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一人だけの夏休み歴舟川キャンプ

カムイコタン農村公園キャンプ場(8月18日〜20日)

  とうとう中学3年生の息子の塾通いが始まってしまった。
 勉強なんて学校の授業さえしっかりやっていれば良いんだ、親はそう思っていたし、のんびり屋の息子も塾へ行く気は毛頭なし。
 ところが中学に入ってからの息子の成績は下がり続けるばかり。
 別に勉強なんか出来なくても、自分のしっかりした目標を持っていてくれれば良いじゃないか。
 それも無し・・・。
 さすがに、ごくごく普通の親としては息子の成績が気になりだし、本人も何となく危機感を感じたようで、とうとう中学3年の夏になって塾通いが始まったのである。

 一方、妻は仕事に追われ、「私が休んだら他の人に迷惑が・・・」。
 私だけが、「オッケー、オッケー、何時でも休めますよー」といった、家族内での浮いた存在となってしまっていた。
 今の職場は、長期休暇は難しいが比較的自分のペースで休みを取ることができる。
 しかし、来年からは職場が変わって休みが取れなくなる恐れもある。
 自分にとっては、最後の自由な夏といった気分なのだ。
 一応、家族揃って十勝の実家へ帰省し、爺婆を連れて層雲峡ドライブなどへは出かけていたが、それだけでは全く夏休みを過ごした気がしない。
 最近の我が家の夏はキャンプ&川下りといったパターンが定着しており、これが無ければ「海水浴へ行かない夏休み」と同じようなものである。

 ついに家族のことは放っておいて、一人で出かけることにした。
 ここ2年ほど一緒に川下りをさせてもらっているKさん父娘とYさん夫婦(?)が歴舟川を下ることになっていたので、そこに合流することにしたのだ。
 息子は「勝手に行けばー」といつもの調子、妻も「気をつけてね」と、いつもの恨めしそうな表情は浮かべなかった。
 家族の合意を得て、というか相手にしてもらえなくて、ついに念願の夏休みキャンプ&カヌーへ出発である。

 今年の北海道の8月は比較的良い天気が続いていたが、道東方面だけは例外で、雨は降らないもののずーっと曇り空で最高気温も20℃前後までしか上がらないでいた。
 やきもきしながら天気予報を眺めていたが、出発前日になってようやく晴れるのが確実と解り、気持ちは一気に盛り上がった。
 「ウッヒョー、晴だ、晴れだー」と部屋の中を飛び回る私を見て、さすがに妻の表情にも恨めしさが浮かんでいたようだ。

 今回は初めてのカナディアン一人漕ぎでの川下りということもあり、ソロキャンプ時の相棒である愛犬フウマも家に置いていくことにした。
 いつものようにキャンプ道具を車に積み込みはじめると、ウキウキした表情で足元につきまとい、早くドアを開けて乗せてくれと訴えるような目で私を見つめる。
 そんなフウマを押しのけるように車に乗り込み、車をスタートさせた。
 バックミラーを見ると、自分は置いて行かれたのだという事実が理解できずに呆然とした表情で車の後を見つめるフウマの姿が映っていた。
 少し心は痛んだが、真っ青な青空の下を走っていると、あっという間にそんな痛みは吹き飛んでしまった。
 日高町内でコンビニ弁当を買って、日勝峠の展望園地でその弁当を食べる。
 ここの場所は絶景のポイントなのに、何故か何時行っても他の人が居たことがない。
 一人寂しくコンビニ弁当を食べるおやじの姿が、ここではとても格好良く見えるかも知れない・・・、と思いながら弁当をパクついた。
 そこから先、歴舟川までは、抜けるような青空と日高山脈の雄姿、緑が眩しい畑々の眺めが続く。
 十勝で生まれ育った私にとっては見慣れた景色のはずだが、それでも新鮮な感動を覚える。

 3年ぶりに訪れる歴舟川のキャンプ場は、道路を挟んだ向かい側に新しくサイトがつくられ、名物のおじさんコンビも居なくなり、オートキャンプ場のように受け付け時にサイトを指定される等、かなり様変わりしていた。
 それでも、清流歴舟川の姿に変わりはなく、何時もと同じくサイトの前を穏やかな表情で流れている。
 1年ぶりにKさんに再会。去年の釧路川以来だ。
 毎年家族5人で北海道上陸を続けていたKさん一家も、とうとう今年は家族の日程調整がつかずに父娘二人での上陸、同じような境遇を慰めあった。
 夕方にはYさん夫婦(?)も到着した。
 週末で天気も良く相当の混雑を予想していたが、サイトには若干の空きも残っている。
  ここのキャンプ場の混雑のピークはお盆頃で、それを過ぎると急に利用者が減ってくるという話しだ。
 日が落ちると急に気温が下がりはじめた。
  いつものキャンプでは寒さ対策は十分にしているのだが、今回だけは札幌の暖かさに慣れきってしまっていたため、長袖シャツを1枚持ってきただけだ。
 それに雨具の上下を着込んでもまだ寒い。Kさんからダウンのベストを貸してもらったが、それでも震えながらビールを飲んでいるような有様である。
 ふと隣のサイトに目をやると、そこではTシャツ、短パン姿のお父さんがのんびりとイスに座ってくつろいでいた。
 これは、もう少し寒い時期でもよく見かける光景なのだが、「キャンプはやっぱりTシャツ、短パンで過ごすものだぜ、イェーイ」といった元気の良いお父さんが沢山いるのには感心させられる。
 その夜は、明日の川下りに備えて早めに眠りについた。

 翌朝、目を覚ますとテントの中に太陽の光が写っていた。
 夜露に濡れたテントの入り口を開けてみると、歴舟川の河原が朝日に照らされている。焚き火の煙がゆらゆらと立ち上り穏やかな朝の風景だ。
 この日も快晴、これ以上は望めないような絶好の川下り日和である。
 (この後、川下りの様子はカヌーのページへ

 川下りから帰ってくると、ほとんどのキャンパーは帰った後で、場内はガランとしていた。
 翌日から仕事のYさん夫婦(?)は先に帰ってしまったので、静かな場内でのんびりとKさんとビールを酌み交わす。
 昨日までは聞こえなかった虫の声がサイトを包んでいる。
 気温も昨日ほどは下がらずに本当に良い夜だ。
 満天の星空が広がり、その下でKさんからオーストラリアで見た凄い星空の話しを聞いていると、心は遠い国へと一人で旅立っていくようである。

 翌朝、Kさんと来年の再会を約束して帰途につく。
 充実した一人だけのちょっと短い夏休み、帰り道には何となく秋風が吹きはじめたような気がした。


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