GW後半戦は朱鞠内湖キャンプである。
我が家の場合、GWには毎年実家へ帰ったりしていて、これまでキャンプへ出かけることは少なかった。
それが今年は、前半が美笛、後半が朱鞠内湖と我が家のお気に入りキャンプ場ベスト1とベスト2に両方泊まってしまうと言う、まさにゴールデンキャンプウィークといった感じである。
今回の朱鞠内湖での楽しみは、キャンプ場へ向かう道路沿いに今の時期花を咲かせているエゾエンゴサクやカタクリ、水芭蕉にエゾノリュウキンカ等々、道北の早春の花咲き乱れる風景である。
例年ならば5月中旬頃がその時期になるのだが、今年は雪解けも早く、GW期間中に満開の時期を向かえるだろうと狙いをつけていた。
幌加内で昼食の時間になるように逆算して9時に札幌を出発、途中ルーフキャリアからカヌーが外れそうになるトラブルはあったものの、予定通り11時過ぎには幌加内に到着した。
目的としていた「そば処ほろほろ亭」の蕎麦は1日100食限定と言うことなので、遅い時間だと閉店してしまう恐れもあるのだ。
早めに着いたつもりだったが、それでも店内は満席に近かった。美味しいお蕎麦で腹ごしらえして朱鞠内湖へと向かう。
幌加内から先の道路沿いは、あちらこちら薄紫色に染まっている。エゾエンゴサクの群落だ。まるで雑草のような表情をして可憐に咲いている。
狙い通り、ちょうど花の時期にぶつかったようだ。
ただ、最盛期にはまだ少し早かったようで、水芭蕉の花はまだ小さく、いつもならばカタクリとエンゴサクが一緒に開花している場所でも、エンゴサクしか咲いていない。
それでも十分に目を楽しませてくれる早春の風景である。
キャンプ場へ到着すると、湖畔では沢山の釣り人達が竿を振っていた。
テントの数は少ないものの、それでも人気のサイトには全てテントが張られている。我が家が狙っていた場所も、既に先客に占領されてしまっていた。
広い場内をぐるりと回って適当な場所を探すが、釣り人が多い時期なのであまり水際に近い場所だと、車や人の出入りが多くて落ち着かない。かといって湖から離れすぎるとせっかくの朱鞠内湖の風景を楽しむことができない。
迷った末、第3サイトの細長く岬状に突きだした部分の中間付近に決定、ここならば釣り人の出入りも少なく、湖の眺めもまずまずである。
翌日は雨の予報が出ていたので、タープを含めいつもより張り綱を多く張ったり、念入りに設営した。
途中ではあまり見かけなかったカタクリも、場内の日当たりの良い場所では所々で花を咲かせている。それでも日陰部分にはまだ雪も残っていた。
どの日の午後に広がりだした雲も夕方には次第に晴れてきて、風もなくなり最高の時間が訪れた。
「秋の日はつるべ落とし」と言われるが、春の夕暮れ時は時間をかけてゆっくりと暗くなっていくので、その分だけキャンプの一番楽しい時間をたっぷりと味わえるのだ。
焚き火用の薪も十分に集めておいたので、盛大に燃やすことが出来る。
朱鞠内湖は比較的枯れ枝等の薪を集めやすい場所だが、特にオープンして間もない今時期はその量も豊富だ。
管理の人達がサイト上の枯れ枝などを片づけて回っていたが、我が家に任せてくれればいくらでも集めてあげるのに、なんて思ってしまう。
キャンパーの数も増えていたが、広い場内に適当な間隔を置いてテントが張られているので、よその話し声も殆ど聞こえてこないほど静かである。
必要以上に大きな声で会話するようなキャンパーもおらず、皆静かに楽しいひとときを楽しんでいるのだろう。
美笛で過ごした時間も素晴らしかったが、周りの景色から環境まで全てを含めてのキャンプ場の快適さでは、やはり朱鞠内湖の方に軍配が上がりそうだ。
気持ちよく酔いも回って、その日は9時に眠りについた。上手くいけば朱鞠内湖の美しい朝日を楽しめるかもしれない。
ところが、翌朝はタープを叩く雨の音で目が覚めてしまった。覚悟していたとはいえ、やっぱり雨の朝はがっかりだ。
外の様子を眺めても、朱鞠内湖は灰色にくすんだままだ。がっかりして、またシュラフに潜り込む。
