去年に読んだ「北海道の森と湿原をあるく」という本に影響され、今年の新緑時期には是非チミケップ湖へ行ってみようと考えていた。
ここには過去、初夏と秋の2度訪れていたが、自分の気に入ったキャンプ場には季節を変えて訪れてみたいとの思いが強く、チミケップ湖に泊まることが今年のキャンプの最大の目標になっていたのである。
この程度のことが一年の最大の目標なんて、ちょっと寂しさを感じてしまうが、職場の環境も変わり、息子の大学受験を翌年に控えた親の身としては、ここら辺がちょうど良いところかもしれない。
この、シーズン最大のイベントのために、新しい職場に移ってから初めての休みを申請し、万全の体制を整える。
先週は道南の森町、そして今週は道東の津別町というハードな日程も何のその、新緑の美しい時期に合わせるためには少しくらい無理をしないと駄目なのだ。
それなのに、何で天の神様はこの程度のささやかな楽しみを邪魔してくれるのだろう。2泊3日のちょうど真ん中、土曜日は全道的に天気が崩れるという予報なのだ。
天気にあわせてキャンプの予定を変更するような余裕もないので、敢えて天気のことは考えないことにする。
金曜日の朝はワクワクして早く目が覚めた。
荷物のほとんどは、かみさんが前日に車に積み込んでいたので、早起きしても別にすることも無く、ウダウダと無駄な時間を過ごした。
それにしても、今日は朝からかみさんと二人で花粉症の症状がひどくなっている。シラカバ花粉のピークは過ぎたはずなのに、牧草の花粉が飛び始めたのだろうか。
花粉症の薬も切れていたので、近くの朝7時からやっている耳鼻科へ薬をもらいに行った。
ところが、そこの待合室はくしゃみをしたり鼻水をたらした人で大混雑。診察をして薬を受け取るのに1時間以上もかかってしまった。そうこうして、結局、札幌を出発したのは9時半である。
はやる気持ちを抑えながら、車のアクセルを踏み込む。昼食はコンビニ弁当で済ませ、清水町からは道東自動車道に乗った。いつものことだが、ここは本当に交通量の少ない高速道路である。清水から足寄までの km、対向車線を走る車とすれ違ったのは数えるくらいである。
片道1車線、制限速度70kmのとても高速道路とは呼べない道だが、せっかくなのでふつうの高速道路+αのスピードで利用させてもらった。
それでも1台、猛スピードで後ろから近づいてくる車があったので、ウインカーで合図して路肩に車を寄せ、気持ちよく追い抜かせてあげる。
北海道の道路を走るときは、譲り合いの精神が大切なのである。
そこから先も快調に車を飛ばし、チミケップ湖へ続く道の入り口までやってきた。
前日にチミケップ町の役場に問い合わせたところ、その道は工事のため通行止めで津別町側から入らなければならないとのことであった。そうなると、20kmの遠回りになってしまう。ところが、その入り口には通行止めの標示が無い。
恐る恐る途中まで入っていくと、「この先7kmで通行止め」の看板と、その場所の地図が示されていた。ところがその地図、こちら側の道路と津別町側から入る道路が合流する部分に丸印が付いているのである。
これではどちらの道路が通行止めなのか分からない。
その丸印が微妙に津別町側に寄っているような気がしたので、覚悟を決めてその道を進むことにした。
そこから先は細い砂利道、この道をまた引き返すとなるとうんざりしてしまうが、ヒヤヒヤしながら合流地点までたどり着くと、通行止めになっているのは津別町側だった。
この時は本当にホッとしたが、もしも津別町役場の担当者の話をそのまま信じていたら大変なことになるところだった。
そこから湖畔沿いの道路を、新緑の色づき具合を確認しながらゆっくりと進んでいくと、ようやくキャンプ場に到着。札幌を出てから5時間半、まあまあのペースである。
