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北山川

(小川口〜志古)

紀伊半島の旅にカヌーを持っていこうと考えた時、最初の候補地に選んだのが北山川だった。
色々と情報を仕入れていると、ここでは途中の川原で一泊して下るのが良さそうなので、川原キャンプの準備もしてあった。

瀞ホテル横の急階段スタート地点は、瀞峡ウォータージェット船の乗り場のある田戸。
北山川は、ここから下流の瀞峡と呼ばれる大峡谷が一番の見所であるらしい。
そこを下らなければ、北山川を下る意味が無い。

しかし、問題点が一つあった。
田戸から下る場合、道路から川原までかなりの高低差をカヌーを下ろさなければならないのだ。
事前に下見をした時の感想は「あり得ない、絶対に無理」だった。
でも、ジェット船の関係者の方や、そこの階段の掃除をしていた地元の方に聞いてみたところ、皆普通にそこからカヌーを下ろしているらしい。

ただの急な階段ならば大丈夫だと思うけれど、瀞ホテルの建物が迫った途中の狭い場所で、その階段が直角に折れ曲がっているのである。
16フィートの大きなカナディアンを、そこを通過させるのは物理的に不可能としか思えない。

瀞峡を上から見下ろす瀞峡を過ぎた先の小川口という場所からなら簡単にカヌーを出せるので、下る区間を短縮しようと考えた。
そんなことをチラリとFBに書き込んだところ「それはダメです」、「そこを下ろすのはお約束です」、「16フィートまでは大丈夫です」等との返信が一斉に返ってきたのでる。

熊野古道の小辺路を3泊4日で縦走した後、次のイベントとして北山川のダウンリバーを計画した。
しかし、小辺路縦走の疲れと、翌日が雨の予報になっていたことで、1泊のキャンプツーリングは諦め、ワンデイダウンリバーに変更。

もちろん、下る区間は小川口から。
他人から何と言われようと、疲れた身体であの階段からカヌーを下ろす気にはなれなかったのである。


瀞峡
直線部分の階段は何とかなりそうだけれど、その先が問題

スタート地点の小川口にカヌーを下ろしてから、車で上陸地点の志古へと移動。
そこからの移動はジェット船を使う。

ジェット船で上流へ最初はバスでの移動を考えていたけれど、適当なバス路線が無くてどうしようかと悩んでいた。
そこへ、ジェット船を利用できるとの話を聞いて、目から鱗の気分だった。
北山川を下る時にはジェット船が邪魔になるとは聞いていたけれど、そのジェット船を交通手段として利用するとは考えてもいなかったのだ。

一般的な観光客は、志古から田戸まで往復でジェット船を利用する。
それなのに、途中の乗船場までの片道券も売られているところを見ると、地元の人の交通機関としても利用されているのかもしれない。
これから自分で下る川をジェット船で遡ると言うのも何か変な感じだった。

小川口で船を下りると、乗っていた観光客の皆さんが手を振ってくれたので、こちらも手を振って船を見送る。
そうして、北海道以外の川に初めてカヌーを浮かべた。


北山川小川口乗船場
乗船場と言ってもただの河原だ、乗客から手を振って見送られる

雨の影響で、北山川の水は少し濁り気味だった。
それでも、水深の浅いところでは川底の石もくっきりと見えている。

北山川のダウンリバー川を下り始めて直ぐ、カヌーの底に水が溜まっているのに気が付いた。
乗る時に水を入れた覚えも無いのにどうしたのだろうと思っていたら、その水がどんどん増えてきていた。
浮力体が入っていて、水が入ってきている様子は分からないが、これはカヌーの底に穴が開いているとしか思えない。

何せ、今年になって初めてカヌーを浮かべるのだから、穴が開いていても不思議ではない。
冬の間に、もともと傷付いていた部分が凍結して、完全に貫通してしまったのだろう。

