トップページ > カヌー > 川下り日記

頓別川(2018/09/24)

カラフトマスの群れる癒しの川

一番の目的である徳志別川を下った翌日。
「せっかく遠くまで来たのだから何処かもう一か所下りましょう」との話になる。
私は徳志別川だけで満足して帰るつもりだったけれど、皆が下るらしいのでお付き合いすることにした。

I山さんはここに来る前から頓別川を候補に挙げていたけれど、北海道ののんびり下れる川の本の情報では牧場に囲まれた川で、あまり魅力的な川とは思えない。
そもそも、昨日下った徳志別川でさえ途中から瀞場が続くと退屈だの、面白くないだの、散々文句を言っていた人達である。
それが、流れの殆どない頓別川を下れるのだろうか?
他に支湧別川、渚滑川等が候補に挙がるが、I上さんの「一度も下ったことのない川が良い」との意見で、頓別川を下ることになった。


スタート地点の新川橋、右側の河川敷に車で入って行ける

I上さんは、今年のダウン・ザ・テッシにも一緒に出たくらいで、ホワイトウォーター一辺倒のパドラーではないので頓別川を下ろうと言うのは分かるけれど、心配なのは他のメンバーである。
まあ、皆で決めたことなのだから、後から文句が出たとしても私の知ったことではない。

そうは決まったけれど、一番最初に頓別川のことを言い始めたI山さんも、川のことはあまり調べていないらしい。
私は一応、事前にGooleマップの航空写真で上陸場所等の見当を付けてあったので、寿橋から新川橋のおよそ10キロを下ろうとの提案をして、まずはゴール地点の新川橋まで車の先導をする。

新川橋は河川敷まで車で入れるので、丁度良いゴール地点である。
のんびり下れる川の本では「牧場に囲まれて上陸不可」と書かれているけれど、これは2004年時点での情報である。
その後の河川整備で、状況が大きく変わったのだろう。

新川橋の上から眺める川の様子は、予想通り流れも殆どなく風景も如何にも単調そうに見える。
ただ、橋の下に沢山のカラフトマスらしき姿が確認出来て、こちらは予想外の楽しみになりそうだった。


新川橋から上流方向を眺めた様子


そこからスタート地点の寿橋へと移動。
途中の高砂橋を通り過ぎるところで、突然後続の車のスピードが遅くなった。
多分、今頃になって長い距離を下ることに恐れをなして、短縮コースを下れないかと考えているのだろう。
しかし、ここからスタートしたのでは下る距離は5キロにも満たないし、そもそもここから舟を降ろせるかどうか誰も分かっていない。


寿橋のスタート地点は駐車スペースも広い

昨日の徳志別川では、私がせっかく見つけておいたゴール地点を「下る距離が短すぎる」との理由でもっと下流の上陸しづらい場所に変えられ、最後にはやっぱり「長すぎた」と文句を言いながら下っていた。

それが今日は、下る距離が長すぎるからと、また違うスタート地点を探しているようだ。
こんなところで、今から舟を降ろす場所を探していては時間がもったいないので、無視してさっさと先へ進む。

寿橋のスタート地点は、駐車スペースも広く、川にも楽にアプローチできる、理想的な場所だった。
追い付いてきたメンバーから「ヒデさん、随分張り切ってますね~」と声をかけられたが、私は今日は、あくまでもお付き合いで下るだけなのである。


スタート地点で記念撮影、Vサインを出しているN島先輩だが何となく表情が暗い


黒く淀んだ川の上にカヌーを浮かべる。
昨日の徳志別川と同じく、ここの川の水も湿原を流れる川の様に黒っぽい色をしていた。
タンニンが多く含まれているのだろう。


タンニンが含まれるのか、川の水は黒っぽい色をしている


その色は問題ないけれど、泡が沢山浮いているのがちょっと気になる。
私は川に浮かぶ泡を見ると、どうしても家畜のし尿などの流れ込みを連想してしまう。
昨日の徳志別川でも泡と臭いが気になったけれど、頓別川は上流域に広がる牧場地帯の数では徳志別川よりも遥かに多いのだ。
ただ、臭いの方は全く気にならない。


こんな流れが延々と続くのかと思ったがそうでもなかった


湿原の川のような流れがずーっと続くのかと思っていたら、所々に浅瀬もあって流れも速くなる。
そんなところでは、水の色も全く気にならないくらいに川底の石がはっきりと見える。
美しい川底の風景がカヌーの下を流れていく。
何とも気持ちが良い時間である。