入り口には、以前に来たときは無かったプレハブ小屋が建っていた。
そこには仙人のような老人が寝泊まりしていると見聞録の掲示に書き込みがあったので、ここに来る前は「誰かホームレスでも住み着いているのだろうか?」なんて想像していたが、どうやらチミケップ湖の利用実態をそこで調査しているみたいだ。
車から降りると、そのプレハブ小屋の前に繋がれている2匹の犬が激しく吠えたてた。
2匹とも、はた万次郎の漫画に出てくるウッシーとそっくりな顔をした犬なので、思わず笑ってしまう。
まずは、テントとタープだけを車から降ろして、設営場所を探すことにする。探すといっても、他に誰も利用者はいなく、そうなれば湖畔沿いの一等地にテントを張るしかないので、迷わずに湖畔まで真っ直ぐ歩いていった。
ところが湖畔に立ってびっくりである。林の部分ではほとんど感じなかったのに、湖畔の付近では猛烈な風が吹き付けているのだ。
ちょうど、細長い湖の奥の方から風が吹いてくるので、山から吹き下ろす風が一つにまとまって、一気にその場所に吹き付けている感じだ。とてもテントを張れるような状況ではない。
呆然と立ちつくすかみさん。
「どうするー。」声をかけるが、その声も風の音に吹き消されてしまう。
湖畔はあきらめて他の場所を探すことにするが、このキャンプ場はそれほど整備された場所でもないので、平らな部分はわずかしかない。おまけに、ど真ん中に立派なトイレがデンと鎮座しているものだから、余計にサイト選びに支障が出てくる。
林間部分の様子を見に行ってビックリした。そこの林床には一面にニリンソウが花を咲かせ、まるで白い絨毯を敷いたような美しさである。
思わず、ここにテントをなんて考えたが、花を押しつぶしてテントを張るのも気が引けるし、そもそもそこの地面もかなりデコボコである。道路よりの林間部分には、一部分だけが芝で周りを花に囲まれたちょうど良いスペースがあったが、湖から離れるのは忍びないし、それに、ウッシー似のワンちゃんが吠えて煩いので、そこもあきらめる。
結局、少しでも湖に近く、少しでも風の影響を受けないという微妙な位置にテントを張ることにした。
テントの向きも、湖がなるべく正面に見えて、それでいて前室に風が吹き込まないという、これまた微妙な向きに設営する。
テントを張り終えて、残りの荷物を車から運ぶ。すべて運び終えるのに、二人で3往復くらいしなければならない。そして最後にカヌーを運んで完了である。
風の当たらない場所では、ブヨがまとわりついてくる。ブヨってやつは、荷物を運ぶのに両手が塞がっているときを狙って噛みついてくるので始末が悪い。
目の前で腕の上にとまられ、払いのけることもできずにオロオロしていると、その間にしっかりと血を吸われる。やっと手が空いて、思いっきり叩き潰してもすでに手遅れ。咬まれた後からはしっかりと血が流れ出している。
結局、荷物運搬中に二カ所ほどやられてしまった。
設営が終わってやっと一息、でも風が強いとなかなか落ち着くことができない。
今回は雨に備えて久しぶりにタープを持ってきていたので、それを利用して風よけを作ることにした。
最初にタープを張って、それからテントの位置を決めるのが普通だが、今回はその逆なので、どうも良い場所にタープが張れない。
とりあえずは、何とかタープを張り終えたが、それほど風よけの効果もなく、どう見ても一晩、風に耐えられるような張り方には見えない。無駄な抵抗は止めて、苦労して張ったタープだが片づけてしまった。
それでも夜中から雨が降り出すという予報が出ていたので、やっぱりタープは必要だろう。
そう考えて、テントの前の2本の立木を利用して、今度は風よけではなく雨よけのために再度タープを張ることにする。そうして、張り終わったタープを見てみるとどうも美しくない。美しく見えないタープの張り方はどこかに欠点があるものだ。
