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辿り着いた安住の地エルム森林キャンプ

エルム森林公園キャンプ場(10月5日〜6日)

 今日のキャンプ予定地は暑寒別野営場だ。
 昨日泊まった富士見ヶ丘公園キャンプ場を含めて、最近は3カ所連続で初物キャンプ場に泊まっている。
 この勢いで、4カ所目も初めて泊まるキャンプ場へ行ってみよう、そう考えた訳である。
 北海道キャンピングガイドの写真を見ても私好みのロケーション、それに加えてかなり山間部に入った場所にあるので、紅葉も遠別よりは期待できそうだ。
 ただ、問題はこの雨である。
 遠別を出た頃は素晴らしい青空が広がっていたのに、とうとう留萌で雨雲の中に突入してしまった。
 お先真っ暗という気分だったが、とりあえず増毛まで行って秋味まつりのサケ汁でもすすりながら、今後の身の振り方でも考えようということにした。
 増毛に着く頃には雨も上がり、海上を覆っていた薄暗い雲にも所々に切れ目ができて、そこからは青い空ものぞいていた。
 天気は回復傾向にあるみたいだ。
 かろうじて空いていた駐車場に車を止めて、そこから暑寒公園のイベント会場に向かう。
 ここの公園の中には増毛リバーサイドオートキャンプ場があるが、そこは完全に閉鎖されてイベント会場に変わっているようだ。
 会場から戻ってくる人達は皆、大きなサケの入った袋を抱えている。我が家の場合、そんなサケには興味を示さず、目指すはサケ汁ただ一つ。
 会場に着いてキョロキョロと辺りを見回したが、サケ汁のサービスをやっていそうな場所は何処にもない。
 実は、サケ汁のサービスをやっていると聞いた訳でもなく、勝手にそんなのがあるはずだと思いこんでいただけなのである。
 ふと入り口付近のテントを見やると、空っぽの巨大な鍋が二つ転がっていた。その回りには無数のプラスチック製どんぶりが、ゴミとなって積み上げられている。
 「ムムムッ、やっぱりやってたんだー。」
 昼過ぎに到着して無料のサケ汁に有り付こうなんて、かなり甘い考えだったようである。
 しょうがないので、別の売店でおにぎりとアルミホイルにくるんで焼いたサケのちゃんちゃん焼きを買って、会場内のベンチで食べることにする。
 このちゃんちゃん焼きがとても美味しい。でも1個400円は高すぎるなー、なんて言いながらちゃんちゃん焼きを箸でつついていると、雨がポツリと額に当たった。
 空を見上げると、再び真っ黒な雲が海の方から広がりつつあった。慌てて駐車場まで戻り、車の中でそれを食べることにした。
 この雨、しばらくは止みそうにない。増毛町内をあてもなく車で流しながら思案に暮れていた。
 とりあえずは目的地まで行ってみるしか無さそうだ。
 途中の道路沿いにはリンゴなどの直売所が沢山並んでいて、余市のフルーツ街道を走っているような気分だ。増毛が果樹の産地だとは知らなかった。
 たまたま目にとまった店に入ってリンゴを買ったが、札幌のスーパーの方が値段が安そうな感じだ。こんな場所ではその雰囲気を買うものなのだろう。
 キャンプ場に近づくに従って紅葉もその鮮やかさを増し、いつの間にか雨も止んで再び青空が見えてきた。
 暑寒荘の山小屋の駐車場に着くと、ちょうど一組の登山者が降りてきたところだ。雲の切れ間から見える山は暑寒別岳なのだろうか、真っ白に冠雪しているのには驚いた。
 さて、テントサイトは何処になるんだろう?
 キャンピングガイドの見取り図と現地の様子を照らし合わせる。
 サイトは山小屋の少し隣・・・、んっ?、この坂の上!
 車から降りてその坂を登り少し奥に進むと、見覚えのある景色が現れた。この木がガイドブックの写真に写っていたものかな。
 雰囲気はまずまずだが、水はけが悪くて芝生の上に水が浮いている状態だ。それに、車を無理矢理坂の上まで回したとしても、そこからの距離も結構ある。
 天気が良ければ荷物を運ぶのにはそれほど苦にならない距離だが、何時雨が降り出すか解らない状況ではちょっと厳しい。結局、ここでのキャンプは断念することにした。
暑寒別の森 川沿いに散策路があったのでそこを少し歩いてみたが、とても良い森だ。草に覆われた砂利道の上にテントを張ろうかとも考えたが、さすがにそこまでしてキャンプをするのも気が引ける。
 駐車場に戻ると、また数人の登山者が下山してきた。ここはやっぱり登山者向けののキャンプ場と言うことなのだろう。
 しばし車の中で次の移動先を考えた。頭の中にはこのまま札幌まで戻ろうかという弱気な気持ちも浮かんで来る。
 しかし、かみさんは帰ろうなんてこれっぽっちも考えていないみたいだ。
 「また、昨日の場所まで戻っても良いんじゃない。」
 最初は冗談で言っているのかと思ったが、半分本気みたいだ。
 さすがに、同じ道を100km後戻りする気にもなれず、まだ私が迷い続けていると、その間にキャンプ場ガイドから次の候補地を見つけ出していた。
 それは留萌市の神居岩グリーンスポーツ公園キャンプ場。ここは確か、見聞録のBBSの中で最近紹介されていたキャンプ場である。
 こんな時でないと、一生利用する事が無さそうなキャンプ場だ。
 面白そうなので、直ぐに留萌へ向けて車を走らせた。
 留萌から北には青空も広がっていたが、海の沖の方には大きな雲がわき上がってきている。やっぱり天気は下り坂に向かいつつあるようだ。
 神居岩の公園に到着、入り口付近はパークゴルフ場になっていて、ここでも多くの人がプレーしている。
 で、キャンプサイトは何処?それらしい場所は何処にも見あたらない。
 途中に細い坂道があったので、そこを車で上っていくと小さな看板を発見。どうやらその付近がテントサイトらしい。
 でも・・・。
 どう見てもキャンプ場と言った感じがしない。公園の一角に、野外卓が一つとブロックを積んだ小さな野外炉があるだけ。斜面を下りた場所には一応炊事場もあり、それがかろうじてキャンプ場としての体裁を保っている。
 ダメだこりゃ、あっさりとそこでのキャンプを諦めて次のキャンプ地を探すことにした。
 こうなってしまったら、素直にお気に入りのキャンプ場へ向かった方が良さそうだ。時間はもう午後3時、これだけ苦労して変なキャンプ場に泊まるのも馬鹿らしい。
 留萌の近くでお気に入りのキャンプ場と言ったら、朱鞠内湖かエルム森林くらいだ。翌日は昼前に札幌まで戻りたいので、エルム森林に目的地を定めた。
 留萌の近くと言っても、そこまでは80kmくらいはある。何とか暗くなる前にはテントを張りたいので、思いきりアクセルを踏み込んだ。

