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月を見たくて朱鞠内湖キャンプ

朱鞠内湖畔キャンプ場(3月27日〜28日)

 3月最後の週末は土曜日が満月、キーンと冷えた空気の中、月明かりに照らされた雪景色の風景は雪中キャンプの醍醐味の一つだと思う。
 ところが金曜日の夜に職場の飲み会、土曜日は所属するカヌークラブの総会と重なり、今シーズン最後の雪中キャンプは早々と諦めモードになっていた。
 でも4月に入ってからの朱鞠内湖も有りかな。
 そうは考えていたけれど朱鞠内湖のワカサギ釣りは3月で終わってしまうはずで、この楽しみが無くなってしまうのもちょっと寂しい。
 別に釣りが出来なくても、普段は笹などが密生して歩くことの出来ない朱鞠内湖周辺の森の中を探索したりと、楽しみは他にも沢山ある。
 こんなことを考えながら年度末の日々の仕事に追われていたが、ちょうど仕事も一段落したので、急遽月曜日に休暇を取って朱鞠内湖キャンプを決行することにした。

 この週末は土・日と天気が悪かったので、日・月の日程になったのは結果的に良かったかも知れない。
 それでも天気予報はあまりパッとしたものではなかった。果たして月はその姿を見せてくれるだろうか。
 月曜日の方がいくらかは天気が良さそうだったので、ワカサギ釣りは月曜日にすることにして、昼近くにのんびりと札幌を出発した。
 高速道路を走っていても日が射してきたと思ったら急に猛吹雪になったりと、天候が安定しない。
 深川より北では道路に積もった雪がシャーベット状に解け、その雪に突然ハンドルを取られたりするので、いつもなら快適に車を飛ばせる区間なのに、制限速度を忠実に守る模範ドライバーのような運転を強いられる。
 幌加内を過ぎると路面が完全に真っ白になってしまっているような部分もあり、北国の春は何時になったら訪れるんだ?といった感じである。
 朱鞠内湖の空は暗い雲に覆われていたが、幸い雪は止んでいた。
 漁協の受付で一晩泊まりたい旨を告げると「今、親方がいないから解らないなー、まあ良いとは思うんだけど。」とちょっと頼りない返事である。
 「これまでも毎年テントを張らせてもらってるので、よろしくお願いします。」と、こちらのペースで勝手に話を進めてしまう。最近は冬の朱鞠内でキャンプをする人も増えてきているだろうと思っていたが、まだまだ珍しい存在なのかも知れない。
 駐車場受付の建物裏に車を入れさせてもらい、そこからソリで荷物を運ぶ。前回の白金の森キャンプ以来、我が家の雪中キャンプ装備もかなりコンパクトになったので荷物運びも苦にならない。
 札幌を出る前に釣りの仕掛けを買いに近所のホームセンターに寄った時、かみさんが1脚398円の小型のパイプ椅子を見つけてすぐさま購入、その椅子も持ってきていた。
 雪中キャンプの時に椅子をどうするかは、装備をコンパクト化する上で結構難しい問題であるが、この程度の大きさならばソリに積んだ荷物の隙間に簡単に押し込むことができる。
 普通のキャンプの時のように大きな椅子にゆったりと腰掛けて、なんてところまでは求めないが、こんな椅子でも有った方が確実に雪中キャンプの快適さは増すだろう。

