北海道キャンプ場見聞録
静内湖オヤジソロキャンプ
静内湖キャンプ場(7月1日〜2日)
最近、次回のキャンプの目的地を決めるときは、キャンプ場ガイドをボーっと眺めるようにしている。 そうしていると、パッとひらめくときや、いつまで見ていても全然決まらないときがある。 今回は、開いたとたんに直ぐに目的地は決まった。 週末土曜日は7月1日、とすると7月1日オープンのキャンプ場があったはずだ。そう、なぜかオープン期間が7月〜9月の3ヶ月間しかない静内湖キャンプ場だ。 ここにはしばらくの間、足を向けていないかったし、今年になって1度も直火での焚き火をしたことがない。 久しぶりにワイルドな環境の中、じっくりと焚き火でもしてみたいものだ。 目的地が決まれば、後は毎週、週間天気予報を見ながら一喜一憂していれば良いだけだ。 ところが数日前になって、一大問題が発生した。妻に日曜日、用事ができてしまったのだ。 それならば別に、1週間先に延ばせば良いんじゃないの、って言われるかも知れない。でも、それじゃあダメなのだ。 7月1日に行くから静内湖なのであって、それが7月8日になったら静内湖へ行く意味が無くなってしまう。もう、行くと言ったら、絶対に行くぞー。 何故かわけの分からない理由によって、完全に静内湖絶対に行きたい病に罹ってしまった。 とは言っても、我が家のキャンプは常に妻と一緒に行くという不文律ができてしまっている。 それを、自分一人で行く、なんて言い出したらどんなことになるか、考えただけでもそら恐ろしくなってしまう。 しかし、この病はかなり重傷だった。 ある朝、意を決して、「あのー、今度の静内湖、一人ででも行きたいんだけどぉー・・・。」と、ついに口にしてしまった。 すると突然、歯を磨いていた妻の手がピタリと止まり、妻の周辺から冷たい空気が立ち上ってくるのが感じられた。 その後、出勤するまで、妻の口からは一言も言葉が発せられることは無かった。 夕方になって、重たーい気分で帰宅してみると、「お帰りなさーい!一人でキャンプへ行くおじさん!」と、みょーに明るい笑顔で出迎えてくれた。 ちょっと気持ちは悪いものの、まあこれで何とか一人でキャンプへ行くことができそうな雰囲気ではある。 その後、一悶着はあったものの、晴れて出発の朝を向かえた。 ファミリーキャンプを始める前を含めて200泊以上キャンプをしてきたが、ソロのキャンプはまだ一度も経験したことがない。 いったい何を持っていって何を食べれば良いのか、まるで、生まれて初めてキャンプへ出かけるような気持ちである。 我が家のキャンプは準備から設営まで完全分業制、いつもは自分の持ち分さえしっかりこなせば、それだけで大丈夫なのだ。 ところが、ソロキャンプとなると、何から何まで一人でやらなければならない。家の中をウロウロ歩き回っては、「よし、あれは持ったし、えーと、これも持ったしと、うーん、これは何に入れようか。」なんてやっているものだから、遠足か修学旅行に出かける小学生みたいだと、妻に笑われてしまった。 結局、車の荷台にも余裕があるので、いつものフル装備のキャンプ道具を全て積み込んで出かけることにした。 いつもは、車の後ろの荷物の上に作ったスペースで、窮屈そうに乗っている愛犬フウマも、今回は特別に助手席に乗せてあげることにした。 なんだか何時もと雰囲気が違うぞ、といった感じで神妙な顔をして座っているのがとてもおかしい。 札幌を出るときは夏のような暑さだったのに、海に近づくにしたがって霧雨が降ってきた。 ソロキャンプならば雨もまた良いものだ。ここしばらくは雨中のキャンプというものを体験していないが、タープの下で雨音を聞きながら、しっとりと濡れた回りの風景をぼんやりと眺めて時間を過ごす、というのが結構好きなのである。 キャンプ場へ到着すると、幸いというか残念というか、ちょうど雨が上がりかけてきたところだ。 それでも、念のためタープを張ることにする。今回は、昔に使っていたスノーピークの小さめのタープを持ってきた。さすがにソロキャンプで、コールマンの大型タープを張るのはちょっと格好悪いのだ。 テントは、去年息子用に買った一人用のドーム型テント。買ったときから、一度で良いからこのテントで一人で寝てみたい、なんて密かに考えていたのだが、ようやくその願いが叶えられる。 設営しているときからウキウキした気分だ。 ふと頭の中に、恨めしそうな顔をした妻の顔が浮かんだが、直ぐに頭を降ってそのイメージを追い出すことにした。 設営が終わって、お決まりのビールタイム、いかにも自分の城が完成したって感じで嬉しくなってくる。 雲が晴れて、日が差してくると、急に蒸し暑くなってきた。それでも、思っていたほど虫もいなくて、いたって快適だ。 夜まで時間はたっぷりとあるし、久しぶりにルアーを投げてみることにした。 今回はちょっと粘ってみようかな、とも思っていたが、10回くらい投げても釣れないと直ぐに飽きてきてしまう。どうも釣り向けの性格では無いみたいだ。 その後は何となくぶらぶらしているだけで、直ぐに時間がたってしまい、そろそろ夕食の準備に取りかからなければならなくなった。 一人暮らしの頃は結構色々なものを作っていたが、結婚してからはほとんど料理なんてしたことがない。 インターネットで、簡単に作れるアウトドア料理なんてのを探してみたが、ちょうど良いのが見つかった。 豚キムチ、豚のバラ肉とキムチをフライパンで炒めるというもの、「オオッ、これならば作れそうだ」、ということで今回のキャンプのメインメニューに決定したが、さすがにそれだけでは寂しいので、キャベツとベーコンのスープも作ってみた。 うーん、男のアウトドア料理だー、なんて思いながら作っていたが、とりあえずは何とか食べられるものに仕上がってホッとした。 ソロキャンプでの最大の問題は飯を食うことだと思う。 無事に夕食を終わって、次はお楽しみの焚き火タイムだ。 ところが昼間の蒸し暑さが、夜になっても少しも涼しくならない。半袖シャツで汗をかきながら焚き火をしても、全然楽しくないのだ。 焚き火はやっぱり暖を取るためのものであって、それでなければ焚き火の意味は無くなってしまう。 パチパチと音を立てながら景気良く燃え上がる焚き火から遠く離れ、夏の夜を思わせる暖かさの中、のんびりとビールを飲んで時間を過ごす。 今回の静内湖は思っていたよりもキャンパーが多かった。 多いと言っても他には4組がいるだけ、それでも、誰もいないキャンプ場で一人で過ごすことができるかも知れない、なんて期待を持っていたもので、ちょっとがっかりである。 隣との距離は十分離れていても、話し声は聞こえてきてしまう。 大自然の奥深い静寂を味わいたかった、何時も人の少ない場所でばかりキャンプをしていると、ますます贅沢になってきてしまうのだ。 焚き火が燃え尽きるのを待って、一人用テントにもぐり込む。小さなテントに腰をかがめてもぐり込むのが何ともいえない。 いつものテントは、立ったままでテントに出入りできるのだ。 夜の静寂に耳を澄ますと、遠くのテントからいびきの音が聞こえてきた。 ちょっとした親父の反乱で、初めて経験したソロキャンプ。 癖になってしまいそうだ、なんて書いたら大変なことになってしまうので、やっぱり一人のキャンプは寂しいなー、ということにしておこう。 |
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