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森野ラストキャンプ

森野オートキャンプ場(10月28日〜29日)

 道内のキャンプ場は、ほとんどが10月いっぱいでクローズになる。
 我が家にとって10月はキャンプのベストシーズンだ。紅葉に包まれた中で、焚き火にあたりながらの静かなキャンプ。
 今年はこの紅葉キャンプを極めるために、一つの計画を立てていた。
 道北から道央、道南と紅葉前線の南下に合わせながら、3カ所のキャンプ場で紅葉キャンプを楽しんでしまおうという内容だった。
 ところが一発目の朱鞠内湖キャンプが中止になってしまったところから、この計画に狂いが生じ、ドロームでは早すぎ、赤平では既に散った後、なかなか紅葉の中でのキャンプに恵まれない。
 そんな状況で、とうとう10月最後の週末を迎えてしまった。

 目的地は白老町森野に今年オープンしたオートキャンプ場。70歳のおじいちゃんが7年間かけてコツコツと手作りしたキャンプ場だということである。
 北海道新聞の片隅に紹介記事が載っているのを見つけたのは今年の夏、写っている写真も結構良い雰囲気、場所的にも紅葉が美しそうな場所である。
 ただ、個人の手作りキャンプ場となると外れの可能性も大きい。もしかしたら、国道39号線を層雲峡方面に向かう途中の道路沿いにある某キャンプ場みたいな感じかも知れない。
 いつも、ここの横を通るたびに、こんなキャンプ場には絶対に泊まることはないだろうな、と感じているところである。
 我が家の場合、自然度の低いキャンプ場というのは、大の苦手なのだ。

 出発当日、我が家の庭はちょうど紅葉真っ盛りである。札幌でこれならば、南の方へ行くと紅葉はまだ遅れているかも知れないと、ちょっと心配していた。
 そんな心配も高速道路を走っている間に吹っ飛んでしまった。
 途中の山々はどこも紅葉真っ盛り、白老インターで降りて内陸部へ向かう途中も綺麗な紅葉が広がっている。
 この道は白老から大滝村へ通じる最近できたばかりの道路である。初めて走る道だが、沿道には美味そうな白老牛がのんびりと寝そべる牧場風景が広がり、もう少し内陸に進むと紅葉の山々を縫うように流れる美しい渓相の川が目に入り、いやが上にも初めてのキャンプ場への期待が膨らんできた。

 ところが突然、回りの山々の紅葉が消えてしまった。ほとんどの樹木が既に葉を落としてしまっているのである。
 あれれ、なんだこりゃーと思っていると、キャンプ場入り口の派手な看板が現れた。
 ガイドブックにもまだ紹介されていないところなので、場所が解るか心配していたのだが、これならば見逃すことはないだろう。
 入ってすぐのところに、受付の看板がかかった廃車のバスがおかれている。そこには誰もいなかったが、遠くから管理人らしきじいちゃんが歩いてきた。
 田舎の爺ちゃんと言った感じで、どう見てもキャンプ場オーナー風には見えない。
 定年退職後に趣味でコツコツと整備してきたそうで、将来は隣の川へ降りる道を付けて、それから川沿いに遊歩道を整備してと、楽しそうに話す爺ちゃんを見ていると羨ましくなってしまった。

 数日前の強風で紅葉はほとんど散ってしまったとのことだったが、葉を落としたシラカバとわずかに残ったモミジの紅葉とで、なかなか良い雰囲気である。
 ただ、隣の道路から場内が丸見えなので、どうも落ち着かない。
 キャンプ場のすぐ横は深い谷になっており、川の音が遠くに聞こえ、それはそれで良いのだが、反対側には爺ちゃん手作りの大庭園が広がっている。
 これは、好みによるのだろうが、私にとっては人の庭先でキャンプしているような感じがして、あまり好きな光景ではない。
 妻も、設営を終わり一息ついたところで、「前回のキャンプが良かったからねー。」と、やっぱりこのキャンプ場があまりお気に召さない様子である。
 多分、普通の人が見れば、なかなか良いキャンプ場に映るとは思うのだが、キャンプ贅沢症にかかっている我が家には満足できないのである。

 それでも、せっかくの今年の最終キャンプ、気持ちを入れ直して、キャンプを楽しむことにした。
 爺ちゃんが遊歩道を計画している河原まで行ってみることにしたが、完成途中の川まで降りる道は大石がゴロゴロした急傾斜地で、一大土木工事をしないと難しそうな場所である。
 本当に爺ちゃん一人の手で完成させられるのだろうかと、心配になってしまった。
 大きな玉石だらけの川だが、夏の暑い時期ならば楽しく遊べそうな場所だ。

 到着時は風が強かったが、夜になるにしたがいその風も弱まり、焚き火日和になってきた。
 場内には枯れ枝も沢山落ちており、今年最後のキャンプは盛大な焚き火パーティーにしよう。
 気温もどんどん下がり、温度計の目盛りは2度になっていた。
 かじりつくように焚き火に当たっていると、パーンという音と共に火の粉が私のフリースの袖に飛び乗った。
 慌てて払い落とそうとしたが、火の粉はそのままジワーッとフリースを焼き焦がし、見事に貫通してしまったのだ。
 かなり昔に、L.L.Beanの通信販売で手に入れたお気に入りのフリースだったのに・・・。
 その後、妻にも同じ災難が訪れた。
 フリースに付いた火の粉は、払い落とすよりも、指先でつまみ採るようにして消すのが正解だと、妻と二人で出した結論である。

 回りの山からはシカの鳴き声が響いてくる。
 フウマが時々、真っ暗な茂みの方を見ては、ウーッとうなり声をあげていたので、そこではシカたちがおかしな人間の二人連れの様子も窺っていたのかも知れない。
 アッという間にワインが1本、空になってしまった。いつもならば1本有れば十分な量なのに、これだけ寒いとどこに入ったのか解らないくらいだ。
 最後の薪が燃え尽きるのを待って、眠ることにした。

 翌朝、4時頃目を覚ましたが、その後、寒さでなかなか眠ることができない。
 キャンプでの寒さにはすっかり慣れっこになっていたので、フリースを脱いで寝たのがまずかったのだ。
 何事も、慣れてきたときが一番危ないものなのである。
 やっと回りが明るくなってきたので、ホッとした気持ちで起き出してみたところ、気温はマイナス2度まで下がっていた。
 それでも、相変わらず快晴の空で、朝日を浴びてとても気持ちが良い。
 気合いを入れて顔を洗ったが、水が思っていたほど冷たくない。考えてみれば、気温の方が低いのだから当然のことである。

 今年は最後まで紅葉に縁がなかったが、十分に秋のキャンプを楽しむことができた。
 これで、満足して今シーズンのキャンプを終えることができる。
 この森野でのキャンプをラストキャンプとすることにしよう。


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