我が家のテントサイト
  無邪気にソリ遊び
我が家のテントサイト   無邪気にソリ遊び

 5cmほどの新雪が新たに積もっているので、真冬と同じような美しい雪景色が広がっている。
 一応スノーシューも用意してきたけれど、新雪の下の雪面は堅く締まっていて、長靴のまま歩いても埋もれることはない。
 真冬の雪景色と春先特有の堅雪、またとない両方の条件が揃い、ソリを引きながらニンマリと笑みが浮かんできてしまう。
 我が家が毎回テントを張っている場所は、全体にやや傾斜していた。こうなると、堅雪がかえって禍し、雪を踏み固めて平らに整地することができない。
 その奥、岬状に湖に突き出している先端部分にちょうど平らな部分があったので、そこまで荷物を運ぶことにした。
 荷物をコンパクトにすると、少しくらい距離が遠くなっても自分の気に入った場所にテントを張れるのが嬉しいところである。
 雪が堅いので、設営も楽だ。20分ほどで設営を完了、やや風が強かったので張り綱も張ることにした。
 かみさんのアドバイスに従い、ビニール袋に雪を詰めてそれを埋め込みペグ代わりにする。初めて使う方法だが、かなりの強風にも堪えられそうなくらいにしっかりと効いていた。

 設営を終えて、ビールで乾杯。零度くらいの気温だが、それでもやっぱりこんな時に飲むビールの味は格別だ。
 フウマは周囲の臭いを嗅ぎまわり所々にマーキング、テントの周囲半径50mを自分の縄張りに設定し終えたようである。
 時々広い雪原を思いっきり疾走しては、その自由さを満喫している。
 私も童心に返って、急斜面をソリで滑り降りてみることにした。これがかなりスリルがあって面白いのだが、かみさんはあきれ顔で見ているだけ。フウマだけが一緒になって遊んでくれた。
 改めてテントの周辺を眺めてみると、これまでよりもマツの木の本数が減っているみたいだ。去年の台風で何本かが倒れてしまったのだろう。
 それに幹の途中で折れてしまっているマツも結構ある。台風18号が朱鞠内湖に残した傷跡も結構大きいようである。
 4時頃からは釣り時間の終了と駐車場の閉鎖を告げるアナウンスが流れはじめた。
 ソリを引きながら駐車場に戻る人々の姿が、我が家のテントから見下ろせる。スノーモービルが轟音を響かせて、釣り客の送迎のために湖上を行き来している。
 いつもの見慣れた朱鞠内湖の冬の風景だ。
 そうして釣り客が全て帰り終えると、湖に静けさが戻ってきた。いよいよ我が家だけの時間の始まりである。

朱鞠内の夕暮れ 朱鞠内の空を覆っていた暗い雲も次第に薄くなり、西の空に沈む太陽の光がテントサイトまで射し込んできた。
 これならば満月一日遅れの月の出も楽しめそうだ。
 今回の夕食のメニューはしゃぶしゃぶである。メニューを提案したのはかみさん、冬の締め切ったテント内でしゃぶしゃぶをすればどういった結果になるか、ちょっと、いや、かなり不安はあったが、余計なことを言うと「それじゃあ貴方が別のものを考えなさいと」と開き直られるのがオチなので、素直にかみさんの案に従うことにした。
 いつもの冬キャンでも、どっちみちテント内は酷い結露になっているのだから、しゃぶしゃぶをしてもしなくても大した違いはないだろうと考えたのだ。
 でもやっぱり、夕食を食べ終えた後のテント内は酷い結露に覆われてしまった。そのまま放っておいたら天井から水滴が降ってきそうなので、雑巾でその結露を拭き取る。
 テントの外に出ると空にはいつの間にか星が輝いていた。オリオン座の姿でも撮そうと思い、カメラを準備していると急に雲が広がってきた。そしてそのうちに雪まで舞い始める。
 これでもう月の姿は望めないかと諦めかけたが、早くも西の空には雲の切れ間も見えてきている。本当に変わりやすい天気である。
 そうしてようやく雲の陰から月が昇ってきた。
 雪に覆われた朱鞠内湖の湖面が、月明かりに照らし出され白く輝いている。
 家にいたら絶対にこんな風景を見ることはできない。寒い思いをしてでもキャンプに来るのは、こんな風景に出会うためなのである。
 それにしても、明るすぎる場内の照明がじゃまくさい。次にこんな機会があれば、月明かりに照らされた朱鞠内湖の湖上を、街 灯の光が届かないずーっと遠くまで歩いてみたいものだ。
 やがて空は、再び雲に覆われてしまった。
 眠る前に、試しに管理棟のトイレに行ってみることにした。明かりは灯っているけれど、どうせ鍵がかけられているのだろう。ところがトイレのドアはすんなりと開き、その中は暖房が入っていてとても暖かだった。
 暖房は凍結防止のために入れっぱなしなのだろうが、鍵だけはかけているはずだ。我が家のために漁協の方が気を使ってくれたのかも知れない。感謝しながら、温かなお湯で歯を磨いてテントに戻った。
 