雨が降ったら、うまく流れ落ちないでタープの上に溜まってしまうかもしれない。そしてもっと心配なのは、立木を利用したので強風でタープが潰されることはないが、逆にタープの布が破れてしまう恐れがあることだった。
しばらく様子を見ていたが、再び張ったそのタープも、結局は片づけることにしたのである。
タープの張り方を研究するために、チミケップまで来たわけではない。気持ちを切り替えて、近くの散策路を歩いてみることにする。
ここの散策路は歩く人も少ないのか、以前より笹に覆われた部分が増えてきているような気がする。その笹をかき分けるようにフウマが歩いていくが、そんな様子を見ていると気が気ではない。
ここチミケップ湖はダニがやたらに多い場所なのである。
以前にここに泊まったときは、夫婦二人そろってダニに食いつかれたことがあり、つい先ほどもかみさんの靴下の上を這い上がってくるダニを潰したばかりなのだ。
案の定、散歩から戻ってきてフウマの体を調べたところ、10匹以上のダニがボロボロと見つかった。
ここのダニはやたらに大きい。こんなのに噛みつかれたらと思うとゾッとする。でも、そんなダニはすぐに見つけることができるが、小さなダニにはフウマの毛の奥深くに潜り込んでいるので、探し出すのにも一苦労だ。
テントや敷物の上にも、体長1mm以下の小さな虫が沢山這い上ってきていた。人間や動物に悪さをする虫ではなさそうだが、あまり気持ちの良いものではない。
そんな虫たちのことはなるべく気にしないようにして、周りの新緑の風景を楽しむ。
風はいっこうにやむ気配がない。憎たらしい風だが、焼き肉用の炭が、うちわで煽がなくても勝手に熾きてくれるのだけが救いである。
風が強すぎて焚き火もできないので、明日の朝、風が止んでいることを祈りながら早めに寝ることにする。
翌朝も相変わらず風が吹き続けていた。私はぐっすりと眠れたが、かみさんは風の音が気になってあまり眠れなかったようである。
夜中から雨が降り出し、朝起きる頃にはその雨も上がり・・・、なんて都合の良いことを考えていたが、現実はきびしく、朝食を食べ終わった頃から霧雨のような弱い雨が降り始めるという、何とも悲しい状況である。
おまけにコーヒーの粉を忘れてきたので、朝のコーヒータイムを楽しむこともできない。
体が冷えてきたので、テントの中に入ってシュラフに潜り込むと、気持ちよくてそのまま眠ってしまった。
1時間くらいで目が覚めたが、なかなかシュラフの中から抜け出せない。しばらく睡眠不足気味の状態が続いていたので、こんな時こそキャンプでゆっくりと体を休めた方が良さそうである。
いつもはせっかちなキャンプばかりしているので、シュラフの中でウダウダしながらそんな怠惰な時間を久しぶりに楽しんだ。
買い出しを兼ねて北見の町まで出てみることにする。
ついでに隣の端野町まで足を伸ばし、「のんたの湯」という公共温泉に入った。まだ早い時間だったので空いていて、のんびりと湯につかることができた。
北見の町はチミケップ付近よりも天気が悪く、本格的な雨が降っていた。そこからチミケップ湖方面の南の空を見ると、どんよりとした薄暗い空がその辺だけ明るくなって見えた。
気持ちも少し明るくなって、再びチミケップまで戻る。
砂利道の林道を走ってキャンプ場近くまで来たとき、かみさんが道路脇に熊の糞らしきものを発見。車をバックさせてよく見ると、熊の糞に間違いなかった。
熊のテリトリーの中で遊ばせてもらっていると言うことを、あらためて実感させられた。
こんな天気ならば、今日もキャンプ場は貸し切りだろう。そう思いながらキャンプ場まで戻ってくると、一組のファミリーがテントを設営中である。
