今回はカヌークラブの朱太川下りに仲間入りさせてもらうことになり、キャンプ場はそのクラブのメンバーが泊まる蘭越町のリンリン公園キャンプ場に最初から決まっていた。
何時もは散々頭を悩ますことになるキャンプ場選びの手間も今回は無し、決められたとおりに行動するというのもたまには良いものだ。
でも、りんりん公園キャンプ場ってどんな所なんだろう、公園って名前がつくキャンプ場にあまり良いイメージは持っていない。せめて「りんりん森林公園」くらいの名前ならば、ちょっとは期待できそうなのだが。
それに蘭越町自体、私にとっては一つの盲点、周りの地区はこれまでに何回も訪れているが、私のドライビング地図の中でこの区域だけエアーポケットのように空いてしまっていた。
全く想像が付かないキャンプ場なのである。
とにかく今回は、我が家の何時ものキャンプスタイルからはかけ離れたキャンプになりそうだが、未知のキャンプ場訪問と未知の川の川下りということで、何だかとっても楽しみだ。
しかし、天気予報は両日ともあまりパッとしたものでは無かった。
札幌を出発しても、空はどんよりとした雲に覆われ、何だか気持ちも盛り上がってこない。
同じ曇り空でも、雨上がりの曇り空は何となく希望に満ちているが、このような晴れる気配も感じられないどんよりとした空は、本当に気持ちが滅入ってきてしまう。
途中からは小雨も振りだしてきた。
ところが、この雨が空の雲を刺激してくれたのか、どんよりとした雲り空に所々雲の切れ目が見え始めた。
そして目的地の上空は、真っ黒な雨雲とは対照的な目が醒めるような真っ青な空が広がってきたのである。
キャンプ場に到着したときは、ようやく何時もの楽しいキャンプ気分に戻れていた。
駐車場には屋根にカヌーを積んだ車がずらーっと勢ぞろいしていて、圧倒されてしまう。
その割にはキャンプ場内にテントの数が少ない、聞いてみたところほとんどの人は車の中で寝るのだそうだ。
キャンプのついでにカヌーを楽しむといった私のようなのんびりパドラーとは、基本的に行動様式が違うみたいである。
とりあえずは自分のテントサイトを確保することにしたが、周りを林に囲まれ思いのほか落ち着いた雰囲気のキャンプ場だ。
キャンプ場には全然期待していなかったので、ちょっと儲けた気分になって車から荷物を降ろそうとしたその時、電柱にくくり付けられた手書きの注意看板が目にとまった。
注意書きの前半部分はごく一般的なものだが、その最後に書かれている内容に唖然とさせられた。
「ペットを連れている場合はテントを撤去してもらいます」
普通のキャンプ場ではここまでは書かない、もしも犬を連れているのが見つかったら、「この看板に書いてあることが解らないのかぁ、今すぐ荷物をまとめてさっさとここから出て行きやがれー」と怒鳴りつけられるのだろうか。
単独キャンプならば場所を変えることも考えるが、今回ばかりはそうもいかない。
時間は午後4時ちょっと前である。5時を過ぎれば管理人も居なくなるはずだ。何とかそれまで見つからずに済めば後は大丈夫だろう。という結論に達した。
テントを張り終わっても、全然気持ちが落ち着かない。全くこんなキャンプは勘弁してもらいたい。
それでも無事に5時を向かえ、ほっとして夕食の準備にとりかかった。周りの林からは色々な鳥のさえずりが響いてきて、結構居心地が良い。
ようやくいつのも我が家のキャンプシーンに戻ることができた。
と、そのときである。全くの不意を付いて管理人が見回りにやってきた。
料金を払ったかの確認だったので、テントに付けた大きな札を見せて、「はい、払ってますよー」、それで済むかと思ったが他にも色々と話してくる。
必死になって体の影に愛犬を隠していた妻が、これは隠しきれないと悟ったのか、「ご、ごめんなさい、実は犬を連れているのです。」
管理人「エッ、エエッ、受付で何も言われませんでしたか」
妻「は、はい、受付では何も言われなくて、テントを張り終わってからこの看板に気が付いたんですー。」
私「そ、そうなんです。今日はカヌーのグループと一緒なので、どうしようもなくて。」
妻「そうです、夜は車で寝かせますし、朝もすぐに居なくなりますから、何とか許してください。」
私「お願いします、一晩だけ何とか泊めてください」
妻「お願いします、お願いします。」
管理人「うーん、それじゃあ仕方が無いですね。」
妻「あ、ありがとうございますー。」
妻の一生懸命なお願いにより、何とか許可は下りたが、キャンプ場に泊まる為にこれほど苦労したのは初めてだ。
ここのキャンプ場は他にもあちこちに「芝生にバイクや車を入れるな」等と書いた看板が立てられている。
キャンプ場といえども客商売である。普通の感覚ならばこんな内容にはならないはずだ。如何にも、泊まらせてやってるんだから言う事を聞け、といった態度だ。
私がキャンプ場を利用するときは泊まらせてもらうという気持ちでいるし、キャンプ場側にしても泊まっていただくというのが当然の考えだろう。
お互いがそんな気持ちでいさえすれば、何時でも何処でも気持ちの良いキャンプが出来るはずである。
数多いキャンパーの中には、泊まってやってるんだから何をしても勝手だろう、という心無い人間がいる事も確かであるが、せめてキャンプ場側には泊まっていただいているという気持ちだけは持ち続けてもらいたいものだ。
色々と書いてはいるが、事情を察して寛大な取り扱いをしてくれた優しいお兄さんがいて、周りを林に囲まれ野鳥の声が良く響くリンリン公園キャンプ場、なかなかお勧めの場所である。
食後はカヌークラブの宴会の輪に入れてもらい、気持ち良く酔うことができた。
ただ、私の場合、大勢で飲むとついつい自分の定量以上を飲んでしまうきらいがあり、翌朝、せっかくの小鳥のコーラスで目覚めることができたのに、頭がガンガンして、とっても不快な目覚めだったのが残念である。
川下りに備えて早めにテントを撤収したが、おかげでそのすぐ後に降り出した雨にテントを濡らされることは無かった。
今年のキャンプでは最初こそ天気に恵まれたが、その後は何時も雨に降られているみたいだ。
いよいよ来月に迫った礼文島キャンプの時だけは何とか晴れて欲しいな〜。
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