朱鞠内湖の月の出
  朱鞠内湖の日の出
朱鞠内湖の月の出   朱鞠内湖の日の出

 翌朝は5時前に目が覚めた。テントの中は既に明るくなっている。
 まずはガスストーブに火を付けてテントの中を暖めなければならない。
 シュラフにもぐったままでテントのファスナーを開ける。すると氷の細かい粉がはらはらと舞い落ちてきた。
 ストーブの凍り付いたノブをペンチで苦労しながら回して火を付ける。
 インナーテントの外に出したままにしていたカメラが霜に覆われていた。慌てて、使い捨てカイロで包み込んでシュラフの中で暖める。何とか無事に機能は回復してくれたようだ。
 テントの外に出てみると夜中に少し降ったらしい雪が薄くテントを覆っていた。気温はマイナス15度、キーンとした寒さが寝ぼけた頭をいっぺんに目覚めさせてくれる。
 空は完璧なくらいの快晴だった。早くも釣り人達がソリを引きながら思い思いのポイントへと歩いている。
 やがて太陽が昇ってきた。冬のキャンプで日の出を迎えるとホッとした気持ちになるが、気温は太陽がでてからもしばらくは下がり続けるものだ。
 それでも、日の光を浴びているだけで体の中は暖まってくる気がする。
 そんな朝日を浴びながらのコーヒータイム、雪中キャンプで私が一番幸せを感じる一時である。
 朝食は昨夜のしゃぶしゃぶのつゆを利用した煮込みラーメン、フーフー言いながらそれを食べるとようやく体の中も暖まってきた。
 月曜日だから釣り人もそんなに来ないだろうと思っていたが、駐車場には次々と車が入ってきている。
 かみさんは早く釣りをしたくてウズウズしている。
 それに急かされて、朝の幸せな一時をゆっくりと楽しむ余裕もなく釣り場へと向かうことにした。
 

凍えた朝
  美しい冬の朱鞠内湖
凍えた朝   美しい冬の朱鞠内湖

 我が家が何時もワカサギを釣る場所は、管理棟すぐ前の前浜部分だ。
 ベテランの人達は皆遠くのポイントまで出かけるみたいだが、それほど大量に釣り上げるつもりもなく、ここでも退屈しない程度には釣れるのである。
 昨日の釣り人が開けた穴を見つけて、そこに張った氷を掻き出す。するとその穴の中から氷と一緒に大量のゴミが出てきた。
 酷い奴がいるものである。平気でこんな行為ができるなんて、どんな心の構造をしているのだろう。
 気を取り直して、その穴に釣り糸を垂らした。
 いつもならば直ぐにピクピクというあたりが来るはずなのに、今日はしばらく待っても全然そのあたりがない。
 近くの家族連れは、小さな子供が釣れるたびに喚声を上げ、お父さんが忙しそうに釣った魚を針から外してやっている。
 そんな憎たらしい、いや、ほほえましい親子の姿を横目で見ながら、「こ、こんなはずでは」という焦りが心の中にこみ上げてきた。
 そのうちに釣れるだろうとじっと堪えながらも、時計を見ると既に1時間が過ぎている。その間にかみさんは2匹ほど釣り上げていたが、私は0匹。まさか朱鞠内湖のワカサギ釣りで坊主に終わるなんて・・・。
ワカサギ釣り風景 湖上は眩しいくらいの陽光に包まれ、素晴らしい釣り日和。それなのに私の心の中はどんよりとした雲に覆われていた。
 やけくそになって竿をしゃくっているとと、ようやく竿先にあの懐かしいあたりが感じられた。祈るような気持ちでリールを巻くと、背中に針のかかった小さなワカサギが上がってきた。
 「これだっ!」
 針の回りに群がっているはずのワカサギが餌に食いつくのを待っていてもしょうがない。何でも良いからワカサギの体に針を引っかけさえすれば釣り上げることができるはずだ。
 それからはそーっと糸を垂らし、ワカサギが近くに寄ってきたであろうタイミングを狙って竿をクイッとあおる。
 すると直ぐに竿先がピクピクと小さく震える。それからは、エラに腹に背中に、時には尾に針が刺さったワカサギが次々と釣り上げられるようになった。
 たまたま群れが回遊してきたのか、釣り方が良かったのか、どちらなのかは解らないが、それからの2時間でかみさんと二人で50匹以上のワカサギを釣り上げることができた。
 人間達の奮闘を横目に、愛犬フウマは春の強い陽射しを全身に浴びながら、犬用ベッドの上でひたすら惰眠をむさぼっている。
 それぞれに満足した時間を過ごしてテントまで戻ると、結露でや雪でバリバリに凍り付いていたテントがすっかり乾いてしまっていた。冬のキャンプで乾いた状態のままテントを片づけられるなんて初めての経験である。
 全ての面でこれだけ条件に恵まれた雪中キャンプなんてそうあるものではない。心地よい充実感に包まれてキャンプ場をあとにした。

