札幌では八重桜も散り、早くもライラックが満開、早くも初夏の装いとなってきた。
キャンプ場が一番美しくなる新緑の時期、今週を逃すと北か東の外れまで出かけないと、素晴らしい光景に出会えなくなってしまう。
そこで、春の最後のキャンプを楽しむ場所に選んだのはエルム森林公園キャンプ場である。
ここは2000年の秋に訪れて、最高の時間を過ごすことができた場所だ。夏と秋には泊まったことがあるが、春はまだ未体験である。
秋の風景が素晴らしい場所は春の風景も美しい、その逆もまたしかりだ。
春と秋に泊まってこそ、そのキャンプ場の魅力を知ることができる、というのが私の持論である。
できれば、1週前の方が新緑を楽しむには良かったのかもしれないが、如何せん、キャンプ場がオープンしていないのではどうしようもない。
天気は曇り、翌日は雨の予報も出ていたが中止する気は全くなし、強風が吹く札幌を出発した。
北に向かうほど風は弱まると考えていたが、目的地が近づいても相変わらず木々の梢は大きく揺れている。
キャンプ場へ続く最後の細い砂利道を登っていくと、いつもは車など殆ど走っていないのに、やたらとすれ違うことが多い。ちょうどタケノコ採りのシーズンなのだ。
両側が側溝なので、すれ違うときは殆ど脱輪寸前まで車を寄せないと通過できない。おまけに対向車の運転手は大体がおじいちゃんで、あまり車を反対側に寄せてくれないので大変なのである。
やっとの思いで新緑が目に眩しいキャンプ場に到着した。
オープン一番乗りかと思ったが、やっぱり好き者キャンパーはいるのである。2組ほどの先客がテントの設営をしているところだった。
さて、何処にテントを張ろうか。
場内は期待通りの新緑に彩られ、何処の場所でもベストキャンプが楽しめそうだ。
ただ、全体的に若干傾斜があるので、自ずとテントを張る場所は限られてくる。今回は妻が選んだ場所に素直にテントを張ることにした。
その場所は、大きな樹木に囲まれ、森の住人になったような雰囲気である。
期待していた林床の草花は、スミレの群落が所々に有る程度で、タンポポの方が元気に咲いている。
エゾエンゴサクも結構有ったが、既に花は終わってしまっていた。それでも木の根元付近にはエンレイソウなど、タンポポなどが進入してくる前の元の植物相の名残が見られる。
その代わりに、新緑の方は本当に素晴らしい。芽吹いて間もない淡い緑が、場内全体を覆っている。
心が洗われる景色というのは、このようなものを言うのだろう。
遊歩道を歩くと、道沿いで簡単にタケノコを採ることができる。その奥の竹藪の中からは何やらゴソゴソと音が聞こえてきた。タケノコ採りの人だが、熊と間違えそうで気持ちの良いものではない。
そう考えながら歩いていると、道の真ん中に何やら動物のフンが落ちているのを見つけた。
「これって熊のフンでないの?」と妻が言ったが、こんな場所に熊なんか居るわけないよなー、とその時は軽く考えていた。
場内には大きな樹木が多い分、焚き火用の枯れ枝も豊富に落ちている。
この様子を見たら、焚き火好きの人間ならば自然と笑みがこぼれてくるはずだ。
ちょっと歩いただけで、テントサイトの横には大きな薪の山ができあがった。
夕食もそこそこに直ぐに焚き火に火をつけた。シラカバの皮も沢山落ちているので、それを使えば焚き付けなど無くても直ぐに大きな炎が上がった。
そのころには風も止み、楽しい焚き火タイムの始まりである。
北海道は5月に入ってから雨が殆ど降らず、農家の人にとっては深刻な水不足となっていた。
私にしてみれば、GWの朱鞠内湖でさんざん雨に悩まされていたので、エッ?そうなの?って感じである。
ただでさえ春は山火事が心配な時期で、おまけにこの水不足である。いくら薪が豊富にあるとは言っても、その辺のことは十分に注意しておかなくてはならない。
どんどん薪をくべたくなるのをじっと我慢して、小さな炎で楽しまなくてはならないのが辛いところだ。
新緑の木々の間からは、澄んだ鳥の囀りが響いてくる。
焚き火を楽しみながら聞く鳥の囀り、これまでのキャンプで何度も経験してきたそんな状況に、妙な懐かしさを感じてしまう。
曇り空で風も強く、キャンプにはあまり楽しくない天気だったが、それでもこれほどまでの充実感をえられるのは、やっぱりこのキャンプ場の魅力のおかげなのだろう。
明日は小鳥の声で目を覚まさせられるかな、そんな気持ちで眠りについた。
次の日の朝、眠りを覚ましてくれたのは、木を揺らす風のうなりとテントを叩く雨の音だった。
天気予報では夕方から雨のはずだったのに・・・。シュラフにもぐったまま117番へ電話をすると、天気予報は雨のち曇りに変わってしまっていた。
起きる気力を無くして、そのまましばらく惰眠をむさぼる。
でも、せっかくのキャンプでテントの中でじっとしているのももったいないので、起き出すことにした。
すると、雨音のわりには強い雨ではなく、大きな木の下では地面も乾いているくらいだった。薄日も差してきている。
これならば直ぐに晴れるだろうと思い、木をタープ代わりにして焚き火をしながら朝食を取った。
雨に濡れた新緑の木々が、薄日を浴びて一層その美しさを際だたせている。
しつこく降り続いた小雨もようやく上がったので、テントの水滴を拭き取り、乾くまで場内を散歩する。
途中で管理人のおじさんが近づいてきた。何のようだろうと思ったら、「熊の目撃情報があったので、現在ハンターが山には入っているところです。できれば早めに撤収してください。」との話である。
やっぱり昨日見つけたフンは熊のものだったようだ。
もしそこで、管理人さんに熊のフンの話をしたら、もっと大騒ぎになっていたかも知れない。
「こんな山なんだから、熊のフンが落ちていたくらいで騒ぐことも無いわ」、とは妻の弁である。
テントももう少しで乾くかなと思ったところで、またポツポツと雨粒が落ちてきた。
慌てて猛スピードでテントをたたみ、一気に車に積み込んだ。
もう少し、キャンプの余韻を楽しみたかった気もしたが、熊騒動もあるのでそのままキャンプ場を後にした。。
キャンプ場の帰り道、今がちょうど満開になっているという江部乙町の菜の花畑を見に行った。
一昨年にも見に来ていたが、その時は満開から少し盛りを過ぎたくらい、今回はまさに満開だった。
適当に車を走らせながら、菜の花畑を見つけては車を停めて写真を撮る。
キャンプのおまけとしては、なかなか楽しめた感じだ。
今回で我が家の春のキャンプシーズンは終了ということになる。
でも来月には礼文島に渡る計画をしているので、そこでもう1回北海道の春を楽しめるかな。
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