なんて物好きなキャンパーだろう、でも青山農場でのこともあるし、もしかしたら知っている人かも。小さな女の子二人を連れたファミリーである。奥さんらしき女性と目があったので、軽く挨拶をして自分のテントまで戻ってきた。
かみさんは、すぐにそのキャンパーが誰であるか解ったみたいだ。最近は、他の人のホームページをよく見ているので、子供たちの顔も知っていたようである。
「丸太小屋通信」のkageさん一家だった。
kageさん一家とは、去年屈斜路湖でテントが隣同士になり、お互いに、もしや・・・と思いながら、結局そのまま分かれてしまっていたのだ。
一応は初対面と言うことになるが、ホームページ上の付き合いは長いので、以前からの知り合いのように話すことができる。
ホームページを長い間やっていると、これからもこんな出会いが増えてきそうである。
昼食のスパゲティを食べ終わる頃には雨もあがり、空も明るくなってきた。
そこで今回のキャンプで目的の一つにしていた、チミケップ湖の北西にあるトレイルを歩いてみることにする。
車でその入り口まで移動して、チミケップの森の中に足を踏み入れる。
いつもならば先頭を切って走り出すフウマが、なかなか前へ進もうとしない。何かを気にするように、時々立ち止まってはじっと森の奥を見つめているのだ。
入り口には熊出没の看板も立っていたし、林道で見た熊の糞のことが頭の中をよぎったが、それほど怖さは感じない。かみさんも、賀老高原の森の方がもっと怖かったわよね、なんて言っているが、ここが安全であるという何かの根拠があるわけでもないのだ。
熊除けの鈴の代わりに「こらっ!フウマ、そっちに行くな!」、「フウマ!早く来い!」、「こらー、変なものに体をなすりつけるな、フウマ!」、「この馬鹿フウマー!」、大きな声を張り上げながら森の中を進んだ。
途中で小さな小川や湿地帯が何カ所もある。地図で見ても、それほど大きな川が流れている訳でもなく、こんな小さな沢水が何本も周りの山々から流れ込んでチミケップ湖を満たしているのだろう。
雨に濡れた森が、その新緑の美しさをいっそう際だたせている。
所々に苔生した強大な倒木があるが、その上からは次代の植物たちが芽を伸ばし、生きている森の力強さを感じさせる。
林床のシダ類が特に目を引いた。自宅の庭にも山から掘ってきたシダ類を植えてあるくらい、私はシダが好きだったりする。侘び寂びを感じさせるその風情が何とも良いのである。
名も知らぬ花々がひっそりと咲いていて、テントに戻ってから図鑑で調べるために、その花をカメラに収める。
途中から、本来の散策路への分かれ道があるが、そちらは完全に草に覆われ廃道となっている。管理道路らしき道をそのまま進むが、この道ももう少し時間が立てば草に覆われて消えてなくなりそうな感じだ。
せっかくのこんな美しい森の中、散策路だけはもう少し整備しておいて欲しいものである。
やがてその道は、湖畔沿いに出てきた。
対岸のキャンプ場の新緑がとても美しく見える。新緑や紅葉の景色はキャンプ場からよりもこちら側からの方が、後ろの山をバックにして眺めが良いのだ。
湖畔沿いの道を進めば、そのまま湖を1周することができるはずだが、そこまで頑張って歩く気もなかったので、途中から引き返すことにする。
雲が切れて青空が見えるようになり、そして太陽の光が森の中に射し込んできた。淡い新緑の木々の葉が太陽の光に透き通り、先ほどまでとは全く違った森の風景が展開される。
行きと帰りで同じ道を歩いているのに、違う景色を楽しめるとはちょっと得した気分だった。
キャンプ場へ戻ると、これまで吹き続けていた風もようやく弱まってきていた。
ただ、風が弱まると今度は虫たちが集まり始める。ブヨが頭の回りを飛び回り鬱陶しいことこのうえない。あわてて全身に虫除けスプレーをかける。
そうして次はフウマのダニのチェックである。また、10匹以上のダニを発見。キャンプへ来る前日に、1回分で800円もするダニ除け剤を買って付けてきたのに、その効果なんて全くなさそうだ。
