キャンプ場に戻って昼食を作るのも面倒なので、近くにあったレストランに入ることにする。
鉄道記念館で買ったアーチ橋の地図をゆっくり見てみると、今走ってきた道の途中にも、素晴らしいアーチ橋が有ったみたいだ。やっぱり、最初にこの地図を手に入れてから、アーチ橋探索を楽しんだ方が良かったようである。
不味い料理を食べ終えて、そこのレストランを出た。このような温泉街で、美味い物を食べさせてくれる店を見つけるのは本当に難しい。
キャンプ場に戻ると、夏の太陽の日差しが照りつけていた。
開けた場所にテントを張ったものだから、我が家のテントだけが燦々と太陽の光を浴びている。
最近はタープも張らないものだから、こんなに日差しが強いとテントのそばには居場所が無くなってしまう。近くの白樺の木の下に避難することにした。
昨日の夕方にテントを張るときは、そこが一番良い場所のように思えたのに、今は最悪の場所にテントを張ってしまったように見える。まあこれも日中だけの辛抱なので、白樺の木の下を避暑地代わりに使えば良いだけの話である。このキャンプ場に置いてあるテーブルとベンチのセットは移動することができるので、近くに置いてあったものをそこまで持ってきて、使わせてもらうことにした。
愛犬フウマは、あちらこちらを連れ回された疲れとこの暑さでグロッキー状態だ。もう10歳になって老犬の仲間入りをしているので、そんな姿を見るとこれからはあまり無理をさせられないなと思ってしまう。
しばらく休んだ後、温泉に入りに行くことにした。
最近買った「北海道ホンモノの温泉」という本には、糠平の温泉が2軒ほど紹介されていた。その中の「湯本館」という温泉に行くことにする。
建物は古く、中に入るとひんやりした空気と独特の臭いが向かえてくれた。自慢の露天風呂は直ぐ下を渓流が流れ、太陽の光を浴びながら透明なお湯に身を浸していると体の疲れがスーッと抜けていくような気がする。
風呂から上がり、脱衣所で地元の老人と少しだけ話をした。
「ここも、昔はもっと賑やかだったんだよねー。」と言う老人の言葉が気になった。
私自身、ここでゆっくりと時間を過ごすのは初めてだったのだが、糠平の良さを改めて知ったような気がする。然別湖や層雲峡も確かに素晴らしい場所だけれど、じっくりと探してみればもっと素晴らしい観光資源がこの周辺には隠されていそうだ。
日の当たるテントの中にクーラーボックスを入れっぱなしだったので、中の氷がすっかり解けてしまっていた。
酒屋によってビールと氷を補給する。
外に停めてある車の屋根のカヌーを見て、酒屋のおじさんが「今年は水が多いからカヌーを出すのも楽でしょ。」と気さくに話しかけてくる。確かに、減水時のダム湖では水際までカヌーを降ろすのに一苦労するけれど、今回はそんな苦労が全くなかった。
テントサイトに戻り、白樺の木の下でゆっくりとした時間を過ごす。いつもせわしなく動き回る我が家のキャンプでは、こんなのは本当に久しぶりである。やっぱりキャンプは、このくらいの余裕を持って楽しみたいものだ。
さすがに週末だけあって、ポツポツとテントが増えてきた。
ここのカラスはとてもずる賢く、少しでも隙を見せれば直ぐに荷物をあさりに来る。新しく到着したキャンパーがサイトに荷物を置いてちょっと駐車場に戻ると、直ぐに寄ってきてその中から手当たり次第にものを引っ張り出すのだ。
炊事場へ行く程度の時間でも油断できない。
昨日はあれほど五月蠅かったへんなこった虫も、今日は何処へ行ったのか、まるで姿を見せない。蚊もいないしブヨもいない。我が家のサイトの直ぐ脇はジメジメした湿地のようになっているのに、この環境で蚊がほとんどいないというのは不思議である。
そこらを勝手に歩き回っていたフウマにも、ダニは全然ついていない。
そう言えば今朝、かみさんが「首のところに何かついていない?」と言うので見てみたら、見事にダニが噛みついていた。昨日の夕方にこちらに着いてから、ダニに取り憑かれそうな場所はほとんど歩いていないはずだ。考えられるのは、一ヶ月前に行ったチミケップキャンプ場からダニを連れ帰り、そのダニが一ヶ月もの間、かみさんのシュラフの中で人間が入ってくるのを待ちかまえていたと言うケースである。
その真偽は解らないが、今回のキャンプで虫に刺されたり喰われたりしたのは、結局これだけだった。
夕方、涼しくなってきたのでちょっとだけ周辺を歩いて見ることにする。その途中で、テントの外にゴミ袋を出したままだったのに気が付いた。
散歩から戻ると、我が家のテントの周辺は見事なまでにゴミが散乱していた。ティッシュの箱もボロボロである。こちらの不注意なのでしょうがないが、それにしてもたちの悪いカラスである。
日中に吹いていた爽やかな風がピタリと止んで、それと同時に再びへんなこった虫が現れ始めた。
時間が経つにつれてその数も増えてくる。なんだか、昨日の夕方よりも数が多いみたいだ。線香くさいアースの蚊取り線香を焚き、焚き火の煙と合わせてへんなこった虫を追い払おうと頑張ったが、ほとんど役に立たずその数は逆に増えてきているような気がする。
椅子に座る度に、そこにびっしりと張り付いたへんなこった虫を追い払わなければならないような状況だ。
今夜の夕食は回鍋肉と豚汁、その中にへんなこった虫が飛び込まないように気を使いながらの食事は、なかなかスリリングである。
相変わらず、上空ではギョギョジ鳥が賑やかに舞っている。
決して快適とは言い難い状況ではあるが、自然の中で行動しているのだから、たまにはこんなこともある。逆に、滅多にできないような体験ができて、快適ではないが楽しい夜になった。
明日の朝は、ギョギョジ鳥に無理矢理起こされるのが解っていたので、寝不足にならないように8時半には眠りについた。
朝の3時、ギョギョジ鳥の目覚まし時計で目が覚めた。
朝の時間を告げた後は、昨日の朝ほど賑やかに飛び回らなかったが、それでも一度目が覚めてしまうとなかなか眠れない。結局、この日も朝の4時に起きることになってしまった。
テントから出ると、夏を感じさせる青空が広がっていた。
顔を洗った後、直ぐに早朝カヌーに出かけることにした。今回はキャンプ場の近くからカヌーを出すことにする。近くとは言っても、カヌーを車で湖畔まで運ばなければならない。
湖畔の駐車場に車を停めて屋根からカヌーを降ろすと、その内側には気味悪いくらいのへんなこった虫が張り付いていた。暗くなると姿が見えなくなるので、何処に行ったのかと思っていたら、こんなところに隠れていたのだ。
駐車場からは人間の手でカヌーを運ばなければならないが、湖の水位が高いので比較的楽に水面に降ろすことができる。以前に、減水している時にこの辺の様子を見たことがあるが、その時の水面は遙か彼方に有ったような気がする。
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