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支笏湖独り占めオコタン最終キャンプ

オコタン野営場(10月30日〜31日)

 クッチャロ湖キャンプから帰る途中の車内で、キャンピングガイドを見ていたかみさんが「次のキャンプはオコタン野営場にしましょう」と言いだした。
 「はぁ?」
 次のキャンプは1週空けて10月の最終土曜日の予定、多分これが我が家の最終キャンプになるはずである。
 終わりよければ全てよし、シーズン最後のキャンプともなればどこのキャンプ場に泊まるかは大問題だ。それが、何の脈絡もなく突然の様に飛び出してきた「オコタン野営場」の案。
 その奇抜さに面食らって他のキャンプ場を考える余裕もなく、「は、はい、解りました」と返事をしてしまい、大問題になるはずのキャンプ場選びは呆気なく片が付いてしまった。
 かみさんがオコタン野営場に決めた理由はあえて聞いていないが、多分、たまたま目に止まっただけの話しと言うのが本当のところだろう。

 土曜日の天気は快晴、日曜日は曇りの予報になっていたが、気温も高くて絶好のキャンプ日和である。
 自宅からもそれほど遠くない場所なので、ゆっくりと出発しようと思っていたが、心が弾んで8時半には家を出てしまった。
 支笏湖のオコタンから美笛に抜ける道路が通行止めになってからと言うもの、我が家が支笏湖へ行くときは何時も高速道路に乗って千歳経由というパターンが多くなっていた。
 久しぶりに札幌市南区から支笏湖へ続く国道453号線を走ったが、昔は何度も走った道だけに懐かしさを覚えてしまう。
 途中の紅葉は全て散ってしまっていたが、オコタンペ湖の展望台から下っていくと、オコタン野営場に近づくにしたがって沿道の紅葉が華やかさを増してきた。
 時間が早かったものの、既にオコタンの駐車場には結構な数の車が停まっていて驚かされる。ほとんどが釣り客の車みたいだ。
 受付を済ませて、前回テントを張った湖畔に車を入れようとすると、その入り口が見あたらない。その場所は石が積み上げられて閉鎖されてしまったようである。
 慌てて受付まで戻り確認してみたが、ゴミが捨てられるので車は入れないようにしたとのこと。確かに以前泊まったときは、後ろの林の中にはゴミが散乱してひどい有様だった。
 諦めて駐車場の後ろの林間にテントを張ろうかと考えたが、湖畔にテントを張るのとでは雲泥の差である。それならば、最初から別のキャンプ場へ行っていたはずだ。
 駐車場から我が家が目を付けている場所までは、200mほど離れている。リヤカーがあれば何となる距離だが、完全な人力で全ての荷物を運ぶとなると、そこを何往復することになるのだろう。
 かみさんは、どんなに荷物運びが大変であっても、どうしても湖畔にテントを張りたいみたいだ。
 そこである考えが頭に浮かんだ。カヌーに荷物を載せてサイトまで運ぶのである。
 この方法、実は以前にも考えたことがあった。朱鞠内湖での孤島キャンプとか冬の美笛での雪中キャンプ、カヌーに道具一式を積み込んでキャンプ予定地へ渡ろうと言うものである。
 しかし、朱鞠内湖では風が強まると島から戻れなくなる恐れがあるし、美笛の雪中キャンプでは途中でカヌーがひっくり返ったら命に関わる問題にもなりかねない。
 それと比べるとわずかな距離を運ぶだけのことだが、ちょっとだけその気分を楽しめそうだ。そもそも、これがカヌー本来の正しい利用方法である。
カヌーで荷物運び 早速車からカヌーを降ろして、それに荷物を積み込む。
 実際に荷物を載せてみると、意外なほど多くの荷物を積み込めることに気が付いた。我が家のアリーは前後に浮力体を入れているが、それも外してしまえばもっと沢山積めそうだ。
 私が調子に乗って次々に荷物を載せていると、かみさんが心配して「もう、それくらいにしておけば」と言ってきた。確かに途中でカヌーをひっくり返して、荷物が全て濡れてしまったら洒落にもならない。
 ひとまずはそれで運んでみることにする。
 荷物満載のカヌーを湖面に浮かべると、ずしりとした重さが体に伝わってくるようだ。いつもは軽く一漕ぎすれば直ぐに反応するカヌーが、ゆっくりとしか動き出さない。
 それでも一度進み始めれば、荷物の重さはほとんど気にならない。リヤカーを引っ張るよりも全然楽である。
 何だか自分がアマゾンの探検隊になったような気分で、楽しくなってきた。
 カヌーでしかたどり着けないようなアマゾンの奥地、適当な野営場所を見つけて上陸し、そこにテントを張る。誰にも邪魔されない自分だけのキャンプ地だ。
 時々、お洒落な装備に身を固めた釣り師がテントの前を行き来しているが、まあそれは気にしないことにしておこう。
 こうして無事に最高のテントサイトが確保された。
 以前にその場所にテントを張ったときは、釣り人の車の出入りが多くて、夜になるまでは静かなキャンプを楽しめる雰囲気ではなかった。しかし今は、車が入れなくなったおかげで、よほどの物好きでなければこんなとこまでテントを張りにはやってこない。
 一度テントを張ってしまえば、誰にも邪魔されない静かなキャンプが約束されたようなものである。
 かみさんがニコッと笑って、「やっぱりオコタンにして良かったでしょ」と言った。

