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満月に川のせせらぎドロームキャンプ

ドロームキャンプフィールド(10月14日〜10月15日)

 先週予定していた朱鞠内湖キャンプは、葬式が入ってしまいあえなく中止。久しぶりの2泊キャンプで準備万端、後は翌朝出発するだけという状態での中止決定はショックも大きい。
 それでも救いだったのは、2日目からの道北方面の天気が大雨洪水警報が出るほどの雨模様の天気だったことだ。
 でも、それはそれでサバイバルキャンプが楽しめたかもと考えると、やっぱり残念なのである。
 今年はどうも朱鞠内湖とは相性が悪いみたいだ。
 ワカサギ釣りキャンプの空振りに始まり、春の忘れ物キャンプ、それにこのキャンプ中止と、このままでは引き下がりたくない気もするが・・・。

 今週の目的地は春にも訪れたドロームキャンプフィールドである。
 その時の新緑の美しさに感激し、今回はもう一度紅葉の美しさにも感動してみようというわけだ。
 良いキャンプ場を見つけたら、春と秋の2回は訪れてみたくなる。それぞれのベストシーズンのキャンプを味わえたら、これでそのキャンプ場は征服したという気持ちになれるのである。
 ところが今年の北海道は、9月に入ってからも気温が高くおまけにずーっと雨模様の天気が続いている。
 秋の紅葉が美しくなる条件は、十分な日照と朝夕の気温差が大きいことだ。これを考えると、今年の紅葉にはあまり期待がもてない。
 札幌の今の状況も、ようやく紅葉が始まりかけてきたような感じで、例年よりは10日ほど遅れている状態だ。
 天気予報の方も、土曜日は雨のち晴れ、日曜日は曇りのち雨ということで、これで9月に入ってからずーっと週末は雨ということになってしまう。
 それでも、わずかな晴れ間の間に綺麗な紅葉の写真が撮れれば良いやと、あまり大きな期待はしないでの出発である。

 途中、朝里から赤井川村へ抜ける毛無し峠の頂上付近は、木々も綺麗に色づいていたが、峠を下っていくとやっぱり紅葉は今一の状況だ。
 キロロスキー場の方の山をみてみると、既に山頂は白いものに覆われているというのに、今年の秋はどこかおかしい。

 キャンプ場に着いてみると、既に2組ほどの先着客がいた。
 秋のキャンプは焚き火無しでは楽しみ半減だが、ドロームのサイトは全てが綺麗な芝生に覆われているので、基本的には焚き火禁止である。
 ただ、サイトの横を流れる白井川沿いに、かろうじてテントを張れる場所が有ったのを、春に来たときに見つけていたのだ。
 ところが、その場所はしっかりと先客に押さえられてしまっていた。皆、考えることは同じなのだろう。
 それでも、もう1カ所何とかテントを張れそうな場所を見つけることができた。
 そこは、すぐ横に河原もあって、焚き火のためにはベストポジションである。ただ、回りは木に囲まれているので日当たりがちょっと良くない。
 この時期のキャンプは、夏と違って思いっきり太陽を浴びれらる場所も捨てがたいのだ。
 今回はそれは我慢して、焚き火の方を優先することにした。

 夏ならば、じめじめしていてとてもテントを張る気になれないような場所でも、秋や春ならばそんなところでも光が射し込むようになり、地面は落ち葉に覆われ、とても快適なテントサイトに変身する。
 落ち葉の上にテントを設営していると、愛犬フウマが横の落ち葉をかき分けて鼻先を突っ込んでいる。
 何をしているのかと覗いてみて、その光景に思わず背筋がゾーッとしてしまった。
 フウマが落ち葉をかき分けた後には、何十匹ものムカデがもぞもぞとうごめいていたのである。
 その光景は見なかったことにしてムカデの姿を頭から振り払い、設営を続けることにした。

 秋の日は短い。おまけにドロームは回りを山に囲まれているので、太陽が隠れてしまうのも早いのだ。
 設営を終えて一息ついた後、カメラを構えて場内を散歩するが、既に太陽は西に傾きはじめている。
 わずかに紅葉が始まっているとはいえ、最盛期にはほど遠い。それでも西日に照らし出せれた山肌は美しく輝いている。
 でも、その風景をカメラに納めていてどこかおかしいなーと感じてしまった。そう、その山の色合いは春先の新緑の時の光景ととても良く似ているのだ。
 葉に含まれるクロロフィルが徐々に分解され、緑色が抜け落ちていくその過程では、春先の芽生えたばかりの淡い緑ど同化する一瞬が有るのかも知れない。

 日が完全に沈んでしまうと、急速に寒さが身にしみてくる。寒い時期のキャンプでは、自分の体温しか体を温めるすべは無いのだ。
 とてもこの時期のキャンプ、焚き火無しで過ごす気にはなれない。
 しばらく雨が続いていたので、自宅から乾いた薪も用意してきていたが、量が寂しいので薪集めに取りかかる。
 ふと気が付くと、妻がナタを振り回し、倒れている木の枝を切り落としている。思わず、たくましい奴だなーと感心してしまった。
 その、妻の奮闘もあり、十分な量の薪を確保して焚き火に火を付けた。

 しばらくするとパーンという破裂音と共に火の粉が回りに飛び散った。焚き火のそばでくつろいでいたフウマも、慌てて飛び起きてテントの中に逃げ込んだ。
 最初は薪が爆ぜたのかな程度に考えていたが、その後も2回くらい大きな爆発が有った。
 よくよく見てみると、回りに石の破片が飛び散っている。どうやら火で熱せられた石が破裂したみたいだ。
 緑色の石が要注意ということは知っていたので、焚き火をはじめる前に注意して見ておいたのだが、割れた石は緑色ではなく、表面がデコボコした石である。
 如何にも水分を吸収しそうな石で、すぐにでも水に浸かりそうな場所だったので、たっぷりと水を吸い込んでいたのであろう。

 8時を過ぎてようやく山陰から月が昇ってきた。前日が満月だったのだが、この日の月もほとんどまん丸である。
 トイレと炊事場以外に照明のないドロームキャンプ場は、月明かりに照らされたシラカバの木々が白い輝きを放っている。
 この日の6時ころ、若田さんの乗るスペースシャトルが上空を通過すると聞いていたが、うっかりして見るのを忘れていた。
 その夜いくつかの人工衛星の光を見たが、きっとスペースシャトルの大きさならばもっと凄い明るさで見えたかも知れないと、妻と二人で残念がった。

 その夜の気温は5度まで下がった。風が少し吹くとさすがに寒さが身にしみてくる。
 ところが寝ている間、少しも寒さを感じなかった。どおりで、翌朝の気温は6度である。これでは紅葉も進まないはずだ。
 心配していた天気も、朝のうちはまだ晴れ間が広がっており、夜露で濡れたテントも完全に乾かすことができた。
 少し残っていた薪で再び焚き火を楽しみ、美味しいコーヒーを飲んで気持ちの良い朝を過ごすことができた。
 最後の荷物を車に積み終え、出発してまもなくフロントガラスに雨粒が落ちてきた。
 結局、紅葉の一番綺麗な時期のドロームでキャンプをすることはできず、次回への宿題になってしまった。
 でも、これは私にとっては嬉しい宿題なのである。


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