北海道キャンプ場見聞録
早春お花畑キャンプ
判官舘森林公園キャンプ場(4月29日〜30日)
今シーズン初めての雪のない時期のキャンプである。 今回の目的地は判官舘森林公園キャンプ場、ここは1992年の9月に一度泊まったことがあるが、早春にはカタクリが咲き乱れているという話を聞いたことがあるので、それ以来、是非その時期に訪れてみたいと思っていた場所なのである。 出発時の天気はどんよりとした曇り空で、さあキャンプだ、といったうきうきした気分には今一なってこない。 オホーツク方面では季節外れの記録的な大雪が降っている、というニュースも、そんな気分に影響していたのかもしれない。 雪中キャンプへ行くのならば、そんなニュースは気にもならないところだが、今回はお花見キャンプという心づもりなのだ。 幸い、目的地に近づくにしたがって青空が広がってきた。しかし、風が強い。 受付を済ませて、テントサイト探しにかかったが、別に迷うこともなく、ベストサイトがすぐに見つかった。 場内の坂を下った一番奥、林が目の前に広がり、木々の合間からは下界の町並みが見下ろせる、眺めのいい場所である。 ただ、頭に描いていた、テントのすぐ前に広がるカタクリの大群落、といった光景は目に入ってこない。 まあ、ともかくテントの設営に取りかかったのだが、この場所は場内でも一番風当たりの強い場所だったみたいだ。 我が家のテントは、先にフレームを組み立てて、その上にアウター部分を被せる仕組みになっている。 これが災いし、強風にあおられてなかなか被せることができなかった。テントの設営にこれだけ苦労させられたのは初めての体験である。 何とか設営を完了し、お決まりのビールで喉を潤した後、改めて周囲を見渡してみた。 カタクリの大群落は期待はずれだったが、よくよく見るとそこら中に、まだ蕾のままのカタクリが顔をのぞかせている。 少し早かったのかな、と思いながらちょっと歩いてみると、周辺の林の中ではカタクリが満開、そればかりでなく清楚な青い色のエゾエンゴサク、可憐な白い花のアズマイチゲ、その他にも名も知らない花々がそこら中に花開いていたのである。 公園内を巡る遊歩道沿いも、すべて花に覆われ、すばらしい眺めだ。 8年前に訪れたときとは全く別のキャンプ場のような気がする。少し大げさだが、早春に訪れるのならば、僕の知る限り道内最高のキャンプ場かもしれない。 サイト周辺にはエンレイソウの群落も有ったが、残念ながらこれはまだ蕾のまま、GW後半にはこの群落も楽しめそうだ。 テントの前の林床は、カタクリこそまだ咲いていないが、一面コケに覆われ、去年秋のドングリが可愛らしく散りばめられ、なかなか味わいのある風景である。 しかし、強風はいっこうに治まる気配を見せない。 こんな時に、我が家のテントは広々とした前室があるので便利である。後から、隣のサイトにやってきたキャンパーはコールマンのドーム型テント、我が家のように前室が無いので、風を受けながら外にいるしかなく、ちょっと気の毒である。 ただ、その夜の我が家のメニューはバーベキュー、さすがにテントの中で炭を熾すわけにもいかず、テントの陰で風を避けながらの夕食となった。 気温は7度くらいは有るのだが、強風のために体感温度はかなり低く感じられる。そのうちに体もブルブルと震えだしてきてしまい、これでは2月のオホーツク流氷キャンプの時よりも寒いくらいだ。 もっとも、その時はテント内でストーブを焚いて温度は10度近くまで上がり、熱々のキムチ鍋をつついていたのだから、今回の方が寒いのは当たり前なのだ。 キャンプの時は、雨や雪、寒さなんかは平気なのだが、風だけには参ってしまう。 翌朝は朝日の写真を撮るために4時に起床、それでも昨夜は9時に寝ているので睡眠時間は十分、寒さに悩まされることもなく、久々にテントの中でぐっすり眠ることができた。 小鳥のさえずりで目覚めるのは非常に気持ちの良いものだ。 さすがに競馬馬産地の新冠町だけあって、遠くから馬のいななきまで聞こえてくる。 近くの展望台からは、日高の牧場を黄金色に染める朝日を見ることができた。 テントに帰って、たき火にあたりながら朝のコーヒータイム、昨夜の風がウソのように静まり、頭上の木々の枝を飛び交う小鳥たちのさえずりに聞き入り、朝日に照らされたコケの絨毯と可憐な花々が目を潤す。 我が家のキャンプ、至福の一時である。 十分に今回のキャンプを楽しみ、そろそろ帰り仕度でもしようかなと考えていると、隣のキャンパーが起き出してきた。 他人のキャンプスタイルに口を挟む気はないが、せっかくのキャンプでの一番すばらしい時間をもったいないなー、なんて老婆心ながら思ってしまうのだ。 最近の我が家のキャンプスタイルは、夜のたき火に朝のコーヒータイム、これだけ楽しめれば十分なので、帰り仕度が年々早くなってきたような気がする。 |
戻る | ページTOPへ |