水は意外と澄んでいて、浅瀬では流れも速くなる



カラフトマスの姿も確認できる。私はサケだと思っていたけれど、魚体が小さいのでカラフトマスらしい。
小砂利の川底が所々で窪んでいる。
多分、産卵床なのだろう。


カラフトマスの姿を眺めながら川を下る


川岸に生える樹木は殆どが柳ばかりなので、風景は単調である。
流れのある所ならば良いけれど、どんよりと淀んだ瀞場が長く続くと、その単調さが気になってくる。
それでも、周りからの音は全く聞こえず、パドルで水を掻く音だけが静かに響き、こんな川下りも良いものである。

しかし、ホワイトウォーター命の男N島先輩が、この様な川下りをどう思っているかは分からない。
その後姿に何時もの雄々しさは無く、歳相応の寂し気な後姿に見えてしまう。


何となく寂し気な男N島先輩の後姿


一已内橋を過ぎると、川が山の直ぐ裾野を流れるようになるので、景色にも変化が現れる。
やっぱり、川の上から眺める風景にも山は必要なのである。


山が近いと川から眺める風景も美しく感じる


川の水が黒いので、まるで鏡のように周りの風景を良く映しこむ。
上空には青空が広がり、最高の川下り日和だ。

ただ、気温が少々高すぎる。
日陰を求めて、河畔林のそばを選んで下るようにする。

カナディアンだとどんな格好でも下れるけれど、カヤックではそうもいかないようだ。
ドライスーツやパドリングジャケットに身を包んで如何にも暑そうである。
一応は初めて下る川なので、それなりの準備はしているのだろうけれど、この川で今日の水量ならば、用心する必要は無かったかもしれない。


日陰に入ると涼しく感じる



単調な流れかと思っていたけれど、意外と風景の変化が楽しめる川である。
しかし、下る人の感性によっては、単調極まりない川としか思えないかもしれない。
微妙な変化を変化として感じ取れるか否かで、川下りの楽しさも全然違ってくるだろう。


鏡の瀞場だってその風景を楽しめる


それに何と言っても初めて下る川である。
カーブの先に何が有るのかは、全く分からないのである。
私が川下りを始めたきっかけは、川のカーブの向こうの風景を見たかったからと言っても過言ではない。
初めて下る川では、その頃の初心に戻ることができるのだ。


下るにしたがって変わっていく風景が川下りの楽しみの一つだ


相変わらず、浅瀬ではカラフトマスの姿が沢山見られる。
凄い速さでカヌーの周りを泳ぎ回る様子に、感動しながら下っていく。

湿原の中を流れる川のようでありながら、石の河原も所々に広がる。
そんな河原の一つで、休憩をとる。


河原で休憩



モンスターの顔にも見える

川岸の土から大きな樹木がニョキリと飛び出している風景には驚かされた。
洪水の際に埋もれた流木とは思えない。

その上に1m以上の厚さで積み重なっているのは火山灰の土壌にも見える。
と言うことは、大昔の火山の噴火で埋もれた樹木が今になって、現れてきたということだろうか。
それとも、沖積土に埋もれた樹木が地盤が隆起して、ここに出てきているのだろうか。

いずれにしても、数百年から数千年の時間を経た埋もれ木と考えても良いかもしれない。
炭化しているかどうかまでは確かめなかったけれど、なかなか珍しいものを見る事ができた。


土中から飛び出した埋もれ木にはビックリ


その先に現れた名前の分からない橋の下は、瀬と言っても良いくらいの流れになっていた。
そこを何も考えずに下っていくと、鉄筋の飛び出たコンクリート塊が水中に隠れていて冷やりとさせられる。
人工物の周りは、何処でも要注意である。

傾斜した岩盤の地層がそのまま水中に没しているところがあった。
その岩盤に沿って下っていくと、水中に没している所は当然のように瀬になっている。
問題のあるような瀬ではなかったけれど、今回下った中ではここが一番の瀬だった。


斜めに傾いた岩盤が川の中に沈み込む


こうして色々な変化を楽しみながら、約2時間半でゴールの新川橋まで下ってきた。
頓別川はもう2度と下らないという人もいたけれど、私には意外と楽しめる川だった。
道北ののんびり下れる川として、もっと広く紹介されるだけの価値がある川である。
 

(当日12:00頓別川水位 中頓別観測所:19.96m)

頓別川ダウンリバーの動画 



ページトップへ