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月の明かりに虫の声、豊岡キャンプ

豊岡農村公園キャンプ場(8月28日〜29日)

 どこまでも澄んだ青空が広がり、夕方にはその空が紫色に染められ、道路脇の草むらからは涼しげな虫の声が響き、爽やかな風が頬をなでて吹き抜けていく。
 こんな毎日が続く中で仕事をしていると、無性にキャンプへ行きたくなってしまう。
 先週末に空知川で開かれたカナディアンスラローム大会を見たかみさんが、「よーし、今週末は千歳川でカヌーの練習だー」と張り切っているのを、「ねえねえ、そんなこと言わないで、静かなキャンプを楽しみましょうよ」と説得して、キャンプに付き合ってもらうことにする。
 しばらく賑やかなキャンプが続いていたので、久しぶりに我が家本来の静かなキャンプをしたかった。それも、できれば誰もいないキャンプ場で。
 ちょっと前に、何気なく眺めていた道路地図で、あまり聞いたことのないキャンプ場を発見していた。
 もしかして穴場キャンプ場を新発見?、一応北海道キャンピングガイドで調べてみたところ、残園ながらその中でも既に紹介されているキャンプ場だった。
 でも、その内容を読んでみると、ほとんど利用者もいないみたいだ。
 そこは「豊岡農村公園キャンプ場」、静かなキャンプを楽しむにはおあつらえ向きの場所である。

 当日、キャンプ場へ行く前に、近くにある「黄金水松」というオンコの巨木を見に行くことにした。
 道路標識に注意しながら走っていくと、手作りアイスクリーム「モータンハウス」という手製の看板がやたら目に付く。
 観光地に続く道路ならばよく見かけるような看板だが、ここの道路は地元の人(その付近に住む農家の人)しか通らないような場所である。
 私だって、豊岡農村公園という聞いたこともないキャンプ場に泊まることにして、たまたまその近くに「黄金水松」という名前の標示を地図上で見つけて、物好きにもわざわざ遠回りして何も無い山奥の道に入り込んできただけなのだ。
 一応この近くにはカナディアンワールドと言う忘れ去られたテーマパーク(現在は公園)が存在するが、そこへ行く人だってここの道は通らないだろうと思われる。
 果たして、どんなアイスクリーム屋があるのだろう?「黄金水松」よりもそちらの方に興味が湧いてきてしまった。
 肝心の「黄金水松」は、樹齢3000年、幹周6.2mという巨木であるが、枝張りが大きいわけでもないので、私としてはそれほど感動を覚えなかった。
 「モータンハウス」はそこから直ぐ近くにあった。
 よく見かける手作りアイスクリーム屋と同じく、小さな店の周りには花を植えて小綺麗にしている。
 隣の牧場の奥さんが趣味でやっているような店なのだろうか。
 アイスクリームはねっとりとした食感でなかなか美味しい。テーブルの上に隣の牧場の説明が書いてあったが、それを読むと結構有名な牧場みたいだ。
 我が家がアイスクリームを食べている間にも、軽トラックに乗った社長と呼ばれていたおじいさん、オープンカーに乗った若者もやってきて、それなりの賑わいである。
 何となくほのぼのとした感じに包まれた、不思議なアイスクリーム屋さんだった。

 黄金水松  モータンハウス


  芦別から深川に抜ける道々を走りながら、キャンプ場への入り口を探す。そしてイルム山荘の大きな看板を見つけた。
 キャンプ場の名前はどこにも出ていないので、この看板を目印にしなければならないのだ。
 その道を奥に進んでいくと、豊岡農村公園の看板と小さな遊具がポツンと置かれ何となく公園らしそうな場所が現れた。そこの道路をはさんだ反対側は牧場になっていて、牛たちがのんびりと草を食べている。
 キャンプ場は、その公園のちょうど裏側になる。
 砂利道を入っていくと、キャンピングガイドに載っている写真と同じ風景が広がっていた。その砂利道の突き当たりが駐車場のようなスペースになっている。
 とりあえず、車をそこに停めて、サイト選びに取りかかることにする。
  車から降りた途端、あらゆる方向から響いてくる虫の声に包み込まれた。思わず笑みがこぼれてしまう。今時期のキャンプでは、虫の鳴き声を子守歌に眠るのが最高の楽しみである。
傾いたサイト ところが、テントを張る適当な場所が見つからない。傾斜地のキャンプ場であると言うことは解っていたが、探せば平らな場所くらいあるだろうと軽く考えていたのだ。
 見事なまでに全体が傾斜している。トイレや四阿の後ろにかろうじて平らな部分もあるが、そこはテントサイトとは言えないだろう。
 しょうがないので、場内に何カ所かある野外卓の中で一番傾斜の少なそうな場所を探してそこにテントを張ることにした。
 ガイドブックでは車両進入不可となっていたが、場内には車が何度も入っているような跡が付いているので、我が家も車を入れさせてもらう。
 いつもならば、一番ロケーションの良い方にテントの入り口を向けて設営するのだが、今回だけは贅沢を言ってられない。斜面に対して縦に寝られるような向きにテントを設営するほか無かった。
 実際にテントの中で座ってみたら、そのまま下に滑り落ちそうな感じだが、寝そべってみるとそれほど傾斜も気にならない。何とか安眠できそうである。