 帰る途中の朱鞠内の集落で、「mamibooのちっちゃい店」に立ち寄る。この店は、見聞録のホームページで相互リンクしている函館のhoshibooさんが、去年の夏頃に函館から移住してきて始めた店である。
 以前の経営者が店を閉めることになっうたので、その後を引き継いだという話しだ。
 以前の店にはかなり昔に一度だけ入ったことがある。
 まるで物置のような店内で、「○○有りますか?」と尋ねたところ、「う〜ん、確か何処かに有ったはずだけどね〜」なんて言いながら無造作に積み上げられた商品の山をゴソゴソとかき回す。やっと見つかった思ったら、今度は「え〜と、これの値段は〜、なんぼだったろう」と、奥から古い帳面を引っ張り出してきてページをめくりはじめる。
 万事がこの調子で典型的な田舎の雑貨屋という雰囲気の店だったが、「mamibooの小さな店」は田舎の雑貨屋的な雰囲気は残しながら、少しずつこだわりの商品も増やしているところみたいだ。
 最初は、以前hoshibooさんのサイトから注文したこともある本格キムチを買うはずだったのに、ついつい他のものも買い込んでしまった。
 あいにく店にはmamibooさんだけで、旦那さんは朱鞠内湖でワカサギ釣りの最中だとか。まあこれからも度々訪れることになるのだろうから、旦那さんによろしくと挨拶をして店を出た。
飯処せいわ そして昼は幌加内町政和の「飯処せいわ」という店で蕎麦を食べることにする。ここは昨日来る途中にたまたま蕎麦ののぼりが目に付いたところで、最近オープンした店のようである。
 もしかしたら美味しい蕎麦を食べられるかも、そんな期待をしていたのにメニューを見たら蕎麦屋というより普通の食堂と同じようなメニューである。
 ちょっとがっかりしながらも、一応は盛り蕎麦を注文した。
 若いお兄さんが一人でやっている店だが、厨房の後ろ姿を見ていると結構丁寧に蕎麦を茹でている。その姿で少し期待がふくらみ、でてきた蕎麦を食べるとこしが強く甘みもあって、かなり美味しい蕎麦である。これから朱鞠内へ来るときは、この店で蕎麦を食べるのが我が家の定番になりそうだ。
 店内は天井も高く、ちょっと変わった作りだなーと感じていたが、この建物は旧深名線の政和駅の駅舎だったそうである。
 古いものが少しずつ新しい姿に変わりつつある朱鞠内周辺、これからも興味深く見守っていきたい。

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