 初物のキャンプ場に挑戦する時は必ずリスクが生じる。
 どんなキャンプ場でも、テントさえ設営してしまえばそれなりに落ち着けるものだ。だが、様々な理由でどうしてもテントを張る気になれないようなキャンプ場もあったりする。
 苦労してたどり着いたキャンプ場がそんな場所だったりしたら、予定を変更して次のキャンプ地を探すことになるのだが、そんな時にかぎって、なかなか次のキャンプ地が見つからなかったりする。
 確か数年前にも、キャンプする場所が無くて途方に暮れながらこの付近をグルグルと走り回った事があった。
 最初からお気に入りのキャンプ場に向かえばこんな目に遭わないことは解っているが、まだまだ未開のキャンプ場が北海道内には沢山残されている。その中にはきっと、びっくりするような素敵なキャンプ場もあるはずだ。
 そう考えると、リスクは承知で新しいキャンプ場を開拓したくなってしまうのだ。
 普通の夫婦だったら、こんな事をしていたら次第に車内に冷たい空気が漂ってきそうなものだが、幸い我が家の場合、かみさんが理解があるのでこんな行為を攻められることもない。
 理解があると言うよりも、毎度の事なので馴れきってしまっているのだろう。
 こんな事もキャンプの楽しみの一つなのかもしれない。
 なんて格好の良いことを言っても、実際に車を走らせている時は、「何をバカなことやってるんだ、もういい加減にこんな事は止めにしたい」とかなり落ち込んでいるのだが。