風が弱まってきたので、ようやく焚き火を楽しむことができる。
kageさんは、焚き火用の薪をすべて隣の林の中から調達してきたようだが、我が家は雨の予報が出ていたので、今回も自宅から薪を積んできていた。でも、この程度の雨ならば十分に現地調達だけで済ませられたかもしれない。
風が止むと、周りの森からは鳥たちの囀りも聞こえてくるようになり、これでようやく普通のキャンプが楽しめる。
我が家のテントの前にイラクサが沢山生えていた。藪歩きするときには嫌われる草だが、山菜の本には癖がなくて美味しいと書いてあるので、試しに少し採って食べてみることにした。
茹でて味噌和えにして食べたが、ほとんど味はしない。少しもそもそしたような食感で、特に美味しいものではない。
山菜図鑑に載っている多くの植物は、食べれば食べれないこともないと言う程度のものが大部分なのだろう。まあ、植物観察をするときは、その植物を食べてみると言うのも良い方法なのかもしれない。
夕食を食べ終えて、暗くなるまでにまだ時間がありそうなので、カヌーに乗ることにする。まだ少し風は吹いているが、カヌーを漕ぐのには支障のない程度の風である。
わざわざ札幌からカヌーを積んできて、一度もチミッケップ湖に漕ぎ出せなかったなんてことでは悲しすぎる。
小さな湖なので、湖を取り囲む山々もすぐ近くに感じることができて、なかなか楽しいカヌーフィールドである。これで、湖面の波が消え、鏡のような水面になってくれれば、素晴らしい風景が期待できそうだ。
カヌーの中央に乗っているフウマが、下が濡れているのを気にしている。あれ?カヌーに乗るときにそんなに水を入れちゃったかな?
それほど気にしないでしばらくカヌーを漕いでいたが、何となくその水が増えてきているみたいだ。
風もまた強くなってきたので、そこで切り上げて岸まで戻りカヌーの底を調べてみたら、やっぱり穴が開いていた。先週の遊楽部川を下った時に開いた穴のようだ。
今回はカヌーは諦めた方が良さそうである。
明日の朝に、チミケップ湖の女神が微笑んでくれるのを期待して、今日も早めに寝ることにする。
翌朝、テントから這い出たのは朝の5時過ぎ、4時頃から目は覚めていたのだがどうしてもシュラフの中で微睡んでしまう。これでは家にいるときと大して違わない時間だ。
テントでの寝心地が良すぎるというのも困ったものである。
湖を覆った朝霧は次第に薄くなり、その中からは周りの山々の新緑を撮し込んだ鏡のような湖面が現れ、山陰から射し込んできた朝日の光の先にはチミケップ湖の女神の姿が・・・。
そんな朝を期待していたのに、すでに女神の姿は無く、晴れ渡ったチミケップ湖の湖面には小さなさざ波が立ち始めていた。今の時期、太陽よりも早起きするのは至難の業である。
炊事場の冷たい水で顔を洗う。冷たすぎて、指先の感覚がなくなってくるくらいだ。これだけ冷たければ、ここの地下水の品質も一級品なのだろう。
その水で入れたコーヒーも、とても美味しく感じる。
最後にもう一度ということで湖にカヌーで漕ぎ出してはみたが、また風が強くなり、昨日よりも浸水する量が多くなってきたので、ちょっと沖に出ただけですぐにUターンして戻ってきた。
この後は、展望台まで登りチミケップ湖の姿を楽しんで帰るだけだ。
ダニ対策に足元を固め、防虫スプレーをたっぷりと吹きかけてキャンプ場を出発した。
入り口に繋がれたウッシー似の2匹の犬が、私たちが通るたびに吠えまくるのにはちょっと困ってしまう。とても人なつこい犬なのだが、やたらと吠える犬なのである。
今朝も朝早くから吠える声が聞こえていた。これからキャンパーが多くなる季節、トラブルにならないかちょっと心配である。
