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朱鞠内物忘れキャンプ

朱鞠内湖キャンプ場(5月26日〜27日)

 今回は久しぶりの2泊3日のキャンプだ。
 これまでは金曜日に休みをとって、よく2泊のキャンプをしていた。
 1泊だと、どうしてもキャンプ場でゆったりとした時間を過ごすことができない、キャンプを楽しむためには絶対に2泊しなければならないのだ、そのころはそう考えていた。
 ところが、去年から息子がキャンプについて来なくなってからは、留守番をしている息子のために食事の用意をしてから出かけなくてはならなくなってしまった。
 これが結構な足かせになるのである。
 中学生にもなれば一人でご飯支度くらいできそうなものだが、一人息子として大事に育てられた彼は上げ膳据え膳が当然の世界、とても自分でおかずの用意をすることなどできないのだ。(米をとぐことができるのがまだ救いだ)
 おかげで、去年は夏に1回だけ2泊キャンプをしただけである。
 1泊キャンプでは、夜の焚き火と朝の静かなコーヒータイム、それだけがキャンプの楽しみになってしまっていた。

 そんなわけで、久しぶりに気合いの入っていた今回の2泊キャンプ、目的地は我が家のお気に入り朱鞠内湖キャンプ場、今時期ならば満開のカタクリやエゾエンゴサク、ミズバショウなどが出迎えてくれるはずだ。
 それに、カヌーも時間を気にせずにゆっくりと楽しむことができる。
 ただ、ちょっと心配だったのが、朱鞠内湖でのカヌーが正式に認められるようになったのは良いが、その期間が6月〜9月と定められていることだ。
 そのために、かえってこの期間以外のカヌー規制が厳しくなっているような気がするのだ。

 出発当日の金曜日、ボクは朝から休みをとっていたが、妻は午前中講習会に出席しなければならない。
 2週連続のキャンプであるため、庭仕事でもやらなければならないことが沢山たまってしまっている。
 朝から畑起こしやら花苗の定植やら、カヌーの組み立てなど忙しいことこの上ない。妻も講習会から帰ってくると、息子のための3日分の食事の用意とこれまた大変である。
 やっと全てが片づいて出発できた時、時計は2時40分を回っていた。
 この日は気温もかなり上がり、準備作業だけでかなり体力を消耗してしまっていた。
 ドタバタしながら出発したので、何となく忘れ物をしているような気がする。案の定、高速に乗る手前で妻が携帯電話を忘れたことに気がつき、一度家まで引き返してきた。
 何のことはない、携帯電話はバッグの隅っこに入っていたのだが、何となくこの先を予感させるトラブルであった。

 車のルーフに積んだカヌーに気を遣いながらも高速道路を飛ばし、滝川インターを通り過ぎたあたりで致命的な忘れ物に気がついてしまった。
 カヌーのパドルを積んでいなかったのである。ワクワクした気分が半分くらい萎んでしまった。
 昔、初めて岩尾内湖にキャンプへ行くとき、途中でライフジャケットを持ってこなかったことに気づいたことがあったが、その時は旭川の街で3人分のライフジャケットを購入していった。
 ちょうどその時は、安物ではなくてちゃんとした物が欲しかった時期なのでそんなこともできたが、パドルだけはどうしようもないのである。

 朱鞠内湖が近づいてくると、期待していた沿道の花がそれほど咲いていないのに気がついた。
 過去2回、今時期に訪れたときはちょうど満開の頃だったのに、今年はどうやら1週間遅すぎたみたいだ。
 またまた高揚していた気持ちが萎んでいくのが感じられた。

 5時半に現地到着、早速テントを設営し、バーベキュー用の炭火を熾そうとしてまたまた気がついた。 我が家のキャンプの必需品、文化焚き付けが残り少ないのだ。
 先週のキャンプの後、新しい物を購入しておいたのだが、それをキャンプ道具入れに入れておくのを忘れていたのだ。
 我が家も最近バーベキュー用に備長炭を使っているのだが、わずかに残った1本の文化焚き付けだけで備長炭に火を付けるのは至難の業である。
 それでも何とか炭火を熾して肉の準備に取りかかったところ、食事用の小物類を入れたボックスの中で焼き肉のたれの蓋が外れているのに気がついた。中身が全て焼き肉のタレまみれである。
 参ったなーと言いながら片づけていると、今度は妻が気がついた。
 明日の夜の豚丼用のお肉、今日買ったのに持ってくるの忘れてたわ・・・。

 日曜日の天気予報は朝から全道的に雨模様とのことである。
 このあたりで、すでに2泊キャンプはあきらめて、土曜日で帰ることに心は決まっていた。
 その後も食事中、頭の回りを10匹ほどの小さなハエが執拗に飛び回り、先週から悩まされている花粉症による鼻水も、朱鞠内湖の新鮮なシラカバの花粉によりそのひどさを増してきた。

 ここまでくると悲惨なキャンプのように感じられるが、そこはさすがに朱鞠内湖キャンプ場の懐の深さである。
 静かに暮れゆく湖と森の様子を見ていると、そんなイライラした気分も次第に和らいでくるのが感じられた。
 キャンパーは他に5組程度、声をひそめると物音一つ聞こえない静寂が訪れる。そんな静けさの中、アオバズクの鳴き声が森の中から聞こえてきた。
 シュラフにもぐり込む頃には、そのほかにオオジシギ、ヨタカ、もう1種類名も知らぬ鳥の声が森にこだまし、静かな朱鞠内湖の夜は意外にもにぎやかなのである。

 気持ちのよい眠りは、砂利道をひっかきながら進入してくる車の音によって破られてしまった。
 時計を見るとまだ2時半である。その後も次々に入ってくる車の音にじゃまされ眠ることができない。
 そのうちに空も白みはじめてきたので、3時半には起き出すことにした。
 テントから出てみると、すでに多くの釣り人達が湖に向かってキャスティングしているのである。
 前回泊まったときも同じような状況だった。キャンパーと釣り人、この関係が朱鞠内湖の今後の問題であるような気がするのだ。

 まあ、キャンプ場での早起きはそれほど嫌いなわけでもない。おかげで美しい朝日も楽しむことができた。
 薄いもやに包まれたべたなぎの湖、カヌーを漕ぎ出せないことだけが気に入らないが、非常に心落ちつく風景である。
 ヒゲでも剃ろうとしたところ、アッ、ひげ剃り忘れてきた、まあそんなことはこの際どうでも良くなっているのだ。
 場内にはオオバナノエンレイソウ、周辺の道路にはエゾノキンポウゲ、やや色あせたエゾエンゴサクの群落も見られ一満足、それよりも赤井川で見たものとはひと味違った新緑の美しさ、こちらの方に感動したのである。

 その日の気温は30度近くまで上昇し、汗だくになってテントの撤収をしていると、例の小さなハエ達が数十匹も頭の回りに群がり、最後のお別れをしてくれた。
 留守番をしている息子に、1日早く帰ることを電話すると、「なんだ、軟弱になったな、昔は雨でも平気でキャンプしてたのにな。」と言われてしまった。トホホ・・・。


 ※ 追記
 キャンプ場の受付で許可期間以外のカヌーの使用について聞いてみたところ、入漁料さえ払えば何時でもカヌーに乗ることができるとのことだった。
 朱鞠内湖の管理者は釣り人のことしか考えていないようである。


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