 内陸に向かって車を走らせると、ウソのような青空が広がっていた。
 ラジオからは、「今日は全道的に晴れ間が広がっています」なんてアナウンサーの声が流れてくる。何のことはない、我が家だけが雨雲の下をグルグルと走っていただけのようである。
 それでも、我が家が進む先には何だか怪しげな雲が浮かんでいた。
 キャンプ場の近くまで来ても、幸い雨は降っていなかったが、これから向かう先、エルム森林公園がある山の上にだけ低い雲がかかっている。
 そこの入り口にあるエルム高原家族旅行村のテントサイトをちらりと眺めたが、芝生のサイトには水たまりが沢山できていた。ここでもやっぱり結構な雨が降っていたようである。
 細い山道を一気に駆け上る。
 やっとキャンプ場までたどり着いたら、そこは濃い霧に包まれていた。
 雨が降っていないだけマシだなー。そう思いながらキャンプ場への入り口に目をやると、そこには信じられない光景が!!
 ガーン!、何と入り口ゲートに鎖が掛かっているのだ。
 近くにいた管理人らしきおじさんに、恐る恐る「す、すいません、キャンプ場はもう閉鎖しちゃったんですか・・・」と聞いてみた。
 するとそのおじさん、ニコッと笑って「いや、まだやってますよ。良かったねー、もう少しで私も帰るところだったのに。」
 地獄の縁がそこまで迫っていたのに、神様に助けられたような気がした。
 その鎖は、キノコ採りの車が勝手に入らないように掛けているとの事だった。
 とても感じの良い管理人さんで、受付をしながら色々と話しをした。
 「昨日はとても良い天気で、キャンプしていた方も満足されたようですよ。」
 ムムムッ、そんな話し聞きたくないよー。

我が家のサイト 勝手知ったる奥の芝生サイトに車を乗り入れる。
 紅葉がとっても良い感じだ。
 ワーイ、何処にテントを張ろう。それまでの苦労が一気に吹き飛んで、心がウキウキしているのが自分でもよく解る。
 キャンプ場へ着いてテントを設営する場所を探す時の楽しさ、その楽しさが大きいほど良いキャンプ場だと言える。
 でも、それほど場内をゆっくりと見て回るほど時間の余裕もないので、適当なところで妥協して猛スピードでテントを設営した。
 時間は5時前だったが、辺りはかなり暗くなってきていた。
 ふと頭上を見上げると、サイト横の大きな木がテントの方に傾いていて、ちょうど真上に太い枯れ枝が張り出していた。
 ちょっと気になったが、今日は風も吹かないだろうからまあ良いか。
 美笛野営場で倒木による死亡事故が有ったばかりだというのに、意識の低いキャンパーで全く困ったものである。
 設営が終わると直ぐに今日の夕食キムチ鍋の準備だ。遠別の道の駅で買ってきたボリボリを最後に入れる。
 本当ならば遠別のキャンプ場でキノコを収穫して、それを豪快に鍋に放り込みたいところだったが、やっぱり命が大事である。150円のボリボリで我慢しよう。
楽しい焚き火 そして、夕食が終わると直ぐに焚き火に火を付ける。キャンプに来たと言うよりも焚き火をやりに来たようなものである。
 これでようやく心から落ち着くことができた。苦労の末に、やっと安住の地にたどり着いた感じだ。
 回りは闇に包まれ、耳に入るのはパチパチという焚き火の音だけ。
 何だかんだ言って、結局我が家にとっての良いキャンプ場の条件とは、静かに焚き火が楽しめる場所、ただそれだけのような気がする。
 闇の奥からフクロウの鳴き声が響いてきた。
 次第に雲も晴れて、樹木の枝越しに火星の赤い光が瞬いている。カシオペア座もくっきりと姿を現した。
 雨上がりの夜空は空気も澄んで、月明かりにじゃまされなければ素晴らしい星空が楽しめそうだ。
 突然、遠くで雷が鳴っているような音が聞こえた。
 ゲゲッ、やっぱりそう言うことか・・・。
 この場所で雷が鳴ったり突風が吹いたりしたら、マジで危険な状況になりそうだ。いざという時には車の中に直ぐに逃げ込めるような準備をして、眠りにつくことにした。

