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季節は?オホーツク砂浜キャンプ

三里浜キャンプ場(3月9日〜10日)

 去年11月のしし座流星群観測キャンプ以来、札幌から一歩も足を踏み出していない。
正月も実家へ帰らず、スキーへも出かけず、高校受験を控えた息子のためにひたすら家でおとなしくしていた。
別にそれが息子のためになるとはこれっぽっちも思わないが、せめてこの時期だけは、何時も親だけで遊び歩いていた罪滅ぼしのために、自分の行動を制限しようと勝手に考えていたのだ。
でも、そのおかげで冬の間はパソコン三昧の生活を心おきなく楽しむことができたというのが、本当のところである。

 車で10分走れば欲しい物が全て手にはいるという都会生活の便利さにどっぷりと浸かった生活を楽しみながらも、それだけ長い間人混みの中で生活していると、心のどこかに黒い澱のような物が溜まっていくのが感じられた。
そろそろ限界に近づいてきている気がする。
このもやもやした気分を一気に晴らすためには、どこか圧倒的な自然の風景に全身をさらす必要がありそうだ。
そのために、キャンプ解禁後の最初の目的地は、オホーツクの流氷を見に行こうと心に決めていた。
今年の流氷は、観測開始以来一番早い接岸の記録を作ったにもかかわらず、その後の1月2月はこれまた記録的な暖かさになってしまい、流氷の勢いも日に日に衰えつつあった。
海上保安庁の海氷速報を見ていると、2月下旬から流氷はオホーツク沿岸から遠く離れてしまっている。
心は既に、流氷に埋め尽くされた海岸でのストイックなキャンプに飛んでいっているので、今さら場所を変更する気にもなれない。
その願いが通じたのか、出発前日になってとうとう流氷が再び接岸したようだ。
しかし、当日の天気予報は全道的に南風が強くなるとのことで、そうなると、せっかく接岸した流氷が、また沖に押し流されてしまうことになる。
不安は大きかったが、思い悩んでいてもしょうがない、余計なことは考えずに今回の目的地であるサロマ湖の三里浜キャンプ場へ向けて出発することにした。

 出発日の朝、札幌の空は快晴、気温は早くも5℃まで上がっている。今年の冬は本当に暖かい日が多い。
しかし、車を北に進めるにしたがって、空は雲に覆われてきた。南風も次第に強まってくる。
北見峠を越える頃には、さらにその風も強まり、車のハンドルが取られるくらいになってきた。
はるばるとオホーツクまで出かけ、流氷を見ることもできず、おまけに何も遮る物のない海岸では吹きっさらしの強風の中、テントを張ることさえままならないかもしれない。
いったい俺って何考えてるんだろう、こんなキャンプなんて無理に決まってるじゃないか。
正直言って、これまでのキャンプの中で一番不安になってしまった。
しかし、その風も目的地に近づくにしたがって次第に弱まり、上空にもまた青空が戻ってきた。
ようやく心も晴れ晴れしたものになってきたが、ちょっと付近の積雪が少ないのが気にかかる。畑の土が早くも顔を出しかけているところもあるくらいだ。
やっと目的地の駐車場に到着し、そこでまた、砂まみれになった周りの状況に驚かされた。
何だこれは、恐る恐る海岸へ出る階段を登ってみると、そこには・・・

雪のない砂浜 ガーン、雪がない!!
そこには灰色の砂浜が広がり、その向こうには広々とした海面がのぞいている。
肝心の流氷は沖の方に白い線となって浮かんでおり、その間に、ポツポツとはぐれ流氷が漂っているような状態だ。
最初に感じたことは、車の狭い荷室に無理やり入れてはるばると札幌から運んできた大型ソリとスノーシューは何だったんだー!ということである。
これはまったく予想外の状況だった。
時間もまだ早かったので、気を取り直すために少し付近をドライブしてみることにした。
サロマ湖も、今時期ならば全面結氷しているだろうと考えていたが、これも氷に覆われているのは北側の四分の一程度である。
それでも氷上にはワカサギ釣りの人達が点在していた。
その氷上を歩いていると、ここにテントを張るのも面白そうだなと感じた。しかしその時、トイレ用のテントを忘れてきたのに気がついたのだ。
氷結したサロマ湖 何も遮るもののないこんな場所で、愛する妻に○○ッ○させるわけにはいかない。
同じサロマ湖でも円山キャンプ場ならば木も多いし、何とかなるだろう。そう考えてそちらに向かったが、キャンプ場へ入る道路は無情にも雪に閉ざされたままだった。
ムムム、こうなったら次はコムケのキャンプ場だ。あそこならば紋別空港への道路があるので絶対に大丈夫のはずだ。雪中キャンプにも最高の場所だぞ。
車をUターンさせて直ぐにそちらに向かったが、なんとそこの入り口も雪に閉ざされていた。
な、なんでー?紋別空港って冬は閉鎖されているの?
後で知ったのだが、紋別空港は最近移転された様なのである。
結局、色々と回り道をしたけれど、覚悟を決めて季節外れの砂浜キャンプを決行することにした。

焚き火も楽しめる 砂浜キャンプと言っても、ここの砂浜はきめの粗い砂なので、砂まみれになる心配もない。
おまけに、焚き火に適当な流木も沢山転がっている。
どうせなら海に少しでも近い場所と言うことで、少し頑張って荷物を運ぶことにした。
妻が、せっかくだからソリで荷物を運んだら良いんじゃないのって軽口をたたくが、さすがにそれは無理そうだった。
苦労してテントを張ってやっと一息つくことができた。
どんな場所でも、テントさえ張ることが出きれば、そこは素敵なテントサイトに早変わりする。
遥か沖に漂う流氷を眺めながら、誰もいない冬の砂浜でのキャンプ、なかなか楽しいシチュエーションである。
少し風が出てきたので、ゆっくりと焚き火を楽しむわけにはいかなかったが、気温もそれほど下がっていないので、テントに入れば快適な時間を過ごすことができた。

流氷と朝日 翌日の天気予報は曇りのち雨となっていたので、朝起きて恐る恐るテントの窓から外の様子を窺ってみたが、予想に反してそこには雲一つない空が広がっていた。
テントから出ると昨夜の風も治まっていて、実に爽快な朝である。
いつの間にか海上には、どこから流されてきたのか、沢山のはぐれ流氷が漂っている。
真っ赤な朝日が昇ってきて流氷の海に紅い影を投じた。
焚き火の優しい煙が穏やかに立ち上っていく。
ジャケットを着なくても寒さが少しも気にならない。
これが3月のオホーツクでのキャンプだとはにわかには信じられなかった。
冬のキャンプで悩まされるテント内の結露もまったく無しだ。
季節外れの快適なキャンプを楽しむことができて、満ち足りた気分でオホーツクを後にした。

流氷の海 帰り道、丸瀬布付近から急に雨が降り始め、その雪は北見峠で猛烈な吹雪に変わった。
100mも先が見えないホワイトアウトの状態の中、恐る恐る車を運転しながらも、来るときとはまったく違った満足感に包まれていた。


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