トップページ > キャンプ > キャンプ日記 > 2002年キャンプ日記

夏は何処へ、支笏湖キャンプ

美笛キャンプ場(8月4日〜5日)

 7月の北海道はジメジメとして内地の梅雨のような天気が続いていた。
 8月になればカラッと晴れ上がり夏らしい天気になるかと期待していたが、どうやらしばらくパッとしない天気が続きそうだった。
 次のキャンプの予定もなく悶々とした気分で仕事に精を出していると、8月に入った最初の日、札幌の気温は急に上昇し今年初めて30℃を越えた。
 30℃の気温は、珍しく仕事に向かって真っ直ぐ前を向いていた私の頭を簡単にぐるりとひねり、180度向きを変えてしまった。
 「ダメだ、ダメだ、こんな事では何もしないうちに夏が通り過ぎてしまう。」
 ギラギラと照りつける太陽、火傷をするくらいに熱せられた砂浜、ムッとするようなサンオイルの臭い、それが僕の夏のイメージだ。
 ところがここ数年、夏の海へ行くことが無くなってしまった。おまけに今年の冬はスキーへも行っていない。
 冬にスキーを滑らないで、夏に海で泳がなければ、人生ほとんど終わってしまったようなものである。
 後はお茶をすすりながら過ぎ去った昔の思い出に浸り、静かにお迎えがやってくるのを待つだけ。
 「いかん、いかん、このような危機的な人生の沈滞ムードを振り払うためには、仕事ばかりしていたらダメだ。」
 その前の週に1日ずる休みをしたばかりだというのに、訳の分からない理由により、再び翌週の月曜日に休みを取ることに決めてしまった。

 そうは言っても、海へ行くほどの元気もないので、少しでも夏気分を味わうために湖畔の美笛キャンプ場へ出かけることにした。
 突然決めたことなので、妻の休みが取れる訳もなく、久しぶりのソロキャンプだ。
 妻も、今時期の混雑した美笛には何も魅力を感じないらしく、行ってらっしゃいと快く送り出してくれた。
 ただ、愛犬フウマだけは、キャンプ道具を車に積み込んでいるのに、自分がその車に乗せてもらえないと言う現実が信じられないようであった。
 ソロキャンプとは言っても、美笛に行けば知り合いの人もいるし、去年歴舟川を一緒に下ったKさんも、日曜日の午後にフェリーで苫小牧に到着しそのまま美笛にやってくる事になっていた。
 人見知りをするフウマはそんなところに連れていかない方が良いだろうとの親心、いや、飼い主心のつもりだったが、置いて行かれる本人にとっては、かなり憤慨だったようである。

日曜日、希望通りの真夏の太陽がギラギラと照りつける中、午前中は息子の弓道の大会を小樽まで見学に行き、週末のキャンパーが帰りはじめる頃にキャンプ場へ到着できるよう午後2時に札幌を出発した。
 高速道路を千歳に近づくにしたがって、妖しげな雲が上空に広がり始めた。車の温度計を見ると20℃まで下がっている。
 「エッ?、エッ?、どうして?、信じられなーい!」
 真夏のキャンプ、汗だくになってテントを張り終え、そのまま目の前の綺麗な湖に向かってザッブーン、の予定だったのに・・・。
 この気温でそんなことをしたら、いっぺんに風邪をひいてしまいそうだ。
 対向車線からは、屋根にキャンプ道具を積み上げた車やトレーラーを引っ張った車が次々と支笏湖方向から戻って来る。
 まあ、夏のキャンプは諦めて、のんびりとした水辺のキャンプを楽しむことにしよう。

ワカサギテント キャンプ場に到着すると、この時期ほとんど美笛に住み着くような感じでキャンプをしているSさんが出迎えてくれた。
 今回は一人用の小さなテントなので、水際の一等地にでもひっそりと設営しよう、なんて考えていたのだが、その考えは甘かった。
 夏休みシーズンだけあって、湖畔にはびっしりとテントが立ち並び、小さなテントを建てられるような隙間も空いていないのだ。
 Sさんが、大型タープの周りに三つのテントを設営していて、好きなやつを使って良いよと言うことなので、その中の一つを借りることにした。
 それは冬のワカサギ釣り用テントだったので、テントの中は地面がむき出しである。しかしそこにSさんがキャンプ用ベッドまで用意してくれたので、ワカサギテントがちょっとワイルドで快適な居住空間に変わってしまった。
 おかげで設営の手間が全くかからず、車からイスを降ろしただけで、そのままビールを飲み始める。
 キャンプ場へ到着し、テントを設営した後のビールはめちゃくちゃに美味しいものだが、さすがに今回はちょっと拍子抜けしたビールの味だった。

カヤックを漕ぐ姿 キャンプ場の気温も20℃そこそこである。それでも家族連れが水着になって、湖の中で遊んでいる。
 内地の人にとっては、こんな気温で水の中で遊ぶなんて信じられないかも知れないが、北海道の人間は短い夏を楽しむためには気温なんていちいち気にしないのだ。
 冬の沖縄でも、海の中で泳いでいるのは北海道から来た観光客だけである、という話も聞いたことがある。
 私も短パン半袖姿でカヌーで遊ぶことにした。
 自分のカヌーも持ってきていたが、今回はSさんにカヤックを預けたままにしている人がいたので、そのカヤックを借してもらう。
 今回のキャンプの密かな目的は、そのカヤックでエスキモーロールの練習をすることだったのだ。
 カヤックに乗るのはこれが初めての経験である。Sさんにサポートしてもらいながらカヤックに乗り込み、恐る恐る湖に漕ぎ出した。
 慣れないダブルパドルでスイスイスーイと進んでいくと、あれれ、突然カヤックが回転を始める。何回やっても同じ結果だ。
 ロールの練習の前に、まず真っ直ぐ進むことから始めなければならないようだ。
 気温も低いことだし、ロールの習得は来年の夏まで延期することにしよう。

テントサイトの様子 7時過ぎに、Kさんがバイクで到着した。
 毎年、ファミリーで北海道にやってくるKさんだが、子供達も大きくなり今年はとうとうソロライダーに変わってしまった。
 哀愁を感じさせるおじさんソロライダーかと思いきや、意外と生き生きしているみたいだ。何だかとっても羨ましい。
 Kさんとは、ここ3年連続で一緒に川下りを楽しんでいて、私のカヌーの先生みたいな存在だ。
 日中に私が悪戦苦闘して乗っていたカヌーが1台あるので、急遽翌日、Sさんと3人で千歳川の川下りをする事に決まってしまった。
 真夏の水辺のキャンプを楽しむという最初の目的は脆くも崩れ去ったが、思わぬおまけができて急に明日が楽しみになってきた。
 前日の土曜日は場内が花火の煙で霞んでしまうくらいに賑やかだったという話だが、この日の夜は意外なほど静かだった。
 気が付くと、聞こえるのは私たちの話し声くらいになってしまっていた。
 ワカサギテントに潜り込み、気持ちの良い眠りについた。

 翌日もどんよりとした曇り空だった。
 でも、そんな空も気にならないくらい、頭の中は夏キャンプからカヌーキャンプに切り替わってしまっていた。
 昨日は乗りこなせなかったカヤックも何とか真っ直ぐ進むようになった。
 でも、ロールの練習はやっぱり気温が30℃を越えるような日にやることにしよう。
 カナディアンの漕ぎ方もたっぷりとKさんから指導を受け、いよいよ午後からは千歳川の川下りだ。


戻る   ページTOPへ