次の目的地は岩尾内湖白樺キャンプ場である。
妻は風連のキャンプ場が気に入ったようで、そのままもう1泊したかったようだが、せっかちな性格の私はなかなか一カ所に腰を落ち着けるということができない。
出発前は和寒の旭丘森林公園と風連の2カ所に泊まるつもりだったが、和寒がダメになったのでそれに代わるキャンプ場として、しばらく泊まっていない岩尾内湖へ行くことにしたのだ。
途中、下川町へ寄ってビールの買い出しをする。
町中へ入ったところで万里の長城の案内看板を見つけ、町民が参加し皆で石を積み上げたとの昔のニュースを思い出し、急遽寄り道することにした。
そこでまた見かけた「手延べうどん」ののぼり、そう言えば下川町の手延べうどんは美味しいって何処かで聞いたことがあるなー、急遽それをおみやげに購入することにする。
その売店で手に入れた下川町のパンフレットを見ていると、五味温泉という最近リニューアルされた温泉施設が有ることを知り、後で入りに来ることに決めた。
こんな風な行き当たりばったりの旅もまた楽しいものである。
下川町は初めて訪れる町であり、その中をちょっと通り過ぎただけだが、何となくほのぼのした感じがして気に入ってしまった。
それに家に帰ってから食べた手延べうどん、確かに美味しい。妻がもっと沢山買っておけば良かったと後悔しているくらいだ。
そこから岩尾内湖へは30分もかからない。
雪解け水で増水した川が道路沿いを流れ、山間の快適なワインディングロードを気持ちよく駆け抜ける。
カヤックで下ったら無茶苦茶にスリリングそうなその流れが気になって、時々路肩からはみ出しそうになってしまう。
爽やかな気分でキャンプ場に到着したが、駐車場に集まっている水上バイクを積んだ車を見て、すぐにその気分は萎えてしまった。
覚悟はしていたが、まだ水も冷たいGWでもやっぱり彼らはやって来るのだ。
その横を通ってキャンプ場に車を乗り入れ、そこでまたまた気持ちが萎えてしまった。
そこには夏場のキャンプ場を思わせるくらい、びっしりとテントが立ち並んでいた。
かろうじて空いている芝生のスペースに車を乗り入れ妻の様子をチラッと窺うと、彼女はそこにテントを張る気は全く無さそうである。
ここにテントを張るならば先ほどまでいたキャンプ場に戻った方がまだまし、「隣にテントを張っていたソロのキャンパーの人がびっくりするでしょうね」、そんな冗談とも本気とも解らないような会話をしながら、再び車を動かし混雑した場内を一回りして駐車場まで戻った。
駐車場横の白樺林は、ここのキャンプ場に初めて来たときにテントを張った場所だが、何故だかそこには一張りもテントが張られていない。
妻は「ここなら良いんじゃない」と言うが、これだけ混んでいるのにそこだけ誰もいないのが信じられない。テントの設営が禁止されているのかと、周りの看板を見てもそんなことは何処にも書いていない。
キャンプ場ガイドブックを見てみると、確かにここの白樺林にもテントマークが書いてある。
半信半疑のまま、そこにテントを張ることに決めた。
大混雑のサイトとこことの違いは、地面が芝か土かの違いだけである。
逆にこちらの方が、芝を気にせずに思いっきり焚き火を楽しむことができるのに。
大混雑のサイトの中にすすんでテントを張るキャンパーの気持ちが全く理解できなかったが、逆に私たちの方が、何で好き好んであんな場所にテントを張るのだろう、なんて思われているのかも知れない。
そんなに我が家の感覚って一般キャンパーとずれてきているのだろうか、真剣に悩みながらテントを張り終えた。
確かに、土の上に直接寝そべり泥まみれになっている悲惨な愛犬フウマの姿を見ると、芝生の方がちょっとはマシだよなーなんて思ってしまう。
昼食を済ませたが、駐車場には入れ替わり立ち替わり車が入ってくるし、湖上には水上バイクの騒音が響き渡っている。
とても落ち着いた時間を過ごせる雰囲気ではない。
カヌーを持ってきているキャンパーもいるみたいだが、ここ岩尾内湖はカヌーフィールドと言うよりモーターボートや水上バイクのフィールドとして考えた方が良さそうだ。
湖畔へボート等を降ろせるようにしっかりと施設が整備されているのだからしょうがない。
早々と下川町の温泉に入りに行くことにした。
キャンプ場からは20kmちょっとの距離だが、信号のない1本道で交通量もほとんど無い道路なので全く苦にはならない。
気持ちよく暖まってキャンプ場へ戻ってくると、テントの数が減っているのに驚いた。
考えてみれば、ここに着いたのは午前10時半頃、前日のキャンパーが殆どそのまま残っている時間帯だ。
この状況ならば、我が家も芝生のサイトにテントを張っていたかも知れない。
それでもやっぱり、豪勢に焚き火を楽しむのならばこちらのサイトだ。
山のように枯れ枝を積み上げて夜の焚き火タイムに備える。
今夜のメニューはパエリア、しかしフライパンの蓋を忘れて来たためになかなか米に火が通らず、妻は悪戦苦闘している。料理が上手く行かないので、珍しく落ち込んでいるようだ。
それでも、90分ほど時間をかけて何とか食べられるようになった。リゾット風パエリアになってしまったが、それでも十分に美味しい。
食事が終わるとすぐに焚き火に火を付ける。
昨日までの暖かさが嘘のように、今夜は冷え込みが強いみたいだ。
こんな夜を焚き火無しで過ごすのはちょっと辛い。
トイレに行くと、芝生サイトの方では若者グループが発電機を使っているみたいだ。ようやく静けさを取り戻した湖畔に発電機の音だけがやかましく響いている。
やっぱりこちらにテントを張らなくて正解だった。
我が家のサイトとはかなり離れているので、その騒音も伝わってこない。
何時も通りの静かなキャンプを楽しんで眠りにつくことができた。
その眠りも深夜1時頃に、1台のバイクの騒音で破られてしまった。
駐車場内を走り回った後直ぐに出ていったようなのでホッとするが、遠ざかっていったエンジン音がまた次第に近づいてくる。その繰り返しだ。
どうやら湖畔沿いの道路を何回も行き来して楽しんでいるみたいだ。
ちくしょー、何処かで事故りやがれ、毒づきながら何とか再び眠りにつくことができた。
翌朝、冷え込みも強まり、場内の水芭蕉が咲いている池の水にうっすらと氷が張っていた。
キャンプの朝はこれくらい冷え込んだ方が気持ちもキリッと引き締まる。
そんな寒さの中、焚き火にあたりながら飲む朝のコーヒーの味は格別だ。
久しぶりの2泊キャンプ、後半部分はちょっとケチがついたが、それでも十分に充実した時を味わうことができた三日間だった。
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