 設営を終わり、イスに座ってくつろぐ。ふと上を見上げると、青空と白い雲を背景にトンボ達が群れ飛んでいた。
 煩いくらいの虫の鳴き声を通して、川のせせらぎの音も聞こえてくる。来るときに見た公園の方に、川が流れているみたいだ。
 清々しい秋の空気を胸一杯に吸い込むと、なにやらホンワリとした香りも一緒に鼻に入ってきた。牧場に囲まれた場所なので、この程度は我慢するしかない。
 愛犬フウマも、久しぶりの誰もいないキャンプ場で場内全てを縄張りと決めたようだ。こうなると、遠くに人影が見えただけでも吠えてしまうのだが、ここでは他の人がやってきそうな気配は全くない。
 ただ、四阿やトイレの周りには食べ物かすが落ちていそうなので、完全に自由に歩き回らせる訳にはいかない。
 特にトイレの前には、前のキャンパーが残していったようなゴミがゴミ箱からあふれているような状態だ。一応ゴミ箱は置いてあるものの、こんな場所ではゴミを持ち帰るのが常識ってものだろう。
 何時から放置されているのかは解らないが、それほど荒らされていないところを見ると、ここにはカラスやキツネはいないみたいだ。

 黄金水松  モータンハウス

 川の音が聞こえる公園の方に行ってみることにした。
 サイトから階段を下りると、その直ぐ下を小川が流れていた。河畔林に覆われ小さく蛇行しながら流れるとても感じの良い川である。
 でも私は、牧場に囲まれた場所を流れるこのような小川は、どうしても信用できない。いくら綺麗な水に見えても、何が流れ込んでいるか解ったものではないのだ。
 初めて見るような古びた遊具がポツンと一つだけ置かれている。丸太ステップがその周りに意味もなく並んでいた。
 こうなると、遊具と言うよりも、不思議な空間を演出する一つのモニュメントとして考えた方が良さそうである。
 林の中に枯れ枝が沢山落ちているのが目に入ったが、今回はたっぷりと薪を持参してきたのでそれまでは必要なさそうだ。それでも何時もの癖で、サイトへ戻ってきたときは一抱えの薪を抱えていたりする。

 サイトの上の方には、牛舎のような建物の一部が見えている。
 そこへも行ってみようと思ったが、防疫上の関係でそこへの道路は関係者以外通行禁止になっていた。
 日中は畜産振興公社の人間がそこで働いているみたいだが、夕方になると帰ってしまったようである。
 これでキャンプ場周辺からは完全に人の気配が消えてしまい、本当の開放感に浸ることができる。フウマじゃないけれど、キャンプ場周辺が全て自分の縄張りになったような気がする。
 夕焼け雲の美しさに気を取られていると、いつの間にか背後から大きな月が昇ってきていた。
 満月にはまだ二日早いが、とても美しい月である。
 夕食は、今シーズン最後になりそうなバーベキューだ。そろそろ鍋が食べたくなるような季節である。
 あたりはすっかり暗くなり、月明かりが周りを照らしている。ランタンの火を消しても、周りの明るさはそのままだった。
 素晴らしい月夜だ。
 月明かりの下で焚き火の炎がチロチロと揺れている。テントの周りでは相変わらず虫たちの音楽会が続いていた。
 やっぱりキャンプはこうでなくては。今シーズン一番のキャンプの夜であった。

 黄金水松  モータンハウス


  翌朝、目を覚ましても体はそれほど下へはずり落ちていなかった。思いの外、熟睡できたような気がする。これならば金山湖畔キャンプ場の傾斜地にもテントを張ることができそうだ。
 上空には雲が広がっていたものの、それも直ぐに晴れてきそうな感じだ。
 いつものように焚き火とコーヒーで朝の一時を楽しむ。
 雲間から太陽の光が射してくる頃には、それまで静かだった虫たちも、また賑やかな声を響かせはじめた。
 こんな場所ではと言うと失礼かも知れないが、今シーズンのベストキャンプを楽しめたような気がする。
 ただ、荷物を積み終えてキャンプ場を後にするとき、「もう一度ここへ来ることは無いだろうなー」という感想は、かみさんと同じものだった。

付録
 今回のキャンプで豊岡農村公園に泊まらなかったら、第二候補として滝川の丸加高原オートキャンプ場を考えていた。
 高原という名前に惹かれて、以前から候補にしていたキャンプ場である。
 ちょうどコスモスの花が咲いている時期なので、帰り道に寄ってみることにした。
 キャンプ場周辺はまさに高原の雰囲気、丘陵地帯に広がる緑の牧場がとても開放的だ。
 丸加高原に到着すると、伝習館という立派な建物に驚かされる。そして綺麗に管理された庭園。オートキャンプ場はその庭園の奥にあるみたいだ。
 見学者は11時からと入り口の看板に書いてあったので、サイト内は見て歩くことができなかった。
 でも、キャンプ場が作られているその場所、どう見ても高原という雰囲気ではない。場内の一番低くなっている場所に、無理やり押し込められたような感じだ。
 確かに周りを木に囲まれ落ち着いた雰囲気に見えるが、私がイメージしていたキャンプ場とはかなり違っていた。
 豊岡農村公園に泊まった後なので、そのギャップが大きすぎたが、我が家はもうこんなキャンプ場には泊まれないかもしれない。
 肝心のコスモス畑は、まだ開花し始めたばかりの状態だった。一面がピンク色に染まったコスモス畑を想像していたので、最初はどこにあるのか解らずにその前を通り過ぎてしまったくらいだ。
 でも、このくらいの淡いピンク色の方が、風情があって楽しめるかも。

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 黄金水松  モータンハウス

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