 夜中に一度目が覚めた。上空は少し風があるのだろうか、木々がざわめく音が聞こえる。
 この程度の風ならば、頭上の枯れ枝が落下してくることは無いだろう。再び眠りについた。
 かみさんが起きる音で目が覚めた。まだ眠たいなーと目をこすりながら、私も一緒に起きることにする。
 かみさんは、風や雷が心配であまり眠れなかったようである。美笛の事故が頭にあるので、少し敏感になっていたみたいだ。
 結局、雨も降らずに穏やかな朝を迎えた。
場内の紅葉 空は曇っているものの、西の空には晴れ間も見えてきている。
 直ぐに焚き火に火を付けて、何時も通りの幸せなキャンプ場の朝を満喫する。
 昨日はほとんど場内を歩いていないので、改めてゆっくりと付近を散歩した。ヤマモミジやブドウが真っ赤に色づいている。
 イタヤカエデはやや黄色みを帯びているくらいだ。紅葉の見頃には少し早い感じだが、それでも秋独特の落ち着いた景色が心を和ませてくれる。
 テントに戻り、昨夜のキムチ鍋の残りにうどんを入れて朝食にする。
 うどんを食べている間に、いつの間にか素晴らしい青空が広がり、キャンプ場全体に優しい朝の光が差し込んできた。
 朝食が終わったら直ぐに紅葉の写真を撮りに行こう。北の方から雲が広がってきているようなので、またすぐに曇ってしまいそうだ。
 すると突然、大きな雷の音がキャンプ場に響き渡った。
 おいおい、マジかよ。
 朝食が終わる頃には、空の半分が真っ黒な雲に覆われてしまった。急に晴れてまた曇って、この間わずか15分ぐらいの時間しかたっていない。
 ここでテントを濡らしてしまっては堪らない。直ぐに片付けに入った。
 この時の撤収の早さは、我が家のキャンプ史の中でも記録的なものだったと思う。
 もしもその様子を見ている人がいたとしたら、あっけにとられていただろう。それくらいの驚くべき早さだった。
 全ての荷物を車に積み終わった瞬間に、それを待っていたかのように雨が降り出してきた。
雨宿り 今日は10時くらいまではキャンプ場でのんびりと過ごせそうだ、そう考えていたのに、その時の時間はまだ朝の8時だった。
 直ぐに帰るのも悔しいので、高床式のバンガローの下で雨を避けながらしばらく時を過ごしていた。
 しかし次第に風も強まり、雨がその中まで吹き込んできたので、とうとう諦めて帰途につくことにした。
 その雨は帰る途中もずーっと降り続けていたが、札幌まで戻ってくると綺麗な青空が広がっていた。
 まるで私たちが行く場所だけを狙って雨が降っていたような今回のキャンプだった。

 湿ったシュラフでも干そうと考えていたら、また雨が降り始めた。
 もう、どうして・・・。


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