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雨にも風にも負けずキャンプ

岩内オートキャンプ場マリンビュー(9月9日〜10日)

 先週のキャンプは雨で中止、今週末の天気はまたしても雨の予報だ。
 土曜日が曇りのち雨、日曜日は雨で午後からやむ、雨量も多くなる地方あり、最悪である。
 それに、今回予定しているキャンプ場はサイトからの展望が売り物の岩内マリンビュー、ここで雨が降ってせっかくの展望が楽しめなければ、わざわざそこを選んだ意味が無くなってしまう。
 それでも、無理に出かけることにしたのは、このままでは9月に一度もキャンプへ行けなかったという去年の二の舞になってしまうからだ。
 それにもう一つ、最近は雨の予報を聞いただけですぐにキャンプを中止にするという軟弱キャンパーになり果てていたので、そろそろ自然の厳しい洗礼を浴びるようなキャンプをして、自分の目を覚まさせよう、という気持ちもあった。

 キャンプの楽しみの一つに非日常体験というものがあると思う。
 確かに、爽やかな青空の下、森の香りや鳥たちのさえずり等に身を任せるのも楽しいキャンプだ。
 でもそれ以外に、普段の生活では味わえないような体験が出来るのもキャンプの魅力の一つである。
 最近になってはじめた雪中キャンプなどはまさに非日常の世界だ。
 雨の中のキャンプは、そんな非日常の世界を手軽に味わえる絶好の機会なのである。

 とは言いつつ、どんよりとした曇り空の下でキャンプの用意をしていても、少しも高揚した気分になってこない。
 翌日の、びしょ濡れのテントやタープの撤収のことまで考えると、ますます気分はブルーである。
 それでも、到着した岩内の空は曇り空ながらも視界はまずまず、これならばマリンビューご自慢の展望も楽しめそうだ。
 キャンプ場の受付では一番眺めの良いサイトを選んでもらった。
 このキャンプ場は山の傾斜地に作られているので、当然高い場所のサイトの方が眺めが良くなる。さすがにそのような場所は、すでにほとんど埋まってしまっていた。
 どこにするか迷っていると、受付の方が我が家が夫婦二人だけなのに気が付いて、トイレや炊事場からは離れているが一番奥まった場所にあるサイトを、静かに過ごせて良いかも知れませんよ、と勧めてくれた。
 嬉しい配慮である。いくら眺めが良くても、両隣をテントに挟まれてしまうとどうも落ち着かない。一も二もなく、すぐにそのサイトに決定した。。

 ゲートをくぐり、道路を一番高い場所のサイトまで登っていくと、そこは先ほど到着したばかりといった様子のキャンパーが既にびっしりで、一生懸命テントの設営中である。
 みんな、今日の天気予報が雨なのを知っているのだろうか。こんな天気ならば、キャンパーもほとんどいないだろうという我が家の予報は、見事に外れてしまったのだ。
 それでも、受付の方が勧めてくれたサイトは、そんな混雑した場所からはちょっとだけ離れており、眺めも良くて本当に良い場所だった。

 早速、設営に取りかかるが、雨と風に備えて張り綱をいつもより多めに張った。持参したペグを全て使い切ってしまい、準備の不足にちょっとだけ反省する。
 設営が終わるとお決まりのビールタイム、下界の景色を眺めながらのビールはなかなか気持ちが良い。
 でも、この時期になるとテントの設営で汗をかくこともなく、ちょっとだけ肌寒いビールの味である。

 心配していた雨もなかなか降ってこない。
 これだけ設営も完全にして、心構えも出来ているというのに、次第に雨の降るのが待ち遠しくさえなってきた。
 夕食の準備を始めた頃に、ようやく念願の雨が落ちてきた。
 ところがその雨と同時に、次第に風も強まってきてしまった。雨だけならば、どんなに土砂降りになっても平気だが、風と雨が一緒になると、これはちょっとやっかいである。
 せっかく、テントの上にタープまで張って完全装備の状態なのに、横から吹き付ける風でタープがその役目を果たしてくれない。
 それでも、我が家のテントには広めの前室が備わっているおかげで、そんな状態でも何とか快適に過ごすことができる。

 場内放送では、今夜は突風が吹く恐れがあるので、タープを張っている人は無理をせずに撤収するか、ペグを深く打ち込むようにとの注意が流れている。
 その後、管理人さんが回ってきて、各キャンパーに注意を促していった。
 眺めが良い場所はそれだけ風当たりも強くなってしまう。
 風向きからいって、我が家のテントが一番その影響を受けそうな場所であったが、完全な準備をしていたのでそれほど心配にはならない。

 夕食を食べる頃になると、風も雨もピタリとやんでくれた。
 眼下には美しい岩内の夜景が広がり、場内で行われるマリンビュー市で仕入れたホタテを焼きながらワインに舌鼓、期待はずれの穏やかな夜である。
 ところが、しばらくすると裏手の山の方からゴーッという音が聞こえてきた。
 するとまもなく、強烈な風が吹き付けてきて、同時に場内のあちこちでタープが飛ばされたみたいだ。
 強風に歪められるテントの中、キャンプはこれでなくっちゃと、ニヤリと笑みが浮かんできた。

 そんな風もすぐにおさまり、場内は虫の音に包まれた。
 ボクのこれまでのキャンプの中で一つだけ実現していない夢、それは、静かな夜、虫の音に包まれてテントの中で眠りたいということである。
 ボクの家は札幌だが、周りに雑草だらけの空き地があるため、今時期、うるさいくらいの虫の鳴き声が聞こえてくる。その虫の音が聞きたくて、寒い夜でも窓を開けて眠るのである。
 そんなに虫の声が聞きたいのならば、庭にテントを張ってその中で寝ればいいのに、と妻にいつも言われるが、さすがにそれはできない。
 本当の理由はともかく、隣近所の人には、どう見ても家から追い出された親父が、しょうがなく庭にテントを張って寝ているとしか見えないのである。

 簡単そうなことだが、これまでに一度もそんな場所でのキャンプを経験したことがないのだ。
 今夜は、はじめてその夢が叶いそうだと思いつつ、シュラフにもぐり込む。
 ところが、虫の音以上に隣のキャンパーの話し声の方が聞こえてきてしまう。うるさいなーと思いつつも、9時に寝ようとする自分の方に無理があるので、虫の声はあきらめてすぐに眠ってしまった。
 夜中に目を覚ますと、テントをたたく雨の音が聞こえてきた。
 その音を子守歌に、再び眠りにつく。次に目を覚ますと、雨音も止み、すでにテントの中は明るくなってきていた。
 妻の話によると、夜中に雨が上がった後虫たちが一斉に鳴き始め、素晴らしかったとのことである。
 ボクのささやかな夢の実現は、また先送りになってしまったようである。

 朝のコーヒーを飲んでいると、あたりを包んでいた霧が次第に薄れていき、徐々に下界の風景が現れてきた。
 青空ならば、もっと素晴らしい景色なのだろうが、それでも、その霧が流れて行く様子はこんな日でなければ見られない光景だ。
 キャンプはやっぱり、雨にも負けず風にも負けず、とりあえずは出かけることが大切なのである。


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