おまけにウッドガンネルのささくれが爪の間に刺さって出血してしまった。
一旦上陸して、指は絆創膏で、カヌーの方はガムテープで応急措置をする。


北山川のダウンリバー
上流部ではこの岩壁がベストビューポイントかも

北山川のダウンリバー気を取り直して再び下り始める。
天気も良く流れは穏やか。
周りの風景を眺めながら川の流れに舟を任せてのんびりと下っていく。

たおやかな周りの山々に広々とした川原。
その中で、時々現れる岩壁やそこから崩れ落ちた岩塊が単調な風景のアクセントとなる。

整然とした杉林こそ北海道では見かけない風景だが、全体の風景は北海道の鵡川に似ている気がする。
北山川には鵡川のような荒々しい瀬は無いので、ひたすらのんびりと下っていける。


北山川のダウンリバー
穏やかな風景の中をのんびりと下っていく

途中の川原に上陸。
キャンプするのに良い場所がありますよと聞いていた川原の中の一つである。

河原で休憩焚き火用の流木も豊富に転がっている。
目の前の川は美しいエメラルドグリーンに染まっていた。

私達の乗ってきたジェット船が、田戸で折り返して下ってきた。
私達の前を通り過ぎるとき、船長さんが汽笛を鳴らしてくれた。

しばらくすると、今度は上りのジェット船がやってきた。
通過する際は結構な波を立てていく。
1時間に1本なのでそれほど気にならないだろうと考えていたが、それが往復するので単純計算で30分に1本、結構な頻度でやってくる。
お客さんが多いときは一度に3艇、4艇とやってくるのだろうから、それをやり過ごすだけでも大変そうだ。


北山川のジェット船
ジェット船が大きな波を建てながら通過していった

川原での昼食も済ませて再び下り始める。
やや流れの速い場所も出てくるが、瀬と言うほどの流れでもない。

北山川のダウンリバー山肌に張り付くように家の並ぶ集落が見えてきた。
北海道では絶対に見ることの無い風景である。
違う土地の川を下っている実感がようやく沸いてきた。

その後も、下るにしたがって次々に変わっていく風景に見惚れる。
岩場に咲く花も北海道では見たことの無い花だ。

大きく蛇行していた川の流れが南に向かうと、向かい風に悩まされるようになってきた。
この風さえ吹かなければ、そのまま新宮まで下ることもできるのだが、やっぱり南風の吹くことが多いようだ。
それまでののんびりとした川下りが修行の様相をおびてくる。


北山川のダウンリバー   北山川のダウンリバー
見上げるような岩壁   まだまだ美しい紅葉が残っていた

小船梅林前の川原に上陸。
その付近が無料で利用できるキャンプ場みたいなので、様子を見ることにしたのだ。
川原キャンプができないのなら、せめて北山川の近くでキャンプをしようとも考えたのだが、やっぱりそこでは川原キャンプの楽しさは期待できそうになかった。

茶色く濁った熊野川と合流そこから先で北山川は熊野川と合流する。
その熊野川は本宮町辺りでは綺麗な水なのに、途中の発電所からの放水が濁っている影響で、真っ茶色に濁っていた。

合流後もしばらくは、二つの川の水は混ざり合わないまま2色のままで流れていたが、最後には川全体が茶色く濁ってしまった。

川の水量も一気に増え、それが茶色に濁っているとあまり気持ち良くはない。
この様に増水した川を何度も下っては痛い目に遭っているので、流れは静かでも嫌なイメージが頭をよぎる。
向かい風と格闘しながら、ようやくジェット船の発着場まで漕ぎ着けた。

初めて下る北海道以外の川だったけれど、瀞峡をパスしたおかげで、ちょっと印象に欠ける川下りとなってしまった。

2016年4月20日 晴れ


茶色く濁ってしまった熊野川   志古のジェット船発着場
熊野川に入ると水は茶色   志古の発着場に上陸

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