湖面に映る恵庭岳 山頂を駆ける犬?

 設営後のビールを味わった後は、目の前に広がる鏡の湖にカヌーを漕ぎ出した。
 キャンプ場の後ろにそびえる恵庭岳、サイトからはその姿を眺められないが、カヌーでちょっと沖に出るだけで猛々しい山の姿を楽しむことができる。
 その姿は、そっくりそのまま湖面にも映り込んでいた。
 我が家のカヌーが立てた波で、その恵庭岳の姿が揺らいでしまう。波がおさまるのをじっと待っていると、パドルから落ちた一滴の水滴が、元の静寂に近づきつつあった湖面を再び乱してしまった。
 諦めて再び漕ぎ始め、自分が立てた波の中を通り過ぎると、カヌーの前方の水面には本物と区別がつかないくらいにはっきりとした山の姿が現れた。慌ててカヌーを止めてカメラを構えると、その姿はまたしても陽炎のようにゆらゆらと揺れ始めた。
 そんな追いかけっこをしばらく繰り返した後、湖面に映る恵庭岳は諦めて本物の山の姿を楽しんだ。山頂にかかる雲は次々にその姿を変えてゆき、一瞬、山頂を駆ける犬の姿に変わった。
湖面の空 夏の太陽を思わせるようなギラギラとした陽射しが下の方から照りつけてくる。水面を見ると、そこにはもう一つの空が広がっていた。
 天と水面が一体になったような不思議な感覚に襲われる。
 支笏湖の魔力に翻弄されたような気分でサイトまで戻ってきた。

 昼食は家から持ってきたおにぎりと、途中のコンビニで買ったカップラーメン。何時も通りの我が家の手抜きメニューだが、今日の夕食にはリッチなダッチオーブン料理が出てくる予定なので、まるで気にもならない。
 昼食後はあれほど静かだった湖面にさざ波が立ち始め、直ぐにそれは大きな波となって湖岸に打ち付け始めた。
 風はほとんど吹いていないのに、支笏湖の気象の変化は本当に急激である。
 カヌーにも乗れないので、テントの中に転がって怠惰な時間を過ごすが、そんな時間が取れるくらいののんびりとしたキャンプは久しぶりである。
 午後3時、そろそろ夕食の準備にとりかかる時間だ。
 今回、我が家のキャンプに初登場するダッチオーブン、購入してからまだ1週間も経っていない。先週の週末には、ダッチオーブンの事などまるで頭の中には無かったのである。
 それが、生活習慣病の検診に合わせて1日仕事を休み、そして検診の帰り道に某アウトドアショップに立ち寄ったことで事情が変わってしまった。
 そんな店に寄っても最近は欲しいものは何もないし、消耗品のガスカートリッジとランタンのマントルを買って帰るだけだった。
 ただ、帰り際に見た折り畳み式の薫製スモーカーにはちょっと気が惹かれてしまった。昔一度だけ、段ボール製のスモーカーで鮭の薫製を作ったことがあるのだが、再び薫製作りに興味が湧いてきたのである。
ダッチオーブン 家に帰ってかみさんにその話をすると、「そんな物を買うくらいならば絶対にダッチオーブンの方が良いわよ!」とのお言葉が反ってきた。
 「一人でそんな店に行ってきたなんてずるいわ!それにもうすぐ私の誕生日だし、それならプレゼントは・・・。」
 「は、はい、すいません、そ、それでは、これから一緒にダッチオーブンを買いに行きましょう」
 何だか訳の分からないうちに、ニコニコ顔のかみさんを車に乗せて、再びアウトドアショップまで出かける羽目になってしまった。
 少しでもキャンプ道具を軽量化しようと考えていたのに、まるで反対のダッチオーブンを買ってしまうとは。シェラカップの代わりに大きな瀬戸物のドンブリを持ち歩くようなものである。
 ただ、焚き火をしながら料理ができるというのが、私にとってはダッチオーブンの大きな魅力だ。
 そして今回のメニュー、ダッチオーブンと言えばローストチキン、安易で単純で当然の選択である。
 かみさんがチキンの下ごしらえをして、私がたき火台の上のスタンドにオーブンを吊す。
 いつもはほとんど料理の手伝いなどしないのに、たったこれだけの行為で自分も料理に参加しているように思えるのがダッチオーブンの偉いところである。
ダッチオーブンで料理中 焦がさないように弱火で燃やすので、少しずつ薪をくべる。これも楽しい作業だ。
 途中でかみさんと交代して、裏の森の中に薪を集めに入る。台風18号の強風で倒されたのだろう、途中からボキリと折れた大きなトドマツの幹が痛々しい。
 頭上から垂れ下がった1本のブドウの蔓、ぶら下がってもびくともしない。リースの材料にするにはちょうど良い蔓だ。
 もしかしたら倒れている木にもこんな蔓が巻き付いているかもしれない。そう考えて、近くにあった倒木の幹を伝って上まで登ってみる。
 予想通り手頃なブドウの蔓が手の届く場所に巻き付いていた。ナタでその蔓を適当なところで切断する。
 その蔓を枝から外そうと引っ張っているとき、足場にしていた木の枝の感触が突然無くなった。スローモーションの様に体が落下を始める。
 あれ?このままどうなっちゃうんだろう?
 かろうじて横の枝に体が引っかかり、落下が止まった。
リース完成 苦労して手に入れた蔓を森の中から引きずり出し、それを丸い形に編み上げたらあっと言う間にブドウ蔓リースのできあがり。
 買えば5千円はするかなと一人で悦に入る。
 かみさんも一応は褒めてくれたが、危ないまねは止めなさいとお叱りを受けてしまった。