しばらくして雨音も止んできたので、起き出して朝食を取ることにした。時期に止むだろうと仄かな期待を持っていたが、その期待もむなしく、小降りになっていた雨も次第に本格的な降りになってきてしまった。
テントの中から雨に煙る朱鞠内湖を眺めて、「やっぱり朱鞠内湖には雨が似合うなー」なんて強がりを言っていたが、そのうちにタープの縁から流れ落ちる雨水がテントの方へ流れ込みはじめて、ちょっと焦った。
ここでやたら張り切りはじめたのが妻である。
テントの中でじっとしているのはつまらないとばかりに、雨具を着込み、スコップを手にテントを飛び出していった。
雨が流れる溝を掘ったり、肉が入っていたプラスチックトレイを折り曲げ、タープから落ちる水がテントに跳ね返らないように細工したりと大活躍である。
そのうちに関係ないところにまで溝を掘りはじめ、雨水の流れる川を作ったりして喜んでいる。まったく元気なおばさんだ。
昼食を食べる頃にはやっと雨も上がってきた。
天気予報では雨のち曇り、午後からはもしかしたら晴れ間も期待できそうだ。
そんな期待はむなしくうち砕かれ、晴れ間どころか霧雨が降り出し風も強くなってきた。
雨の時はのんびりと本でも読んでいよう、なんて考えていたのだが、それは暖かい時期の話である。じっとしていたら寒くてしょうがない。
買い出しを兼ねて風連町までドライブに出かけることにした。風連町といえば前から気になっていたふうれん望湖台キャンプ場がある。ついでにそこにも立ち寄ってみることにした。
そこではちょうど桜が満開になっており、今年はじめて綺麗な桜を見た気がする。今年の春はアッという間に桜前線が札幌を通過してしまい、気が付いたときには既に葉桜になっていたのだ。
キャンプ場はこぢんまりとまとまったなかなか良いキャンプ場で、隣のシラカバ林も最高に綺麗だ。
北海道には我が家が行ったこともないような処に、まだまだ沢山の素晴らしいキャンプ場が存在することを思い知らされた。
キャンプ場へ戻ると、雨も何とか上がったようである。
今夜もまた焚き火で楽しもう。昨日集めた薪の残りを雨に濡れないようにタープの下に入れておいたのは正解だった。それに家から持参してきた薪も手つかずに残っているので、今夜も盛大な焚き火が出来る。
その夜も気持ちよく酔いが回り、翌日の朝日を楽しみに8時半には眠りについた。
またまた期待は裏切られ、雨の音で目が覚めた。
天気予報では今日は晴れるはずだったのに・・・。もう一度電話で天気予報を聞いてみると「曇りのち晴れ、朝のうちは処により雨」に変わっていた。
よく、前日の天気予報と当日の天気予報ががらりと変わってしまうことがあるが、予報官は朝起きてからその日の空を見て天気予報を出しているんではないかと疑ってしまう。
それでもその雨も、今度は天気予報通りやがて止んでくれた。
ようやく朝の焚き火をはじめられる。昨日の残りの薪で少しばかりの焚き火を楽しんだ。
最後の薪をくべ終わったところで、何を思ったのか、妻が再び薪を拾い集め始めた。
「昨日からずーっと雨が降っていたんだから、そんな薪燃えるはずないだろう」
ところが今までの焚き火の火の熱で、濡れた薪も直ぐに乾いて燃えはじめるのである。
「寒いし、焚き火しかする事ないでしょ」
ごもっともでございます。私も気を入れ直して薪を集め始めた。
到着してから一体どれくらいの量の薪を燃やしたことになるのだろう。焚き火三昧の3日間だ。
雨の心配も完全になくなったのでカヌーで湖へ漕ぎ出した。
森の中に雪が残っているのを見てそこに上陸してみた。普段は笹藪に覆われて歩くことも出来ないトドマツの森の中を、残雪を踏みしめて自由に歩き回ることが出来る。
雨に洗われたトドマツの森の中の空気はとても美味しい。秘密の場所を見つけた感じで嬉しくなった。
サイトに戻ってくる頃にはテントもきれいに乾いて、撤収も簡単だった。
生憎の雨に見舞われてしまったが、天気の良い時ばかりがキャンプではない。
こんなキャンプもやっぱり楽しいのである。
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