北海道キャンプ場見聞録
ススキとコオロギのサヒナキャンプ
サヒナキャンプ場(9月30日〜10月1日)
9月の札幌は晴れた日が数日程度、後は雨と曇りのぐずついた日が続いていた。 それでも、気温は高めに推移し山々の紅葉も遅れ気味である。 こうなるとキャンプ場選びにも苦労してしまう。なかなか秋のキャンプという気分が盛り上がってこないのだ。 最初に考えたのが、旭岳青少年野営場。このあたりまで行けば紅葉キャンプが楽しめるかも知れない。 ところがガイドブックで確認したところ、すでにクローズしていた。 次の候補は、富良野の山部自然公園太陽の里キャンプ場。今年は一度も富良野へは行っていないし、秋空が似合いそうなキャンプ場だ。 早速、妻にお伺いを立ててみたところ、「ふーん、山部ね、昔荷物運びに苦労したところでしょ。」 これは全然お気に召さないようである。 「そ、それじゃあ、静内湖キャンプ場あたりはいかがでしょう。」 ここは、今年のオープン日にソロで訪れた場所だ。今月いっぱいでクローズのはずであり、一つのキャンプ場のオープン日とクローズ日に泊まるのもなかなか面白い。それに、妻にとっては久しぶりの静内湖でもあり、色よい返事がもらえるかも知れない。 ところが妻の返事は、一言、「湿っぽい!」 これには困ってしまった。紅葉キャンプの候補地はいくつかあるのだが、どこも時期的には早すぎる。 苦し紛れに、その中の一つであるニセコのサヒナキャンプ場の名前を出してみた。 すると、急に笑みが浮かんで、「あら、良いんじゃないの。」 フーッ、これでやっと準備に取りかかることができる。 最近の例に漏れず天気予報は下り坂で、午後からは曇り、日曜日は小雨がぱらつくとのことである。 出発時の札幌の空は快晴、雲が広がる前に何とかサヒナへたどり着き、少しでも良いからあの素晴らしい眺めを楽しみたいものだ。 その願いが叶って、到着時もほぼ快晴の空が保たれていた。 当然のことのようにフリーサイトを利用する気でいたが、去年利用したときよりも芝の状態が悪くなっている。翌日、雨が降った場合のことを考えると、ちょっと気が重たい。 それに、ここのキャンプ場はオートサイトの方がやや高くなっており、そちらの方が展望も利く。妻も同じ気分らしく、オートの方はいくらなのかしらと聞いてきた。 フリーサイトは600円、オートサイトは2500円である。この程度の差ならば、ちょっとだけ贅沢してみる価値はある。 既に受付を済ませてしまっていたが、頭をかきながらオートサイトへ変更してもらった。 明日から10月だというのに、まだまだ気温が高い。設営しているとうっすらと汗をかいてしまう。 それでも、設営後のビールが一段と美味しく感じられる。 サイトの真正面にそびえるニセコのアンヌプリは、山頂付近が赤く染まっているようだが、さすがにキャンプ場周囲の木々の紅葉はまだまだである。 ところが、その代わりに場内の所々に生えているススキが、とてもいい雰囲気を出してくれていた。 ここのキャンプ場は、サイト内には全く照明が無いので、満月の夜には絶好のお月見キャンプができそうである。 それとコオロギの音色がサイト全体を包んでいる。紅葉が始まっていなくても、絶好の秋のキャンプのシチュエーションが整っているのである。 満ち足りた気持ちに包まれくつろいでいると、突然、隣にテントを張っていた二人連れの男女が近づいてきた。 「もしかして・・・、見聞録のヒデマルさんじゃないですか」 ド、ドキッ、ついにくるべき時がきてしまった、って感じである。 これだけ、ホームページ上で自分たちのキャンプの様子を晒していると、そのうちいつか正体を突き止められる日が来るだろうとは思っていた。 実際にその時がきてみると、何だか悪いことをしているのが親に見つかったような気がして、とても気恥ずかしいのである。 それでも、自分のホームページを見てもらっているというのは、とてもありがたいことだ。 そういえば、私のホームページでは自分の名前をどこにも出していなかった。 (ヒデマルとは息子の名前だったりします。もしもどこかで私を発見された方は「ヒデ」ということでお願いします。(;^_^A) その日の夜のメニューは、豚汁と炭火で焼いたサンマ、相変わらず質素なメニューである。 ささやかな夕食をとっていると、今度は一人の男性が近づいてきた。 「もしかして・・・、見聞録のタカハシさんじゃないですか」 ここのキャンプ場のオーナーさんだった。 (一度、リンクの関係でメールをやりとりしたことがあるので、ここでは本名でした) 突然のオーナーの訪問にビックリしていると、よく冷えたワインなどの差し入れまでしていただいたのである。 話しによると、本州方面から訪れるお客さんの2割ほどは、私のホームページの紹介記事を見てきてくれたとのことである。 そうは言っても、ただの趣味でやっているだけのサイトなのに、本当に恐縮してしまった。 でも、そのおかげで、その後の食事は美味しいワインをテーブルの中央にドンと置いて、とてもリッチなものに変わったのである。 食事が終わると、お待ちかねの焚き火タイムである。 ここのキャンプ場のもう一つの魅力は、各サイトに設けられた焚き火スペースだ。これだけしっかりと、焚き火とキャンプを関連づけたようなキャンプ場は道内では他には存在していないと思う。 自宅からも薪を用意してきてはいたが、せっかくなのでここでも一束購入しておいた。太くて良く乾燥した薪は、見ているだけで嬉しくなってしまう。 あまりにも嬉しすぎて、結局その薪は燃やさずに、家まで持ち帰ってきてしまった。 風もなく、気温は10度、絶好の焚き火日和である。 それ以上気温が下がると、焚き火に近づきすぎてフリースに穴を開けてしまったりする。 反対に気温が高いと、焚き火の温もりを楽しむことができない。 焚き火から適度な距離をおいて、煙に悩まされることもなく、最高の条件である。 ススキの陰からはコオロギの音色が聞こえ、途中から雲に覆われてしまった空を見上げ、「これで星空が広がっていたら言うこと無しだなー」なんて欲張りな気持ちが起きてしまう。 すると、先ほどまでは何もなかった空に星の光が一つ二つと瞬きはじめ、次第にその数も増え、ついには天の川までその姿を現したのである。 今年の春のドロームや判官舘でのキャンプも素晴らしかったが、ここにきてサヒナキャンプが今年のベストキャンプに浮上してきた。 その日の夜はコオロギの音を子守歌に、眠りにつく。 寒さを心配していたが、逆に途中暑くて目を覚ましてしまった。 明け方にはテントを叩く雨の音、「やっぱり雨か」と思いながらテントの外を見てみると、雨もすぐに止んで青空が広がりはじめていた。 この時期、サヒナから見る朝日は羊蹄山の中腹から昇ってくる。 生憎この日は羊蹄山の山頂には雲がかかっていたが、条件に恵まれれば最高の景観に出会えるかも知れない。 素晴らしい時を与えてくれたサヒナキャンプ場に感謝である。 これは決して、ワインをもらったためのお世辞では無いのだ。 |
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