 辺りが暗くなる頃には、いよいよローストチキンの完成である。
 重い蓋を取り去ると、真っ白な湯気と共に美味そうな香りが辺りに広がる。愛犬フウマもその香りに、人間と一生なって興奮気味である。
 ここで、完成したローストチキンの姿を記念撮影。こんなローストチキンのアップ写真、どこのホームページでも出てくるものなので、あえてここには載せない。
 二人で食べるには大きすぎるのではと思えた1羽分の丸鶏も、あまりの美味さにガツガツと食べ過ぎて、危うく明朝の鳥がゆにする分が無くなってしまうところだった。
焚き火タイム 後はゆっくりとした焚き火タイム。いつの間にか波も静まって、暗闇の中に穏やかな湖面が広がっていた。
 料理中はあまり派手に焚き火を燃え上げさせる訳にもいかず欲求不満気味になっていたので、一気に薪を投入する。テントの横に転がっていた直径20cm以上はある枯れ木も、そのまま焚き火台の上に乗っけてしまう。その重みだけでたき火台が潰れてしまいそうだ。
 気温は5度、風もなく、絶好の焚き火日和である。
 やがて、満月二日過ぎの明るい月が山陰から昇ってきた。湖の対岸に見える風不死岳の黒いシルエットを、千歳空港から飛び立つ飛行機の明かりが点滅しながら横切っていく。
 支笏湖独り占め、この言葉は以前このキャンプ場に泊まったときに思いついたものだが、まさしく今回も支笏湖独り占めといった気分だ。
 こんなに大きなものを入れて果たして今日中に燃え尽きるんだろうかと思っていた太い薪も、いつの間にか焚き火台の上で小さくなって、真っ赤な熾火に変わっていた。
 支笏湖の水で歯を磨いて顔も洗う。
 次第に空は雲に覆われ始めた。明日の天気を心配しながら、9時過ぎにはテントに入って寝ることにする。

