北海道キャンプ場見聞録
霧多布五里霧中キャンプ
霧多布岬キャンプ場(8月1日〜8月3日)
霧多布岬キャンプ場は、私にとって道内に残された最後のあこがれのキャンプ場である。 今回のキャンプ旅行では釧路川の川下りよりも、霧多布岬キャンプ場へ泊まるという目的の方が大きかったかも知れない。 別に、道内には他にも泊まってみたいキャンプ場は残っているのだが、私の個人的な思い入れでは、まさに道内最後の未制覇キャンプ場なのだ。 途中、厚岸の漁協の直売所で、新鮮な殻付きカキを仕入れる。霧多布では豪華なカキバーベキューの予定なのだ。 厚岸から先の道のりは霧に包まれていた。 話には聞いていたが、さすがに釧路の霧は手強そうだ。それでも霧の霧多布なのだから、特に不満も感じない、逆に望むところである。 しかし、霧多布岬にさしかかると、これまでの道のりを覆っていた霧とはちょっと様子が違ってきた。 一つ一つの霧の粒子が大きくなった感じで、おまけに風も強まってきた。キャンプ場へ着く頃には、視界も殆ど20〜30mしか利かなくなっていた。 車から降りて場内の様子を見ようとしたが、すぐにメガネが水滴に覆われ、ぼんやりとバンガローが建ち並んでいる様子しか解らない。 すぐに管理棟に逃げ込んで、管理人のおじさんに、「ここのキャンプ場って、いったいどんな構造になっているんですか」と聞いてみた。 おじさんは気の毒そうな笑顔を浮かべ、晴れた日に写したキャンプ場の全景写真を見せてくれた。 「うーん、素晴らしい景色だ」、それでもこの状態ではどうしようもない。 その時管理人さんが、「バンガローなら空いているよ」との一言、迷わずバンガローを借りることにした。 バンガローを借りるとは言っても、犬連れでは全員がバンガローに入るわけにはいかない。 そこで、息子用のテントだけ張って、そこで私とフウマが寝ることにした。 それでも、海からの強風で吹き付けてくる霧を防がないことには、ゆっくりすることもできない。風よけ用のタープも張ることにした。 強風が吹き付ける中、妻と二人で苦労してタープをたてる。こんな時には息子は殆ど役に立たない。慣れた二人で息を合わせて作業しないと、タープが吹き飛ばされてしまうのだ。 かなり悲惨な状況のようだが、私にとって意外とこれが楽しい作業なのである。 自然に立ち向かって自分のための場所を作り上げるというのが、にわか冒険家になった気がして面白いのである。 炎天下での設営作業と比べたら、こちらの方がよっぽどやりがいがある。 そうして何とかタープを張り終えたが、相手が風と霧では、その下でのんびりというわけにもいかなかった。 時間はもう5時、寝不足とカヌーの疲れも加わって、とてもそれから食事の準備を始める気にもなれない。 ここにくる途中、湿原を展望できる洒落た店を見かけたので、そこで夕食を済ませることにした。 岬から離れると、いくらか天候は回復するのだが、岬に戻るとまた激しい霧である。すぐ近くの温泉に入って、その日は早めに寝ることにした。 強風であおられるタープの音が気になるかなとも思ったが、疲れのために朝までぐっすり眠る事ができた。 翌朝は、漁船が出航する音で目を覚まさせられた。 ところが、昨夜の風の音が聞こえない。テントのファスナーを開けて外に顔を出すと、霧も薄くなり、うっすらとした太陽の光も射し込んでいた。 喜んで飛び起きて、散歩に出かける。 そのうちに霧も完全に晴れて、素晴らしい景色が目に飛び込んできた。 岬の周囲の海には、無数の昆布採りの漁船が浮かび、忙しそうに働いているのが見える。 キャンプ場の様子もようやくはっきりした。 それまでは、テントサイトは回りをバンガローに取り囲まれた感じで、正直言ってなんでこんなキャンプ場が人気があるのだろうと思っていたが、霧が晴れるとそんなバンガロー群も気にならないくらい素晴らしい景色である。 そうして、バンガローに囲まれたサイトの横には、何も遮るもののないロケーション最高のサイトがあったのだ。 何故だかそこには1張りのテントも張られていない。 確かに、霧の中ここへ到着したら、そんなサイトがあるなんて気づかないと思う。 予定を変更してここでもう1泊する事にした。 帰りの札幌までの距離を考えると、もう少し札幌よりに移動してから泊まった方が楽なのだが、この景色を見てしまうと離れられなくなってしまう。 もう1泊は、隣の見晴らしの良いサイトにテントを張ることにしよう、そう考えた。 ところがしばらくすると、また風が強まってきて、見晴らしの良い場所はそれだけ風当たりも強くなってしまう。 そちらの場所はあきらめて、バンガローを引き続き借りることにした。 日中は納沙布岬までのドライブ。 納沙布岬はかなり前にも訪れているが、その後、近くまでくることはあっても、なかなか岬の先端まで行くことは無かった。 今回のチャンスを逃すと、もうしばらくは訪れる機会もなさそうなので、是非とも行っておきたかったのだ。 久しぶりの納沙布岬は昔と比べてちょっと寂れたイメージだった。 一頃の岬ブームは終わってしまったのだろうか。岬の先端に立っても特になんの感動も感じなかった。 それよりも根室の回転寿司、「花まる」の方に感動してしまった。 イメージよりも現実に感動するのは、年のせいだろうか。 快適なドライブを終えて戻ってきた霧多布岬は、再び濃い霧に包まれていた。 その日は海岸線まで晴れていたのに、霧多布岬だけは別世界のようである。それでもこの日は風がなかったので幸いである。 キャンパーも昨日よりずっと増えていた。 全国各地から集まるライダーに、大学のサイクリング同好会、近くの家から散歩にでもきたのかなと思わせるような服装の老夫婦のキャンパー等々、本当に色々な人達が集まってくる。 我が家の最後の夕食は1日遅れのカキ料理だ。 カキの殻を外すのには苦労させられたが、新鮮なカキは煮ても焼いてもプリプリしていて本当に美味しい。 最後の夜にビールで乾杯だ。 しかし、若いチャリダーの元気の良さには驚かされてしまう。 遅い時間に到着して、濡れるのも気にせず芝生の上に座り込んで宴会、濃い霧の中夜遅くまで楽しそうに騒いでいる。 他のキャンパーはほとんど寝てしまっているので、11時過ぎにトイレに起きた際、ちょっとだけ声をかけてあげた。 こちらも、塘路湖のキャンプ場では12時までお酒を飲んで、途中、近くのキャンパーから静かにしてください、と声をかけられている身の上なので、注意するのもちょっと気が引ける。 それでもキャンプ場での仲間同士での楽しい夜、なかなかお開きにするきっかけはつかめないもので、キャンパー同士お互いに注意しあうのがキャンプ場でのエチケットだと思う。 彼らは翌朝、疲れた顔で起き出してきたが、また次のキャンプ場へと向けて自転車で出発して行くのであろう。 今のうちに思いっきり青春を楽しんで欲しい、なんて、最近ますます爺臭い事しか考えなくなってきた自分である。 我が家も8時には450kmの遠い道のりを、札幌に向けて出発したのである。 それにしても今回のキャンプでは、やたら虫に食われてしまった。 塘路湖を出発した時点でその数は30カ所を楽に越え、霧多布では虫除けスプレーを使う気にもなれず、最終的には私の年の数以上に虫に食われてしまったのである。 |
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