ウッシー似の犬たちは我が家のフウマにとても興味があるみたいだが、フウマの方はまるで素っ気なく、嫌そうな顔をしながらその横を通り過ぎる。
いつもは人のいないキャンプ場で我が物顔に振る舞っているフウマだが、ここのキャンプ場では、そこを住処としている犬がいるものだから、何となく勝手が違うようである。
キャンプ場からしばらくは、踏み分け道のような細い散策路が続いている。
途中からは林道のような場所に出たが、一般の車は入れないようになっているので、気持ちよく歩くことができる。この林道の入り口に車を停めて、そこから登った方が歩く距離はかなり少なくてすむ。
ブヨがまた煩くなってきたので今度はハッカ油を使ってみた。すると、あんなにしつこかったブヨが全然近づかなくなった。でも、その効果も長くは続かない。
立ち止まるとブヨがワッと集まってくるので、一生懸命歩き続けなければならない。
やがて、展望台らしき開けた場所が坂の上に見えてきた。それまでの道のりは、周りを樹木に囲まれ展望の利く場所は全く無かったので、期待も高まる。
一気に坂を駆け上がると、思わず「オオーッ」と声を上げてしまうような展望が広がっていた。遮るものが何もなく、そのまま眼下に新緑の山々に包まれた美しいチミケップ湖の姿が広がっているのである。
でも、よく本に載っている湖の姿とはちょっと違っている。あれはどこから眺めた姿なのだろう、そう考えながらもう少し歩くと、「オッ、オオーッ」再び感動の声をあげてしまった。
森と湖、単純なこの二つの言葉でしか表現のできない光景である。
チミケップホテルの姿も見えてしまうのがたまにきずだが、この風景にとけ込んだ外観なのでそれほど気にはならない。
キャンプ場から歩いても30分程度、チミケップ湖まで来たのなら、是非この展望台まで登ってみることをお勧めする。
キャンプ場まで戻る頃にはかなり気温も上がってきていた。汗をかきながら撤収開始、もう夏のキャンプの雰囲気を感じてしまう。kageさん一家も、同じようなタイミングで撤収を完了した。
最後の別れの挨拶をする頃には、体の周りをブンブンとブヨが飛び回り、別れの挨拶で手を振っているのか、頭の周りのブヨを追い払っているのか、何がなんだか解らない状況である。
風にダニに、そして最後にはブヨにボコボコにやられまくって、チミケップキャンプは終わりを告げたのである。
帰りは旭川周りで、札幌まで帰った。
チミケップ湖から訓子府へ抜ける林道は新緑が素晴らしく綺麗だ。紅葉の時期もこの道はお勧めである。
途中の大雪湖では、薄緑色の湖面に淡い新緑、遠くには残雪の残る山並みも望め、何ともいえない美しさだった。
昼食は国道40号の比布トンネル手前にある紙風船という名前のファミリーレストランに入る。最近は、ここが我が家の定番の昼食どころになっている。メニューも如何にもファミリーレストランといった感じだが、それぞれが結構美味しくて、キャンプ帰りに寄る店としてはちょうど良い。
それまでは、愛別町のTONNY'Sというレストランがお気に入りだったのだが、残念ながら今年になって閉店してしまったようである。
家に帰ってきた翌日、突然フウマの様子がおかしくなった。右前足が痛いのか、足を下につくことができずにまともに歩けない状態だ。
骨が折れたか、関節が外れたかでもしたのかと思ったが、そうではないようだ。翌朝になると、少しは歩けるようになっていたが、この調子では病院に連れて行った方が良さそうである。
その日、心配しながら会社から戻ってくると、かみさんがその原因を発見していた。何のことはない、足の後ろにダニが噛みついていただけの話であった。
それにしても、チミケップ湖のダニはやっぱり恐ろしいのである。
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