支笏湖の朝 夜中に暑くて目が覚めた。堪らずに、シュラフの中に入れてあった使い捨てカイロを外に放り出す。
 腕時計の温度計を見るとテントの中は15度にもなっていた。
 そのまま、うつらうつらしながら朝を迎える。5時過ぎにはかみさんも目を覚ましたみたいなので、起き出すことにした。
 空は雲に覆われ、まだ外は真っ暗だった。ランタンに灯りをともし、焚き火に火を付ける。気温は10度もあり、道理で暑くて目が覚めるわけである。
 西の空の雲の切れ間から、月が少しだけ顔を覗かせた。次第に空が白んでくる。
 今朝はキャンプ場の炊事場まで顔を洗いに行くことにした。駐車場には、そのまま夜をあかしたような車が結構止停まっている。テントも数張り張られているし、思わぬ賑わいにビックリしてしまった。
 無理して湖岸にテントを張ったのは、大正解だったようである。
 テントに戻り、昨夜のローストチキンの残りでかみさんが鳥がゆを作った。鳥と野菜のエキスがたっぷりと入った鳥がゆ、これがまた最高に美味しい。ダッチオーブンの威力を改めて思い知らされた感じだ。
朝もダッチオーブンで 静かな湖面に小さな波紋がポツポツと広がり始めた。それで初めて雨が降り始めたことに気が付く。
 慌ててテントの張り出しの下に避難したが、南の空には雲間から青空も広がり、その雨も直ぐに止みそうな雰囲気だ。
 カワガラスがテントの前の岩場にやってきた。時々水の中に飛び込んでは小魚を追いかけまわしている様子である。
 それをじっと見ていたフウマが、急にスタスタと川ガラスの近くまで近寄って行き、何か美味しいものがあるのかとその付近の臭いを嗅ぎ回っているのが何とも可笑しい。
 雨は止んだけれど、そのまま青空が広がる感じではなかった。
 時々さざ波が湖面に広がるものの、今日もべた凪の支笏湖である。
 再びカヌーで湖に漕ぎ出す。支笏湖でカヌーに乗るたびに感動させられるのが、その水の透明さである。
 湖底がはっきりと見えるものだから、急に深くなっているような場所では恐怖感さえ覚えてしまう。高所恐怖症の人が支笏湖でカヌーに乗ったら、間違いなく体が震えてしまうだろう。
 岸に沿ってカヌーを漕ぎ進めると、次々に様子を変える湖底の様子がとても興味深い。砂地だったり、玉石だったり、突然水草に覆われた様な場所も現れる。
支笏湖の湖岸 フレナイ川の辺りで上陸して、湖岸を歩いてみた。その付近には、小さな平らな石だけで覆われた岸辺がある。何故この場所だけに平らな石が集まっているのかとても不思議だ。
 かみさんは2本の流木の間にその石を並べて、鉄琴のようにして叩いている。これが結構いい音色を出しているのだ。時間をかけて石を選べば、本格的な音楽を奏でることもできそうだ。
 再びカヌーに乗ってその付近の湖底の様子を見てみたら、大きな岩が一面に広がっているのに驚かされた。本当に支笏湖は不思議な湖である。
 もう少し先に進むと、山肌に道路のガードレールが見えた。
 オコタンから美笛に抜ける道道である。下から見上げるととても道路が通っている様な場所には見えない。
 崖崩れで閉鎖されてからしばらく経過しているが、開通の見込みはあるのだろうか。できれば、このまま廃道にした方が良いのかもしれない。
 この道路から転落した車が湖底に沈んでいる様子を見られる場所があるという話しだが、今回は確認できなかった。
 かみさんが綺麗なツルウメモドキの実を見つけたので、再び上陸する。今度はかみさんが葛の蔓を集め始めた。
 昔は二人でこんなことを良くやっていたものである。
 そのまま先に進んでもきりがないので、その辺で引き返すことにする。景色に見とれてそのまま進んでいけば、美笛キャンプ場まで行ってしまいそうだった。
 実際に、美笛までの半分くらいの距離までは来ていたような気がする。
 ここまで来るときは、湖畔沿いにカーブを描くように進んできたので、帰りはキャンプ場までの最短距離で漕ぐことにした。
 しかしそうなると、帰路の途中では湖岸から大きく離れてしまうことになる。一番離れた場所で4〜500mはあっただろうか。
 支笏湖でこれだけ岸から離れるのは初めての経験だった。さすがに恐怖感に襲われる。
 でも、どこまでも広がる穏やかな湖面を見ればこの程度の冒険は許されるだろう。
 20分全力で漕いで、やっと岸に近づいて来たときは正直ホッとした。

 サイトに戻ってきた頃には、小雨で濡れたテントもほとんど乾いていた。
 テントを撤収して、帰りもまたカヌーで駐車場まで荷物を運ぶ。面倒な荷物運びも今回だけは楽しい作業だ。
 もしかしたら、これが今シーズン最後のキャンプ。
 例によって色々な出来事があった今年のキャンプだったが、最後の最後でシーズンのベストキャンプを楽しめたような気がする。
 終わりよければ全てよし、楽しいキャンプシーズンがこれで幕を閉じた・・・、んだろうか。

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