりなさい。」と大目玉を食らうところだ。
 何とか火が落ち着いたところで後はゆっくりとビールを飲む。
 今回の夕食のメニューは「サトウの御飯」と「レトルト回鍋肉」、回鍋肉はキャベツと一緒にフライパンで炒めるだけだ。
 ところが一旦ビールを飲み始めると、料理を作ろう(料理と言える程のものでもない)という気が全く無くなってしまった。
 唯一の料理は、かみさんが前日に卵と鶏肉の煮物を作ってそれを鍋に入れて持たせてくれたので、それを火にかけただけである。(これも決して料理とは言わない)
 後はどっかりと椅子に腰掛けて目の前に出されたものを食べるばかり。
 若者ならばシェラカップと箸だけを持っての参加も許されるだろうが、大のおとながこれでは困ったものである。
 かみさんがいないと何もできないような男にはなりたくないと思いながら、しっかりとそうなっている自分に改めて気が付いた。

タープの下で焚き火 何時の間にか雨が降り始めていた。
 天気予報では翌日が雨になっていたので、もしかしたら雨雲が予想よりも早く移動しているのかも知れない。心配していた明日の天気だったが、少し希望が湧いてくる。
 用意した薪を全て燃やし尽くしたところでお開きになった。
 今回のキャンプ参加者は8名、クラブの例会の中ではかなり少ない方になるが、日曜日は雨の予報が出ていたし、さすがにこの時期にキャンプをする気にはなれないのだろう。
 雨に濡れた冷え冷えとしたテントに入ったが、羽毛のシュラフに潜り込めば直ぐに暖まり、今回はイビキをかいても横からどつかれることもなく、安心して気持ちの良い眠りについた。

 一晩中続いていた雨音も朝方には聞こえなくなっていた。
 テントの外の様子をチラッと窺ってみたが、周りの山はどんよりとした霧に包まれたままだ。この霧が晴れれば上空には青空が広がるっているかもしれない。
 淡い希望を抱いてテントから這いだした。
 4面張りのタープの中も火の気がなければ冷え切ったままだ。Sさんが炭の残りに火を付けてくれたので少しは暖かさが戻ってきた。
 朝のメニューとして用意してきたのは冷凍ピラフ、フライパンで炒めるだけで出来上がる。
朝食風景 しかし相変わらずそれも作ろうとせず、パーコレーターでコーヒーを入れただけで、後はSさんの奥さんが作ってくれたラム肉炒めやスープをごちそうになるだけ。シェラカップが汚れたら洗ってもらったりまでして、今日もやっぱり何もできない男のままである。
 また雨が降り始めた。しかもこれまでよりも強い降りだ。天気は回復傾向どころかますます下り坂に向かっているようである。
 タープの周りからは雨が流れ込んできて、次第に乾いたスペースが狭くなってくる。
 今日の川下りは中止にするしかないという雰囲気がメンバーの中に漂いはじめた。
 ところがそんな天候をものともせずに新たに5人の人間が到着、寒さで震え上がっている人間と違って、皆やる気満々、元気いっぱいである。
 ここのキャンプ場にはパークゴルフ場が隣接していて、そこでは土砂降りの雨の中を朝からプレーしている人達がいる。
 「こんな天気なのに良くやるよな〜。」と呆れてしまったが、多分彼らもこちらを見て「こんな雨の中でキャンプしてるなんて信じられない!」と思っているのだろう。
 猛吹雪の中でスキーを滑ったり、霧で何も見えないのに山に登ったり、雨や雪の中でゴルフをしたり、キャンプをしたり、カヌーに乗ったり、自然の中で遊ぶのにいちいち天気を気にしていてもしょうがないが、できることならば爽やかな青空の下で遊んだ方が楽しいことに変わりはない。
 それでも、雨の中を川下りに向けて出発した。

 川下りを終える頃には雨もあがりテントも乾いているはず、そんな希望を抱いていたもののキャンプ場に戻ってきても相変わらず雨は降り続いていた。
 川下りで疲れ切った体にむち打って、泥まみれのキャンプ道具やびしょ濡れのテントを撤収する。
 温泉に入ってから帰るという人も多かったが、この状態で風呂に入ったら札幌まで運転する気力が無くなってしまいそうなので、そのまま一気に高速道路を使って札幌まで戻ってきた。
 無造作に車の荷台に放り込んだ泥まみれのキャンプ道具は、かみさんが翌日全て綺麗に片付けてくれた。
 ソロキャンプと言いながら結局最後まで自分では何もしなかった今回のキャンプ、やっぱり我が家のキャンプはかみさんとワンセットで一人前なのだろう。

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