札幌を出るときには晴れていた空も、この頃にはほとんど雲に覆われてしまい、風も相変わらず強く吹いている。こんな天気では他に行きたい場所もないので、そのままキャンプ場へ向かうことにした。
今日はクラブのメンバーが午前10時から川の下見をしていて、午後3時頃には奥美利河温泉に入りに行く予定になっている。ところがその時間の少し前にキャンプ場に付いたのに、まだ誰も来ていなかった。
ここは初めて泊まるキャンプ場である。
私の場合、キャンプ場の善し悪しについて大体が到着した時の第一印象で決まってしまう。そうなると当然その時の天候もかなり影響してくる。
今日のように寒々として風も強い日ならば、かなり条件は悪い。
結構このキャンプ場には期待していたので、その分落胆も大きかった。
寒々とした風が吹き抜けるキャンプ場のどこにテントを張ろうかと考えたが、どこに張ったとしても大して変わりばえはしなさそうだ。
いつもの癖で、それほど広くはないキャンプサイトの一番奥の方にポツンと寂しくソロ用テントを設営した。
その後は何もすることが無いので奥美利河温泉に向かう。ところがそこへ通じる道路は途中で交通止め、今年の豪雪の影響で開通まで時間がかかっているようだ。しょうがないのでキャンプ場隣接のクアハウスの温泉にはいる。
浴場に入った時の塩素臭が気になったが、ぬるめのお湯にゆっくりとつかっているとブナ林散策での足の疲れが次第にとれていくような気がした。
サイトに戻ると川の下見に行っていたメンバーが戻ってきて、タープを設営しているところだった。私のテントはそことは反対側に張ってしまったので、そのままテントを移動させる。こんな時はソロ用の小さなテントは便利である。
今回もSさんが、モンベル製ビッグタープを張ってその四方をビニールの4面張りしてくれた。この中で焚き火をすれば、かなり条件が悪い時でも暖かく過ごすことができるのである。
焚き火用の薪は、私とSさんが用意してきたので十分な量がありそうだ。それでもついつい、いつものように隣の林の中に分け入って薪を拾ってきてしまう。
早速クラブのメンバーが薪に火を付けた。
横に細長いバーベキュー炉の中での焚き火なものだから、なかなか上手く風が通らない。火が回ったところで薪を組み直しはじめたが、それが禍してどんどん煙が出はじめる。4面張りをしているのでタープの下はもの凄い煙に包まれる。
ここに我が家のかみさんがいたら、「なんて下手くそな焚き火をしているの!私に代わりなさい。」と大目玉を食らうところだ。
何とか火が落ち着いたところで後はゆっくりとビールを飲む。
今回の夕食のメニューは「サトウの御飯」と「レトルト回鍋肉」、回鍋肉はキャベツと一緒にフライパンで炒めるだけだ。
ところが一旦ビールを飲み始めると、料理を作ろう(料理と言える程のものでもない)という気が全く無くなってしまった。
唯一の料理は、かみさんが前日に卵と鶏肉の煮物を作ってそれを鍋に入れて持たせてくれたので、それを火にかけただけである。(これも決して料理とは言わない)
後はどっかりと椅子に腰掛けて目の前に出されたものを食べるばかり。
若者ならばシェラカップと箸だけを持っての参加も許されるだろうが、大のおとながこれでは困ったものである。
かみさんがいないと何もできないような男にはなりたくないと思いながら、しっかりとそうなっている自分に改めて気が付いた。
何時の間にか雨が降り始めていた。
天気予報では翌日が雨になっていたので、もしかしたら雨雲が予想よりも早く移動しているのかも知れない。心配していた明日の天気だったが、少し希望が湧いてくる。
用意した薪を全て燃やし尽くしたところでお開きになった。
今回のキャンプ参加者は8名、クラブの例会の中ではかなり少ない方になるが、日曜日は雨の予報が出ていたし、さすがにこの時期にキャンプをする気にはなれないのだろう。
雨に濡れた冷え冷えとしたテントに入ったが、羽毛のシュラフに潜り込めば直ぐに暖まり、今回はイビキをかいても横からどつかれることもなく、安心して気持ちの良い眠りについた。
一晩中続いていた雨音も朝方には聞こえなくなっていた。
テントの外の様子をチラッと窺ってみたが、周りの山はどんよりとした霧に包まれたままだ。この霧が晴れれば上空には青空が広がるっているかもしれない。
淡い希望を抱いてテントから這いだした。
4面張りのタープの中も火の気がなければ冷え切ったままだ。Sさんが炭の残りに火を付けてくれたので少しは暖かさが戻ってきた。
朝のメニューとして用意してきたのは冷凍ピラフ、フライパンで炒めるだけで出来上がる。
しかし相変わらずそれも作ろうとせず、パーコレーターでコーヒーを入れただけで、後はSさんの奥さんが作ってくれたラム肉炒めやスープをごちそうになるだけ。シェラカップが汚れたら洗ってもらったりまでして、今日もやっぱり何もできない男のままである。
また雨が降り始めた。しかもこれまでよりも強い降りだ。天気は回復傾向どころかますます下り坂に向かっているようである。
タープの周りからは雨が流れ込んできて、次第に乾いたスペースが狭くなってくる。
今日の川下りは中止にするしかないという雰囲気がメンバーの中に漂いはじめた。
ところがそんな天候をものともせずに新たに5人の人間が到着、寒さで震え上がっている人間と違って、皆やる気満々、元気いっぱいである。
ここのキャンプ場にはパークゴルフ場が隣接していて、そこでは土砂降りの雨の中を朝からプレーしている人達がいる。
「こんな天気なのに良くやるよな〜。」と呆れてしまったが、多分彼らもこちらを見て「こんな雨の中でキャンプしてるなんて信じられない!」と思っているのだろう。
猛吹雪の中でスキーを滑ったり、霧で何も見えないのに山に登ったり、雨や雪の中でゴルフをしたり、キャンプをしたり、カヌーに乗ったり、自然の中で遊ぶのにいちいち天気を気にしていてもしょうがないが、できることならば爽やかな青空の下で遊んだ方が楽しいことに変わりはない。
それでも、雨の中を川下りに向けて出発した。
川下りを終える頃には雨もあがりテントも乾いているはず、そんな希望を抱いていたもののキャンプ場に戻ってきても相変わらず雨は降り続いていた。
川下りで疲れ切った体にむち打って、泥まみれのキャンプ道具やびしょ濡れのテントを撤収する。
温泉に入ってから帰るという人も多かったが、この状態で風呂に入ったら札幌まで運転する気力が無くなってしまいそうなので、そのまま一気に高速道路を使って札幌まで戻ってきた。
無造作に車の荷台に放り込んだ泥まみれのキャンプ道具は、かみさんが翌日全て綺麗に片付けてくれた。
ソロキャンプと言いながら結局最後まで自分では何もしなかった今回のキャンプ、やっぱり我が家のキャンプはかみさんとワンセットで一人前なのだろう。
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